俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

混ぜる

2013-09-29 13:49:58 | Weblog
 絵具は混ぜるほど汚い色になる。このことを知らなかった小学生時代の私は、綺麗な色を作ろうとして絵具を混ぜて、一時期は汚い絵しか画けなかった。混ぜてはいけないことを知ってから初めてまともな絵が画けるようになった。
 飲食店では混ぜたがる人をしばしば見掛ける。牛丼に紅生姜と七味をたっぷりかけて混ぜている人やカレーライズを掻き回してグシャグシャにする人などだ。これらは見た目も汚いし、多分味も悪くなる。混ぜて均質化しないほうが美味しい。私は卵かけご飯でさえ混ぜ過ぎないほうが旨いと思っている。
 最近、弁当がbentoとして国際語になりつつあるそうだ。仕切りのある弁当は見た目も美しいし、それぞれの味を楽しめる。仕切りの無い器に入れられた料理は混ざってグシャグシャになる。
 人も「朱に交われば赤くなる」と言う。大抵の人は朱に交わることによってつまらない人になる。マスコミの受け売りばかりで自分で考えなくなるからだ。
 情報を混ぜることは犯罪的とさえ思える。毎日新聞の昨日(28日)の朝刊の見出しは「猛暑、台風 脅威に IPCC報告書」だったが、これなど悪い典型例だ。IPCCの報告書には「台風の脅威」など書かれていない。本文を読めばこれがIPCC報告書ではなく名古屋大学の教授の発言だと分かるが、これは明らかに誤解させることを狙った見出しだ。
 IPCC報告書は21世紀末に気温が0.3~4.8℃、海面水位が26~82㎝上昇するという内容で余りセンセーショナルではない。これでは面白くないと考えて名古屋大学の教授の話を混ぜたのだろうが、この見出しは明らかに危険を煽ろうとする魂胆が現れており、悪意すら感じる。情報は絶対に混ぜてはいけない。混ぜれば嘘になる。

山羊

2013-09-29 10:08:56 | Weblog
 インドで牛が尊ばれているのは殺生をしないからだ。牛は葉を食べても決して根を食べない。根さえ食べられなければ多くの植物は再生できる。だから神聖な動物とされている。
 一方、山羊は植物を根こそぎ食べてしまう。山羊が棲み付いた草原は荒野になり、山羊は食べ尽くした荒野を去って次の草原を滅ぼす。まるで敵を殲滅して行進する軍隊のようだ。山羊が立ち去った跡にはペンペン草さえ生えていない。山羊は生態系の破壊者だ。西洋の悪魔が山羊をイメージして描かれることが多いのはこんな事情からだろう。
 こんな困った動物の上手な使い方があることを最近知った。雑草の除去だ。空き地や種蒔き前の畑に山羊を入れれば雑草を根こそぎ駆除してくれる。植物のエネルギー価は低いので山羊は一日中殆んど休まずに食べ続ける。除草剤を使うよりも遥かに安全で安上がりだ。山羊の糞は肥料として使える。流通経路が曖昧な飼料で育った山羊とは違って100%天然の餌だから多分安全だろう。
 こんな有益な事業は本来、国や自治体が行うべきだろう。普段は遊休地で飼育しておいて、除草が必要な土地に有償で貸し出せば、餌代がタダでしかも安全な畜産業になる。
 麻薬犬は最新の検出機器よりも正確に麻薬所持者を嗅ぎ当てる。山羊は除草剤よりも遥かに安全に雑草を駆除する。科学に頼るよりも動物や植物の力を借りたほうが上手く行くケースは他にも沢山あるだろう。藻類を使ったバイオエネルギーはかなり有力視されているし、もしかしたら鯰を使った地震予知も可能かも知れない。

子孫

2013-09-29 09:42:04 | Weblog
 物体は時間の経過と共に劣化する。生物なら老化する。機械なら部品を取り替えれば劣化を妨げることができる。もし当初よりも良い部品に取り替えれば改良することさえ可能だ。
 無生物は最初の姿のままで劣化し続ける。生物は細胞を再生し続けて生きているのでその再生が完璧であれば若さを保てるが、再生する際にコピーミスが生じてこれが老化へと繋がる。コピーミスは偶然に起こることもあれば外因によることもある。放射線や紫外線や薬物などは遺伝子の一部、多分特定の部分を傷付けるだろう。
 有性生殖によって新しい生命が生まれるのは異系交配が行われるからだ。つまりオスとメスから提供された遺伝子が再結合されて傷んでいないほうの遺伝情報が使われる。オスの遺伝子の一部が傷んでいればメスの遺伝情報によって修復され、メスの遺伝子の傷んでいる部分はオスの遺伝情報が修復する。こうして真っさらな遺伝子を持った子供が生まれる。
 機械とは違って生物のためのスペアの部品は無い。両性から提供された遺伝子が相互のスペアとして機能する。つまり生物はスペアの遺伝子を持っていないから異性から得た遺伝情報がスペアとしての役割を果たすということだ。これは2台の中古自転車から良い部品を集めて、元の2台よりも良質な1台を作るようなものだ。
 ところが両者の遺伝子の同じ部分が傷んでいれば困ったことになる。より破損の少ないほうの遺伝情報を使わざるを得なくなる。つまり完全な修復には至らないということだ。こう考えると子孫のために配慮すべきことが2つあることに気付く。若い内に出産することと違った環境の人を選ぶということだ。
 歳を取ればその分、遺伝子の破損が進むだろうし、似た環境にいれば遺伝子の同じ場所が損傷している可能性が高い。同病相憐れんでの結婚は子孫のためには好ましくない。病気の原因が遺伝子の同じ場所の損傷が原因かも知れないし、同じ薬を使っていれば同じ遺伝情報が傷付けられている恐れもある。あるいは大量に紫外線を浴びるサーファー同士や放射線技師同士の結婚も危険性が高いだろう。