風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

寒暖の差が激しすぎる広東流三寒四温 (連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第77話)

2012年02月04日 12時45分05秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 広州の街中をすこし離れて郊外へ出ればバナナ畑とライチ畑が広がって、マンゴーの木が街路に植えられているのだけど、こちらの冬は寒い。「亜熱帯のくせになんでこんなに寒いんだ」と思わずけちをつけたくなる。
 日本の冬と変わらないくらいの寒さなので、二月二日に広州から日本行きの飛行機に乗った時、僕はジャンパーを着てズボン下を穿いていた。
 それが、一週間経って広州へ戻ってみると、むわっとした生温かい空気につつまれた。その日の日中の最高気温は二十六度。夜でもTシャツ一枚で過ごせるくらいだった。寒い日本から帰ったばかりの僕は着込んでいたから暑くてかなわない。ようやくのことで空港から家へたどり着いた時には、汗びしょになっていた。
 毎年、春節(中国の旧正月)を過ぎると、広州の気温は一気に上昇して夏みたいになる。だけど、このいい陽気はなかなか続かない。またすぐに寒くなってしまう。今夜は風が冷たいから、コートを羽織らないと風邪を引いてしまいそうだ。冬からいきなり夏みたいになったかと思えば、また冬へ逆戻り。こんな寒暖の差の激しい三寒四温を繰り返しながらしだいに気温が安定して、春らしいちょうどいいくらいの天気になる。
 ただこの時期、いい感じの気候になるまでの間にいささかやっかいなことが起きる。
 湿度が一気にあがるせいか、この寒暖の差の激しい気候のせいなのか、それともその両方が原因なのかはわからないけど、夜中になると結露して、窓ばかりでなく一階の床までびっしょり濡れてしまうのだ。陽の当たる場所は乾いてくれるけど、日陰だとなかなか乾かない。朝の結露が晩までそのまま残り、次の夜中にさらに結露するから床が水浸しになる。初めてこちらで春を過ごした時はほんとうに驚いてしまった。何事が起きたのかわからなかった。まさか床が結露するとは思いもしなかった。
 今はマンションの九階に住んでいるから、さすがに床が濡れることはないだろうけど、去年は一軒屋の一階を間借りして住んでいたので困った。いくら床をモップ掛けしてもすぐに濡れてしまうし、タイル張りの床だったからつっかけを穿いて部屋を歩くと滑って転びそうになる。洗濯物も乾かない。部屋中のいろんなものに黴が生えてしまう。体にまで黴が生えそうで怖かった。
 気候が安定するまでの間は、しばらく我慢だ。
 
 

(2011年2月12日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第77話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

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