風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

腕のいい理容師さんに切ってもらったのだろうけど(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第110話)

2012年06月11日 08時10分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 理髪店で「すこし短めに」と頼んだら、思いっきり短くされ、なんだか漢民族好みの髪型にされてしまった。こちらの人はぴしっと整っていて精悍そうな髪型を好む。もっとも、ダサイと言えばダサイし、オヤジくさいと言えばオヤジくさい。中国に住んでいるといろんなリスクを引き受けなければならないのだけど、変な髪形にされてしまうのもチャイナリスク(?)の一つだからしょうがないとあきらめている。虎刈りでもないし、ちゃんと整った形になっている。悪くはない。でも、やっぱり、割り切れない。
 以前、中国人の友人に、
「どうしてそんなくしゃくしゃの髪型をするのか?」
 と訊かれて困ったことがあった。
 前髪を垂らし、ヘアセメントワックスをつけてすこしずつ髪をひねり、波立つような感じにしていた。日本でなら珍しくともなんともない髪型だ。だけど、それが彼の目には「くしゃくしゃ」と映ったらしい。
 この波立つ感がいいのだといろいろ説明しても、相手は全然納得してくれない。「子供っぽいからやめておいたほうがいいよ。ぼさぼさだもん」のひと言で終わってしまった。頑固な中国人の固定観念を打ち破るのはむつかしい。いつも負けてばっかりだ。僕がもっと丁寧にセットしておけば、わかってくれたのかもしれないけどさあ。
 ところで、今は髪型は中国人に受けがいい。
「さっぱりしたね。前よりずっといいよ」
 なんて言われる。
 この間、散髪に行った店では、腕のいい理容師さんに当たったのだろう。
 誉めてくれるのは嬉しいんだけどね。なんだかなあ。
 


(2011年6月14日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第110話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

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