俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

朗報

2013-09-09 18:58:07 | Weblog
 2020年のオリンピックの開催地が東京に決まった。これは野球ファンにとっては大きな朗報だ。野球復活の芽が出て来たどころか当選確実ではないかとさえ思える。
 野球のグラウンドは汎用性が無い。野球が定着していない都市(イスタンブールなど)が開催地に選ばれた場合、オリンピックだけのために使い勝手の悪い巨大な施設を作らねばならない。ところが東京には既に立派な施設が多数ある。
 全日本野球協会の八田会長もプロ野球の加藤コミショナーも敗北宣言を発表した。何を考えているのかと言いたい。現時点で諦める必要は全く無い。
 国際オリンピック委員会(IOC)は総会で野球・ソフトボールをレスリングに次ぐ2位とした。物事を勝ち負け・白黒でしか考えない単純な人はこれを敗北と思い込む。とんでもない、最上位落選の意義は大きい。
 彼らは最上位落選の意味を理解していないようだ。最上位落選とは「実施されない競技の中で最も実施に値する競技」と総会で認められたということだ。この競技が開催地では最も人気のある競技であれば実施せざるを得なくなる。
 1964年の東京オリンピックから柔道が、ソウルオリンピックからテコンドーが正式種目にされた。これらは決して最上位落選種目ではなかったにも関わらず開催地の意向を受けて正式種目とされた。最上位落選のお墨付きを持つ野球・ソフトボールはこれらと比べて圧倒的に有利な立場にいる。
 野球・ソフトボールが実施されないということがあり得るとすればそれはJOCや全国野球協会などが勝手に諦めて努力しなかった場合だけだろう。大きなチャンスを見逃すべきではない。

予測

2013-09-09 10:08:15 | Weblog
 未来は予測し難い。
 野球のボールがどう弾むかならある程度予測できる。それはボールが球形だからだ。ラグビーのボールならどう弾むのか全然分からない。球形の石ころなど殆んど存在しないのだから石ころの弾む方向さえ予測できない。
 予測可能なのは特殊な条件のものだけだ。天気が西から東へと移る時期であれば正確に予報できるが、梅雨や秋雨の端境期のように高気圧のバランスで決まる時期の天気は予測困難だ。
 一旦津波が起こればそれがいつ到達するかは簡単に予測できる。これは距離と速度が確定しているからだ。起こっていない津波を予測することは不可能だ。
 消費増税が経済に与える影響も予測できない。増税した時のデータしか無いからだ。等しい条件下で増税しなかった例など無いのだから増税の影響を推定できない。
 ノーベル文学賞の受賞者でもある哲学者のベルクソンは、将来の文学の可能性について尋ねられて「事実になったものがあとから可能性と認識される」と答えた。つまり起こったことが後付けで「可能性があった」とされるだけであり、起こる前にそれが可能かどうかは判別できないということだ。
 人類は予想をすることができる殆んど唯一の動物であり、予想をすることが大好きだ。しかしその能力が極めて限定的であることを認識する必要がある。ここ数日の天気予報は殆んど当たらなかったし、地震予知など妄想に近い。予測可能なことと不可能なことを判別する必要がある。カントの「純粋理性批判」の主旨は理性の限界を示すことだったが現代科学の限界も充分に理解されるべきだろう。科学盲信は迷信と殆んど同じようなものだ。

独占禁止法

2013-09-09 09:40:41 | Weblog
 独占禁止法という法律がある。私は民主主義者というよりは自由主義者に近いのでこんな国家による統制を好まないが、必要悪として認めざるを得ない。
 独占がなぜ悪いのか、価格決定権を握るからだ。通常の商品は市場で価格が決まる。需要と供給のバランスで落ち着くべき所に落ち着く。ところが独占企業は供給量を操作して価格を高止まりさせてしまう。
 独占禁止法が無ければ大企業は市場支配を目論む。競合他社を潰すために不当な廉売を仕掛けて他社を廃業させる。市場を独占した後は値上げをして儲け放題だ。
 貿易において国際的な独占禁止法は無いのだからこれと同じようなことが罷り通る。中国のレアアースが典型例だ。中国は安い人件費を利用してレアアースを輸出した。他国は価格的に対抗できないので生産をやめた。その時点で中国は出荷制限と大幅な値上げを通告した。各国は中国の言い値で買わざるを得なかった。
 石油ショックは中東諸国による価格吊り上げだった。しかしその影響は余りにも大きく回り回って産油国もそれによる経済的ダメージを受けることになった。
 農産物においても同じようなことが起こり得る。もし小麦とトウモロコシをアメリカが独占し畜産品をオーストラリアとニュージーランドが独占したら、彼らが価格決定権を握る。彼らの決めた価格で輸入せざるを得なくなる。
 農産物の場合、石油の値上げほど大きな経済破壊は起こらない。だから輸出国による価格支配が起こる可能性は高い。日本としては一部の国からの輸入に頼り過ぎるべきではない。しかし何でも自給しようとするのは愚策だ。例えばバナナやパイナップルなどを自給する必要など全く無いし、東京都の食糧自給率を高める必要も無い。温暖な気候と豊富な水資源に恵まれた日本は国土に合った農業に特化することによって国際分業の一翼を担うことができる。低品質で自給率10%に過ぎない麦を今更保護する必要など無い。