日本の某文具メーカーは中国で自社ブランドのニセモノ商品が大量に出回っているのを知り、中国でこれだけ偽ブランドが浸透しているのならわが社の本物の製品も絶対に売れると考えて中国へ進出したそうだ。
中国で買ったその会社のボールペンの質があまりよくないので不思議に思っていたのだけど、この話を聞いてようやくわかった。僕が購入したのはニセモノだったのだ。それにしても、偽ブランドを逆手に取って自社ブランドの本物を売りこむとはなかなか商魂たくましい会社だ。
ちなみに、中国には大学入試のマークシート対応専用の鉛筆があるのだけど、それも大量にニセモノが出回っているのだとか。HSK(外国人向けの中国語検定試験)もその大学入試用の鉛筆を使わないといけないのだけど、留学中に申し込みに行った時、受付の事務員さんが、
「ニセモノが多いから、なるべくきちんとした文房具店で鉛筆を買ってね。ニセモノだとマークシートをきちんと読み取ってくれなくて、あなたの努力が無駄になるかもしれないから」
と、注意してくれた。その事務員さんによると、中国の大学入試では知らずにニセモノの鉛筆を買って試験に臨んだばかりに、不本意な成績しか取れなくて志望校へ入れない人がいたりするそうだ。
でも、そんなことを言われても僕には本物とニセモノの区別がつかない。
困ったなあと思ったのだけど、用心しておくに越したことはないから検定会場になった大学の近所にある大きな文房具店なら大丈夫かもしれないと思い、わざわざそこへ買いに行った。検定の後で自己採点した結果とHSKの事務局に返してもらった採点結果が同じだったから、たぶん本物の鉛筆だったのだろう。
閑話休題。
日本の某文房具メーカーは、中国でどのようにコピーされているのかを知りたくて、その偽ブランドボールペンを試しに分解して調査してみたのだそうだ。
もちろん、品質は本物に遠くおよばないのだけど、コピー技術のなかになかなかいいものがあって、それを使えばコストダウンできることがわかった。某メーカーはさっそく中国企業のコピー技術を盗んで自社の製品に応用し、コストダウンを図ったそうだ。
コピー商品や偽ブランドが当たり前の中国では、日本の技術がコピーされると嘆いてばかりいても始まらない。この某日系メーカーのように、中国企業のコピー技術をコピーし返すくらいのたくましさが必要なのかもしれない。なにはともあれ、タフでなければ生き馬の目を抜くような中国では生き残れないのだから。
(2011年1月27日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第75話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/