俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

沖縄

2015-05-29 10:30:04 | Weblog
 内地にいると沖縄のことがよく分からない。これは沖縄に限ったことではない。先日の大阪市での住民投票も余所者には分からないことだらけだった。30数年住んでいた大阪のことでさえ2年半離れているだけで分からなくなるのだから、十数回旅行で訪れただけの沖縄のことが分からないのはある程度仕方なかろう。
 一番疑問に思っているのは、沖縄県民は本当に普天間基地の撤去を望んでいるのか、ということだ。普天間の移設問題は、1995年に起こった少女暴行という痛ましい事件を契機にして長い交渉を経てようやく辺野古への移設ということで何とか合意に至った。もし辺野古をボツにすれば交渉は1からやり直しになり、この先何年あるいは何十年掛かるか分からない。それよりは辺野古に移設したほうがずっとマシだろう。
 「撤去」という理想論では絶対に解決できない。増してや「辺野古阻止」というスローガンに至っては「普天間存続」という主張と実質的に同じだ。本人に悪意は無いだろうが、「改憲反対」が「解釈改憲」を招いたように目先のことに捕らわれていれば最悪の結果を招くことになるのではないだろうか。
 勿論、私は政府のやり方を全面的に支持する訳ではない。特に怒りを感じるのは翁長知事に大して「代替案を出せ」と迫っていることだ。マスコミはこのことには余り触れないが、これは無理な注文だ。沖縄県知事としては「県外のどこか」としか答えようが無い。こんな発言をすればNIMBY(Not In My Bacck Yard)として非難される。かと言って県内のどこかを指定することもできない。だからこれは沖縄県知事としては回答不可能な詰問だ。
 オスプレイの危険性に関する騒動も上滑りだ。オスプレイが奇妙な形をしているからかつての「未亡人製造機」のイメージで非難するが、現在の老朽化したCH-46よりも危険とは思えない。10万飛行時間当たりでの重大事故発生率はCH-46の1.11に対してオスプレイは1.93であり、確かに高い。しかし速度は2倍ほどなのだから距離当たりで見れば同等あるいは少し安全と言えよう。更に航空機の事故率がバスタブ曲線を描くことも考慮すれば早急に切り替えたほうが安全なのではないだろうか。航空機の事故率は開発当初は高くその後は低くなるが、老朽化すれば急激に高くなる。これをグラフにすればまるでバスタブのようになる。開発当初の危険期を過ぎたオスプレイのほうが老朽化したCH-46より現時点では安全と思える。

バター

2015-05-29 09:49:54 | Weblog
 数年前からバター不足が常態化している。こんなことは正常な状態であれば起こる筈が無い。特定の組織の強欲がこんな事態を招いている。犯人は農林水産省とその天下り団体の「農畜産業振興機構」だ。
 農水省は「チーズ向け生乳供給安定対策事業」と銘打った政策に基づいてチーズ補助金を支給することによって、数年前からバター不足を仕掛けていた。この補助金の効果で、生乳の生産量が減少する中、チーズの生産量だけが増え続けている。生乳の生産量が減っている時にチーズの生産を奨励すれば牛乳とバターの生産量が減るのは当然のことだ。
 バターの需要が減っていないのに生産量が減れば当然品不足になる。ここは輸入に頼らざるを得ない。ところがバターの輸入は酷い仕組みになっている。ベストセラーになった浅川芳裕氏の「日本は世界5位の農業大国」に拠ると「600tまでは一次税率(関税35%)が課せられ、その枠を超えると高率の二次税率(1㎏当り関税29.8%+179円)が課せられる。」それだけではない。更に「キロ当たり806円の輸入差益(マークアップ)」を農畜産業振興機構に収めねばならない。その結果、輸入バターの価格は輸入原価の3倍以上に膨らむ。通常であればこんな高額のバターは殆んど売れない筈だが国産バターが品薄になっているせいで、昨年は何と13,000tを輸入して完売したそうだ。
 要するにチーズ補助金という餌をバラ撒いてバターの生産量を減らすことによって、関税と上納金(マークアップ)によってボロ儲けできる輸入バターの拡販を図っているということだ。このことによって食料自給率は下がるがそんなことなどお構い無しだ。これは小麦の国家貿易や豚肉の「差額関税」と並ぶ農水省の悪質な錬金術だ。農水省はこんなエゲツナイ手を使って私腹を肥やしている。バター輸入の上納金の一部をチーズ補助金に充てるだけで酪農家にバター作りをやめさせることができる。国産のバターを減らして輸入バターでボロ儲けをするという仕組みは単なる省益拡大で済む問題ではあるまい。流石にやり過ぎだろう。露骨に国益よりも省益を優先させている。国民を食い物にするにも程がある。非国民を通り越して国賊と呼ぶべきレベルの悪代官ぶりだ。もしかしたら悪意ではなくただの政策ミスなのかも知れないが、バター不足は明らかに農水省の責任なのだから早急に改善する義務がある。
 政府の発表を無批判に垂れ流すことしかしない腑抜けのマスコミはこんな大切なことを国民に知らせる能力を欠いている。私の知る範囲での唯一の例外は、体制寄りの記事が多い筈の産経新聞の1月31日付けの記事だけだ。他紙やテレビは農水省による「生乳の生産不足」という無責任で白々しい言い訳をそのまま報じるだけだ。最早「大本営発表」と同レベルの虚報翼賛会体制だ。