風になりたい

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一人っ子政策について(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第269話)

2015年01月23日 08時45分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 中国は子供を一人しか産んではいけないという一人っ子政策をとっている。これは一九七九年から始まった。
 ただし、中国の全夫婦が一人しか子供を持てないというわけではない。一人っ子政策は基本的に都会に限られていて、農村では二人産んでもいい。また、少数民族のなかには三人まで認められている民族や対象外の民族もある。
 都会の子はだいたい一人っ子なのだけど、とはいえ、漢族でも三人以上兄弟がいる人もけっこういたりする。たとえば、初代アシスタントのアニメちゃんは四人兄弟の二番目だし、二代目アシスタントのおっとりちゃんは三人兄弟の真ん中だ。
 規定以上の子供を戸籍に登録しようとすれば高額の罰金を取られる。おっとりちゃんの地元ではもし今三人目の子供を戸籍登録しようとすれば四万元(約六十五万円)の罰金だそうだ。それでも子供が多いほうがいいから、農村では高額な罰金を払ってでもたくさん子供を作る夫婦がわりといるのだとか。
 ただ、親が戸籍登録しない子供もたくさんいて、そんな子供はもちろん学校へ行くことができない。戸籍登録していない子供は「黒子(孩子)」と呼ばれ、社会問題にもなっている。一説によると中国では戸籍登録していない人が二億人以上いるのだとか。二億人といえば日本の総人口よりはるかに多い。さすが中国、二億人も戸籍登録していないなんてスケールが桁違いに大きいというべきか。
 黒子の問題があるとはいえ、それでも一人っ子政策を三十年以上続けたおかげで中国の人口増加はずいぶん抑制できた。一人っ子政策を実施しなければ今頃とっくに二十億人近くになっていたかもしれない。
 ただし、一人っ子政策の副作用として、人口ピラミッドの構成がとてもいびつになってしまった。高齢化が日本以上に急速に進み、老人の比率がどんどん高くなっている。また、子供の数が減ったために数年先には労働人口が減少し始めるという説もある。いずれにしても少ない人数で高齢者の生活を支えなければいけなくなるので現役世代の負担が大きくなってしまう。高齢化と労働人口の減少は中国にとっては大きな課題だ。
 そこで政府は一人っ子政策の規制を緩和し始めた。今までも段階的に緩和されてきたのだけど、今年あたりから夫婦のどちらかが一人っ子だった場合、子供が二人持てるようになるようだ。二人目を産む都会の夫婦が増えるだろう。
 もっとも、正式の統計で十三億人(二〇一〇年)、黒子を合わせれば十五億人いるだろうと言われている中国の人口そのものが膨大すぎる。たとえ中国の人口が半分に減ったとしてもまだ七億人以上いるわけだから、もうしばらく一人っ子政策を続けてもよさそうな気もするのだが。




(2013年11月16日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第269話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


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