ツシマヤマネコは、対馬北部の上島を中心に、豊かな森林を擁した山岳域から田んぼ周りの里山、海沿いまで、幅広い環境で生きているそうです。最近、下島でも、じつに20年以上ぶりに生息が確認されたそうです。
下島の龍良山(たてらさん)の照葉樹林。国内最大級の照葉樹林として国の天然記念物に指定されています。かなり個体数は少ないそうですが、ツシマヤマネコの生息も確認されています。
保護センターのある上島・棹崎周辺は、海岸沿いに森林(人工林も多く、すんごくいい森というわけでもない)が広がり、背後には田んぼが多い里山が連結しており、多様な環境がまとまっています。ツシマヤマネコの個体数も比較的多いエリアだそうです。
棹崎手前の佐護の里山。対馬では平地が少ないので、それほど田んぼは多くないようです。カエルやネズミを主食とするだけに、こういう環境は好みのようです。まぁ、農家のニワトリを襲うこともあるようですが。
対馬はやはり大陸性の場所だけあって、ほ乳類相がかなり特殊です。中型のほ乳類は、ツシマヤマネコを筆頭に、ツシマテン(固有亜種)、チョウセンイタチしかいません。キツネもタヌキもアナグマもいません。大型獣はツシマジカ(固有亜種)と90年代に再導入されてしまったイノシシ(九州本土産との話)のみ。クマ類もカモシカもいません。
つまり、それっぽい大きさの糞を撮れば、ま、3種類(ヤマネコとテン、イタチ)に絞られるわけです。
あ、重要なものを忘れていました。イエネコです。田舎なのでほぼ野良みたいなもののようで、森にもけっこういるそうです。最近は技術の発達により糞からDNA分析をするとヤマネコかイエネコかはわかるそうですが、外見もしくは内容物からの識別は困難だそうです(つまり、ダメじゃん!)。
イヤ、まぁ、でも、糞しかないですね。探しましたよ、ひたすらに糞を。
事前にあまり調べていかなかったので、それっぽいものは全部写真を撮りました。全部とはいっても、途中でツシマテンもしくはチョウセンイタチの糞との区別もできてきて、見たものすべてではありませんが……。
対馬野生生物保護センターの職員の方々につきまとい、「これはどうですか? テンとの違いはどこですか? どんな場所に糞がありますか?」と聞きまくりました。環境省のアクティブ・レンジャーの方にはいろいろ教えていただきました。ほんとうにありがとうございました。
・保護センターのある棹崎公園内の遊歩道にもけっこうある。いつも5、6個はあるんじゃないかな?
・道路に多いよ。
・マーキングの意味があるようでめだつところにある。
・アスファルトやコンクリの道路でめだつ。そういう場所で多くするのか、もしかしたらそういう場所は残りやすいのかもしれない。
・道路の真ん中から谷側に多い。
・未舗装の林道でも、道を横切るように側溝が入っていて、そこだけコンクリで固めてあるような場所に多い。
・三叉路とか、交差点的なところに多い。
・テンの糞よりは太いが、小さい個体もいるので、小さいこともある。
・テンはくるりとまわるような形だが、比較的まっすぐで、ぼこぼこと太いところと細いところがある感じ。
・植物の種子…つぶつぶがあれば、それはテン。
・鳥の羽根とかは、テンにも入っていることがある。
・テンの糞は、なんて言うんだろう? 糞の基質というかよく消化された部分が多いような気がする。
その他に、イネ科の葉っぱが入っていたら確実にヤマネコだそうです。猫草はヤマネコも必要なんだそうです。
そういうことで、棹崎公園とその周辺および対馬各所でいろいろ探しました。
さ、どーんといきます!
とりあえず32個です。たぶんこの3倍ぐらい見ましたが、このへんで済ませておきましょう…。
さて、このなかでどれだけツシマヤマネコの糞があるか?? この際、イエネコのことは忘れてください。
レンジャーの方に太鼓判を押されたのはこの2個。
とくに上のは、ほぼまちがいないと。下のは白くてカチカチです。ともに古すぎる…。
この鳥の羽根が残っている2個も可能性が高いそうです(もしかしたら、かわいそう…と思われて、ご慈悲だったのかも…)。これも古いですね。
ちょっと新しくて、鳥の羽根が入っていて、「これは!」と思ったのですが、これはテンの可能性が高いという残念なお話…。周辺状況などからみてそういうご判断でした。
その周辺情報はこんな感じです。明らかにテンの糞と思われるものに囲まれている…。そして、確かにくるりと2つ折れになっている。むむ、残念。
レンジャーの方は、かなり、しつこい…、いや熱心なわたしに対して、「××のあたりが多いよ~」と秘密の場所を教えてくれました。帰りの飛行機の時間もあったので、撮った写真を見てもらってないのですが、以下は、確実ですね(イエネコは忘れてね)。
ということで、ツシマヤマネコの糞は多くて5個という感じですね。残念ながら、どれも古くて、昨日の夜にした!というのはありませんでした。テンのはずいぶんと新しいのは見ましたが……。ちなみに季節はムカデのようで、テンと思われる糞にはごろっと1匹まるのままで、けっこう入っていましたね。
ああ、また探しに行きたい、ツシマヤマネコの糞! 今度は、したてホヤホヤのを見たい!!