俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

大富豪

2015-03-06 10:07:13 | Weblog
 2日にアメリカのフォーブス誌が「世界のビリオネア」を発表した。ビリオネアとは10億ドル以上の資産を持つ大富豪のことであり、日本からは24人がランクに入り人数の多さでは17位だった。GDP第三位の経済大国の日本が大富豪の数では17位、これでも格差社会なのだろうか。世界有数の平等社会なのではないだろうか。
 ランキングと人数は下記のとおり。
 ①アメリカ(536)②中国(213)③ドイツ(103)④インド(90)⑤ロシア(88)⑥香港(55)⑦ブラジル(54)⑧イギリス(53)⑨フランス(47)⑩カナダ・イタリア(39)⑫台湾(33)⑪トルコ(32)⑭韓国(30)⑮スイス(29)⑯オーストラリア(27)
 当たり前のことだが主要国は総て日本より上にランクされている。香港や台湾や韓国でさえ日本より上位だ。もし日本が格差社会であるならこれらの国は超格差社会ということになる。
 米中はともかく、格差が問題にされるのは発展途上国だ。大富豪が少ないのに格差社会と騒がれる日本は貧しい途上国なのだろうか。
 格差社会とはマスコミが作り上げた幻想だろう。実際の日本は、シングルマザー以外は働く者が報われる社会、それどころか働かない者まで甘やかす奇妙な社会なのではないだろうか。だから外国人まで生活保護を受ける目的で日本に住み着いてしまう始末だ。
 外国人労働者を受け入れる必要など無い。彼らが失業すれば生活保護を受けるか犯罪者になる。その場凌ぎの低賃金労働者を輸入する必要など全く無い。むしろ女性と高齢者の雇用条件を改善すべきだろう。
 マスコミは偏向していると改めて思った。東洋経済オンライン以外のどの新聞も日本の大富豪の少なさには全く注目していない。各紙ともファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバンクの孫正義氏がランクインしたことを報じるばかりで、日本の大富豪の少なさには論評しない。マスコミは格差社会という幻想を国民に植え付けようとして情報操作をしているのではないかと勘繰りたくなる。
 このデータを見て日本は格差の少ない国だと思う私とそう捕えようとはしないマスコミと、どちらがまともな感覚だろうか?データに基づいて社会は解釈されるべきであり、主張に背くデータを無視するマスコミのやり方はフェアとは思えない。

哲学と医学

2015-03-06 09:31:56 | Weblog
 カントは理性には限界があることを証明した。人は「無限」や「永遠」を経験することはできない。人が知覚できるのは無限や永遠がある「物自体」ではなく有限の「現象」に過ぎない。経験に基づいてしか思考できない理性によって無限や永遠について考えようとすれば必然的に矛盾に陥る。これが「二律背反」であり、理性万能主義を「僭越」として否定した。
 限界を知れば他の方法を選ぶ。人は100mを5秒で走ることはできない。だから機械を使う。自動車による地上走行の限界を超えるためには飛行機やリニアを使う。限界を知ることによって新しい文明が生まれる。
 医療にも限界がある。限界を知ることによって正しい治療が行われる。医療の限界とは自然治癒力を超えられないということだ。少なくとも現時点では、数十億年掛けて培われた自然治癒力を超えることはできない。
 傷の縫合はできても接合は自然治癒力にしかできない。ワクチンによって感染症が予防できるのは免疫力が働くからだ。これらは医学の勝利ではなく自然治癒力の勝利だ。医学に可能なことは自然治癒力が働くための条件を整えることであって病を治すことではない。
 癌にせよ生活習慣病にせよ、原因が分からないままでの対症療法はモグラ叩きのようなものだ。叩いても叩いても切りが無い。
 確かに、目の前に患者がいれば医師はできる限りのことをしようとする。しかしそれは溺れる者に対する藁に過ぎない。時には毒蛇を渡すこともある。気休めなど要らない。それは科学ではなく宗教に過ぎない。すがる者を不幸へと追いやる邪教のようなものだ。
 軍医でもあった森鴎外は脚気を感染症と信じたために多くの兵士を死に至らしめた。原因が分からなければ正しい治療などできない。原因が分からない時点での最善の対症療法は最も有害性の少ない改善策であるべきだろう。当然それは薬物療法ではない。生活習慣病であれば食事の改善とスポーツの奨励だろう。薬に頼った対症療法は有害なだけだ。
 対細菌戦においても人類は未だ勝利を収めた訳ではない。抗生物質の発見によって現時点では優位に立っているが、抗生物質が細菌の進化を促すことによって多くの耐性菌が生まれつつある。細菌の進化と新しい抗生物質の発見はイタチごっこであり、最終的には細菌の進化のほうが勝つのではないだろうか。医療が作ってしまった多剤耐性菌が人類を滅ぼす可能性は決して低くない。