幼い頃、住んでいた団地の近くにUCCコーヒーの工場があった。
母に連れられて新幹線のガード脇のスーパーへ行く道すがら、UCCの看板が遠く見えた。それでよく母にUCCの缶コーヒーをおねだりしたりしたのだけど、子供だからコーヒーはだめということで、かわりに明治のコーヒー牛乳を買ってもらっていた。
今でもUCCの缶コーヒーを無性に飲みたくなる時がある。でも、広州に住んでいるので飲めない。そこで、実家へ帰った時は必ず近所のスーパーで特売のUCC缶コーヒーを買うことにしている。甘ったるいし、おいしい味だとは思わないけど、なんだか飲みたくなってしまう。飲めば気分がほっと落ち着く。
ところで、中国にはUBC上島珈琲という名の喫茶店のチェーン店がある。
初めて見た時、
「ふーん、上島珈琲が大陸中国へ進出して喫茶店をやっているんだ」
と思ったのだけど、はたと首をひねってしまった。上島珈琲はUCCじゃなかったっけ。なんだか微妙な名前だ。
なんと、UBC上島珈琲は日本のUCCはまったく関係のない台湾資本の会社だそうだ。つまり、日本の上島珈琲のブランド名とまぎらわしい名前をつけ、さっさと商標登録してしまったのだ。しかも堂々とあちここちらにいっぱい店を出している。
大陸中国で仕事をしていると台湾系に煮え湯を飲まされることがよくあるのだけど、やっぱり台湾人は商魂たくましいよなあと妙に感心してしまう。彼らのバイタリティは見習わなくっちゃいけないかも。
(2012年3月16日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第163話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/