昔、学生の頃、千代田区三番町の東郷公園の近くのぼろいアパートに住んでいた。
そこはラーメン屋のすぐ裏で、部屋から窓開けてラーメンくださいというと、すぐ手渡しでもってきてくれた。
ひどいところだったが、そこだけは気に入っていた。
あの辺はすごい都会なのにやたら猫がたくさんいた。誰かが東郷公園でえさをやっているのだ。
私が窓をあけてラーメンを食ってると、かわいい猫ちゃんがニャァニャァと鳴いていた。まあ麺は食わないだろうから、あげるとすればチャーシューぐらいだ。
当時はひどい貧乏だったから、チャーシューをあげるのはすごく勇気がいったがあんまりかわいいから、えいっと、あげた。
猫ちゃんはすぐ走ってきてチャーシューに飛びついた、ように見えたが、匂いをかいだだけで食べようとしない。
なんで食わないんだよ、腹が立った。
後で近所の人が、教えてくれたのだが、この辺の猫はカリカリのえさしか食べないらしい。
小さいときからカリカリのえさを与えられ、世の中の食べ物はすべてカリカリのだと思っているらしい。
おい、猫。チャーシュー食わないって絶対おかしいぞ。本当に猫か?
落ちたチャーシュー拾って食べようか一瞬迷ったよ。