風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

『枕草子』の「をかし」を「やばい」に換えてみた

2023年09月20日 06時15分30秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 第一段(抜粋)

 夏は夜。
 月の頃はさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
 また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、や・ば・い・。
 雨など降るも、や・ば・い・。

 秋は夕暮れ。
 夕日のさして、山の端いと近くなりたるに、烏の、寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。
 まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、ち・ょ・う・や・ば・い・。
 日入りはてて、風の音、虫の音など、はた、言ふべきにあらず。


第二段(抜粋)

 三月。
 三日は、うらうらとのどかに照りたる。
 桃の花の、いま咲きはじむる。
 柳など、や・ば・さ・こそさらなれ。
 それも、まだ繭にこもりたるはや・ば・い・よ・。
 ひろごりたるは、うたてぞ見ゆる。
 おもしろく咲きたる桜を、長く折りて、大きなる瓶に挿したるこそや・ば・い・。
 桜の直衣に出だし袿して、客人にもあれ、御兄の君達にても、そこ近くゐて、ものなどうちいひたる、ち・ょ・う・や・ば・い・。


第二十六段

 心ときめきするもの。
 雀の子飼ひ。稚児遊ばする所の前渡る。
 よき薫き物たきて、一人臥したる。唐鏡の少し暗き見たる。
 よき男の車とどめて、案内問はせたる。
 頭洗ひ、化粧じて、香ばしう染みたる衣など着たる。
 ことに見る人なき所にても、心のうちはなほち・ょ・う・や・ば・い・。
 待つ人などのある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふと驚かる。


第四十段(抜粋)

 夏虫ち・ょ・う・や・ば・く・廊のうへ飛びありく、ち・ょ・う・や・ば・い・。
 蟻はにくけれど、軽びいみじうて、水のうへなどをただ歩みありくこそや・ば・い・よ・。


第四十一段

 七月ばかりに、風のいたう吹きて、雨などさわがしき日、おほかたいと涼しければ、扇もうち忘れたるに、汗の香少しかかへたる綿衣の薄きをいとよく引き着て、昼寝したるこそ、や・ば・い・よ・。



(2021年2月5日発表)

 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第485話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


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