電脳くおりあ

Anyone can say anything about anything...by Tim Berners-Lee

「親が変われば子は変わる」

2004-09-21 09:11:41 | 子ども・教育
 昨日の午後、代々木進学ゼミナールグループ主催の「家庭や職場で役立つ心理学」シリーズが、昭島のフォレスト・イン昭和館であった。子どもを義理の妹の家に預けて、妻と二人で、参加する。

 最近、拝島周辺によく来る。このフォレスト・イン昭和館は、前にテニスコートがあり、周りはゴルフ場を配し、こんもりとした森に囲まれた落ち着いたホテルだった。昼食をレストラン「セントロ」で取る。妻は、「パスタランチ」とドイツ産の白ワイン。私は、「サーロインステーキランチ」とカリフォルニア産の赤ワイン。食後のコーヒーを飲んでいるとき、目の前にあるチャペルの前を、羽織袴の新郎と文金高島田に白無垢の花嫁が、ゆっくりと通り過ぎていった。そして、向こうにある池のほとりで、写真を撮っていた。

 講師は、明星大学教授、感性教育研究所所長の高橋史朗先生。1時から3時までの予定だったが、たっぷり話して3時半まで。なかなか面白い。企業でやる研修会で時々似たような話を聞くが、基本は多分同じだと思う。違うのは、企業の場合は部下に対する上司のあり方であるのに対して、ここでは子どもに対する親のあり方である。

 「親や教師の子どもに対する関わり方を変えることが、子どもを変えることである」として、「子供観」を変えることを説く。今、子どもの脳が危ないと言い、IQに対してPQ(人格的知性)を育てることが大事だと言う。PQを育てるための8つの方法を教えてくれた。確かに、これらは今の子どもたちに欠けていることばかりだ。

●PQを育てる8つの方法
1 夢や目標を持たせる
2 多様な人間関係、社会体験を経験させる
3 直接体験、原体験を増やす
4 自分で選んだ体験をさせる
5 読書特に音読が脳を育てる
6 暗算をする
7 幼いものの世話をする体験をする
8 野外キャンプなどで自然に触れる

 「アンダースタンド」から「リアライズ」へと言うそうだ。ただこれらは、いろいろな人たちが言ってきたことをまとめたものだ。「しっかり抱いて、下におろして、歩かせろ!」というのが、昔からの子育ての格言だそうだが、私はそれを知らなかった。核家族になり、妻と二人だけで子育てをしてきたが、それは確かにつらいことである。妻は専業主婦になったが、働きながらというのはつらいことだと思う。私は、妻が専業主婦になることにより、半分子育てを放棄してきた。そして、妻に言わせれば、甘いパパになった。ただ、なかなか難しいこととは言え、高橋先生の言うPQを育てるための活動は、妻と協力してやってきたように思う。

 こうした講演にどんな人たちが参加しているのかは、興味のある問題である。おそらく、まじめに子どもに対してきて、それでも多少不安になり、自分たちの行為の正当性を確認しに来たのかもしれない。あるいは、子どもがそろそろ変わり初めて、対処の仕方が分からなくなって来たのかもしれない。私たちの場合は、前者だ。しかし、それでは、親は変わったことにならない。大事なことは、親もまた、子どもと同じように、自分の夢と目標を持つことだという言葉には反省させられた。ただ、私は、高橋史朗さんの「教育の原点は自分探しだ」ということには、少し違和感を持った。

 不登校児や障害児たちとその親たちの作文をいろいろ読んで聞かせてくれた。確かに、それらは感動的な作文である。学校に行けない子どもが、自分の本当の気持ちに気づき、そして立ち直っていく。また、障害児たちが自分の体の障害を受入、肯定的に受け止めていく過程とそれを見て今までの自分を変えていく母親の心の変容の過程は感動的である。しかし、本当にさがすべき「自分」などというものはあるのだろうか。学校に行けなくなっている自分がおり、自分としての身体の障害をどうしても受け入れられない自分から、やがてそれらを受入、自分を肯定的に取られるようになったというべきではないだろうか。私には、彼らがエリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』の5段階をうまく生きられたのか、それともうまく生きられなかったかの違いのような気がする。養老孟司さんが言うように「日々変化する身体としての自分」以外に自分があるとは思えない。それ以外の「自分」があるといってしまうと何か神秘的な「自分」になってしまうような気がする。


コメント
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