俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

ノーシーボ効果

2015-03-16 10:01:52 | Weblog
 偽薬であっても薬効が生じるのがプラシーボ効果だが、無害の物を有害と信じることで支障が生じることをノーシーボ効果と呼ぶことを最近知った。
 この現象は催眠術の実験で何度か見た。ウルシの葉と偽って無害の葉を被験者の肌に触れさせると実際にカブレることが少なくない。
 催眠状態でなくてもこれはしばしば起こっているらしい。自動車保険が普及していない国では鞭打ち症が非常に少ないそうだ。逆に言えば自動車保険に加入している人の鞭打ち症の発症率が異常に高いということだ。一部は保険金詐欺もあるだろうが、被害があったほうが経済的なメリットがあるという心理によるノーシーボ効果も働いているのだろう。
 電磁波が有害だという話がある。科学的・医学的には証明されていないが実際に健康被害を訴える人がいる。副流煙が喫煙よりも有害ということは物理的にはあり得ないことだが、このことを根拠にして屋外喫煙が規制されつつある。これらはノーシーボ効果ではないだろうか。
 私の身近にも実例がある。母が一時期、高血圧を気にしていた。ところが一人で測れば少し高い程度なのだが、私が傍にいるとかなり高くなり、医師の前ではほぼ正常という奇妙な傾向を示していた。これは医師の前では健康でいたいと思い、私の前では不健康でありたい、つまりもっと世話を焼かせたという思いが血圧を上下させたのだろう。決して私が怒らせていたから血圧が上がったという訳ではあるまい。
 病は気からと言うが感情が体に与える影響は大きい。嫌だという感情があるだけでそれが本当に有害物になってしまうのだから面倒な話だ。柔軟剤や香水の匂いにせよ保育園の子供の声にせよ、嫌いな人には実際に有害になる。排気ガスや航空機の騒音は元々有害だが、これに怒っている人には一層有害になってしまう。健康でいるためにはある程度大様であることが必要なようだ。

詐欺

2015-03-16 09:37:00 | Weblog
 2013年の詐欺の認知件数は38,326件だったそうだ。殺人の938件と比べれば随分多い。しかしこれは氷山の一角に過ぎない。国を相手にした詐欺が含まれていないからだ。2013年度の生活保護費の不正受給は43,230件で187億円だったそうだ。あれほど騒がれている詐欺よりも不正受給のほうが多いとはどういうことだろうか。
 不正の内訳は①労働収入の無申告(46%)②年金等の無申告(21%)③労働収入の過少申告(11%)とのことだが、労働収入が捕捉し切れないのはある程度やむを得ないとしても、なぜ年金の無申告による不正受給が発生するのかさっぱり理解できない。厚生労働省内でのセクショナリズムが原因なのだろうか?
 労働収入の捕捉に関しては根本的な問題がある。非合法収入が申告されないということだ。申告すれば自ら罪を認めることになる。麻薬密売や詐欺や窃盗あるいは売春などによる収入が申告されることは無い。これでは犯罪によって生計を立てている人が総て生活保護の有資格者になってしまう。
 豊中市で酷い事件があった。小中学生の子供3人が両親に指示されて万引をしていたとのことだ。この事件がきっかけになってこの一家による不正受給が発覚した。父親は防水工としての収入があったそうだが、万引による収入は勘案されない。防水工としての収入を理由にして不正受給とされたが、万引の収入だけであったら不正受給には該当しないということになるだろう。何とも妙な話だ。
 生活保護費を受給している暴力団員が決して少なくないことはこの法律の欠陥の現れだ。何とか改められないものだろうか。非合法収入を得ている人は捜査権を持つ警察でさえ立証できないから処罰されずにいる。これを捜査権など持たない福祉担当者が捕捉することは不可能だ。刑法の原則は「疑わしきは罰せず」だが生活保護費は「疑わしきは支給せず」でも良いのではないだろうか。
 私は個人主義者のつもりだが、個人に対する犯罪よりも社会に対する犯罪を重く考える。個人に対する犯罪の被害者は多くの場合何らかの落ち度があるが、社会に対する犯罪は無辜の国民総てが負担を強いられるからだ。
 昨年の7月から不正受給の罰金が30万円から100万円に引き上げられたそうだが、43,230件の内一体何人が罰金刑を受けたのだろうか。ザル法であれば法改正をしても意味が無い。