風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

ファーストガンダムの思い出1 プラモデル(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第180話)

2013年06月23日 04時01分03秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 小学生の頃、ファーストガンダムがブームになった。
 あの頃、男の子の遊び道具は、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)、ルービックキューブ、ゲームウオッチが三種の神器だったような気がする。
 僕もガンダムが大好きだった。再放送を何度も繰り返し観ては、ガンプラを作って遊んだ。いちばん安い百四十四分の一モデルで三百円。小学生のお小遣いでも買える手頃な値段だった。
 ところが、欲しくてほしくてたまらないガンプラなのだけど、売り切れでなかなか手に入らない。近所のおもちゃ屋へ行ってはおばちゃんにいつ入荷するのかと聞いても、「もうちょっと待ってね」とだるそうに言うだけで、いつまで経ってもガンプラが棚に並ばない。今から思えば、おばちゃんは毎日子供たちにガンプラはいつ店に入るのかとせっつかれてうんざりしていたのだろう。郊外の小さな店では、問屋に注文したところで売れ筋の商品はなかなかまわしてもらえない。あきらめモードだったのだと思う。
 大手スーパーのなかに入っているプラモデル屋はひどかった。ガンプラが売れるものだから、わけのわからない不人気プラモデルと抱き合わせで売るのだ。ガンプラの箱とほかのプラモデルの箱とを紐で縛った姿を見て、何度ため息をついたことか。わけのわからないプラモデルなんて作りたくもないし、抱き合わせ販売なんてされてしまえば、もう僕のお小遣いでは買えない。今ならクレームの嵐になってそんなことはできないだろうけど、当時はそんなことがまかりとおっていた。
 ようやくのことでガンプラが手に入った時はほんとうに飛び上がるくらい嬉しかった。宿題なんてほったらかしにしてガンプラ作りに熱中したものだった。
 僕がいちばん好きだったのはガンキャノン。
 なんとなく重厚な感じがするし、両肩にキャノン砲がついているのも格好いい。畳のうえにザクのプラモデルを置いて、自分の手でガンキャノンを振り回しては、ザクをやっつけるシーンを空想しながら遊んだ。
 ガンダムは、敵のモビルスーツも格好よかった。敵のロボットが格好いいというのはロボット物ではガンダムが最初かもしれない。
 敵のモビルスーツではグフが好きだった。
 基本的にはザクの発展型といった感じなのだけど、そのぶんいろんなパーツがついているので、作り甲斐があった。
 ガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、ザク、シャア専用ザク、グフ、ドム、ズゴック、ゲルググ、ジオング……数え上げれば切りがない。あれやこれやで二十体くらい作っただろうか。
 ただ残念なのは、組み立てるだけで塗装までできなかったことだ。
 プラモデル用の塗料が欲しかったのだけど、子供の小遣いではとてもそこまで手が出ない。塗料を一セットそろえるとなると、かなりの額になる。油性の白ペンで「008」とガンキャノンの機体番号を書き入れたり、ねずみ色の塗料だけ買ってきて汚れをつけたりするのが関の山だった。それだけでも十分楽しかったのだけれど。
 今住んでいる広州のおもちゃ屋にもガンプラが置いてある。
 昔の単純なプラモデルとは違って大型で精巧に組み立てられるやつだ。シャア専用の赤いザクのパッケージを見ると、いい歳をしたおじさんになってもやっぱり格好いいよなあと思ってしまう。
 三つ子の魂百までもってやつなのかなあ。





(2012年6月3日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第180話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

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