俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

譲歩

2015-05-11 10:23:11 | Weblog
 人は自分の直接的な利害だけを基準にして行動する訳ではない。もし行く手を遮られれば人は不快に感じるが、それが道を尋ねるという目的を持っていれば、誰もが快く応じる。そのために被る損害は、道に迷っていた人が得る利益と比べれば微小だから全く苦にならない。群居動物である人類は、自分だけではなく集団が得る利害も行動基準になる。
 我々は相手を慮ることに余りにも慣れている。多少の無礼であれば許容して波風を立てまいとする。譲り合っているからこそ日常生活は快適だ。しかし譲歩し続けていれば不利な立場に追い込まれかねない。こんな時に役立つのが政治家だ。政治家は押しが強くなければならない。多少強引であろうとも住民や国民の利益を拡大することが仕事だ。TPPであれば日本に有利な条件にするべきであり、アメリカを喜ばせることを優先してはならない。
 あのルーピー鳩山氏はきっと「良い人」なのだろう。どこへ行っても相手に迎合する。後先のことを考えずに譲歩するから国政を混乱させた。沖縄県民の意向を汲んで安易に「最低でも県外」などと発言したからそれが基準になってしまった。
 譲歩は個人にとっては美徳だが集団にとっては悪徳になり得る。日本はアメリカや中国や韓国に対して譲歩し続けていた。政治で譲歩するだけならともかく、歴史的事実についてまで譲歩していた。原爆投下は人道的行為であり、南京では30万人が虐殺され、従軍慰安婦を強制連行したと黙認していた。だから彼らは付け上がった。
 政治とは駆け引きであり何かを譲ることによって何かを得なければならない。小の虫を殺して大の虫を助けることが必要だ。第二次世界大戦後のサンフランシスコ平和条約の時点では、たとえ理不尽であろうとも嘘を受け入れざるを得なかった。米国による占領から脱却して独立国の地位を獲得するためだ。しかしいつまでも敗戦国の立場に甘んじている必要など無かろう。誤った歴史は見直されるべきだ。
 譲歩は必要だ。しかしいつも譲歩ばかりしていれば舐められる。やはり是々非々の立場を貫くべきだろう。中国と韓国は延々と「謝罪が足りない」と言い続けている。これを文字通りに受け取るべきではなかろう。これは詫びを入れろということ、つまり尖閣諸島と竹島を差し出せという意味ではないかと私は勘ぐっている。

保身医療

2015-05-11 09:44:35 | Weblog
 医師は決して好き好んで無駄な医療を続けている訳ではあるまい。何らかの事情があってそうせざるを得ないのだろう。医師の立場から考えてみよう。
 風邪の患者であれば安静にして自然治癒力に任せるのが一番だ。しかしヨーロッパの医師とは違って何もせずに帰す訳には行かない。症状を緩和する薬を処方せざるを得ない。たとえそれによって風邪が長引くことになろうとも一時凌ぎをしなければヤブ医者という悪評を立てられてしまう恐れがある。
 風邪に抗生物質が効かないことなど百も承知だ。しかし肺炎の初期症状は風邪症候群に似ており、肺炎と分かってから対処すれば「医師が適切な処置を怠ったから風邪をこじらせて肺炎になった」という言い掛かりを被りかねない。だから99%確実に風邪と分かっていても「念のために」と言って抗生物質を処方する。このことによって耐性菌が増えようと彼に責任は無い。彼はone of themに過ぎない。どの医師もやっていることなのだから彼もそうやって保身を図る権利がある。
 痛みを訴える老人は多い。これらの多くは老化現象だから治療できない。しかしこんな患者こそお得意様だ。レントゲンやMRIや採血などで検査漬けにすれば保険の点数が稼げるし患者も喜ぶ。どうせ治せないのだから「原因不明のイタイイタイ病です」とでも言っておけば良い。老人は老化ではなく病気と言われれば納得する。それどころか「やっぱり病気だった」と大喜びする。これは奇妙な話だ。老化に伴う痛みを勝手に「イタイイタイ病」と名付けただけであって状況は何も変わっていない。老化であれば治らないが病気であれば治ると錯覚するのだろうか?
 あとは消炎鎮痛剤を処方するだけだ。痛みが緩和されれば病気が治まったと患者は勝手に勘違いするが、消炎鎮痛剤は治療薬ではない。ただ単に神経を狂わせて痛みを感じにくくしているだけだ。こんな薬を常用していれば副作用で医原病(薬原病)に罹るかも知れないが、医療は元々老化を治療することなどできない。できないことを要求された時、医師にできることは症状の緩和だけだ。消炎鎮痛剤を常用すれえば健康な人でも病気になると分かっていてもこれを投与しない訳には行かない。
 患者は医師に過剰な期待をする。医療によって治せる病気など殆んど無く、不快感を抑える薬によって一時凌ぎをしている内に自然治癒力が働いて治る。自然治癒力によって治せない病気は医師にも治せない。
 こう考えれば、彼の行為に違法性は無く他の選択肢も殆んどあり得ない。無駄な医療が横行するのは「患者様」の無知が最大の原因であり、医師はそれに迎合しているだけだ。医療改革のためには医療機関ではなく患者の意識を改革することのほうが急務だ。