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江戸中期の天才技巧派絵師〈円山応挙〉と
近代絵画素朴派の大巨匠〈山下清〉の展覧会を、
愛知県美術館と松坂屋美術館で観てきました。
基本的に日本画の空間処理が好きで、
特に円山応挙に思い入れがある訳ではないですが、
大家のかなりの作品が一堂に観られるということで、
愛知県美術館で円山ワールドを楽しんできました。
前知識は無いまま解説文を読みながら観て来ましたが、
応挙はそれまでの伝統を受け継ぎながらも
新たに様々な技術も試みる前衛派だったみたいで、
少しずつ西欧から入ってくる情報を参考に、
遠近法を駆使した絵や〈眼鏡絵〉と言われる
今で言う3D絵が展示してありました。
また、屏風絵等は屏風のジグザク形状の僅かな奥行きさえも利用し、
凸の部分は近景、凹部分を遠景と描き分ける技術を使ったり、
水墨画では墨の種類と光線の加減で、
微妙な彩色が浮かび上がる工夫もされている様でした。
他にも襖絵では襖を開けた時も、その状態で絵が成り立つ様
計算ずくで絵が創られていました。
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もう、こうなってくると普通の画家の範疇を大きく超えた、
物理学者の領域にも踏み込んだ絵師だったみたいです…。
勿論、日本画家はモチーフの知識が必要なのは当然で、
生物学者の様な知識と監察眼&スケッチが大前提で成り立ちますが、
応挙は更に多くの知識を学び、応用して絵を仕上げていたのが分かりました。
あとモチーフの特徴としては、
それまであまり日本画では描かれなかった
仔犬の絵が応挙の絵として有名ですが、
日本画に〈カワイイ〉の概念を、
初めて持ち込んだ人だったかも知れません…
勝手な個人的な解釈ですが(汗)。
ただ、こういった大衆受けする作品が応挙の評価を大きく左右していたのか、
大きな人気と共に、辛辣な評価も当時少なからずあった様でした。
● 円山応挙 展