銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

イサムノグチと“TRICK”

2010年05月01日 | のほほん同志Aの日常
イサムノグチ

1904年にアメリカはロサンゼルスに生まれ、
1988年にニューヨークで亡くなる。

彫刻家、画家、インテリアデザイナー、造園家、
作庭家、舞台芸術家…
多彩な顔をもつ世界的なアーティスト。

李香蘭こと山口淑子との結婚や、
北大路魯山人との交遊なども有名。

日本人の父とアメリカ人の母をもつ日系アメリカ人。

イサムが2歳のとき、先に帰国した父を追って
母とふたり来日したが、すでに父は別の女性と暮らしていた。

実の父にさえ受け入れられなかった自身を
イサムはもの言わぬ石にぶつけていく…

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そんな覚えたての知識をつめこんで臨んだ、
「イサムノグチ」に出会う旅。

氏が日本の拠点とした香川県牟礼は、
庵治岩と呼ばれる良質の石の産地。

彫刻家イサムノグチがここに構えたアトリエ兼住まいは、
今そのまま、庭園美術館として公開されています。

周囲は源平合戦で有名な屋島に近い、
海と山に囲まれたのどかな風景。
制作途中の石や彫刻が、さほど広くない庭に無数に立つ、
ちょっと変わった美術館です。

いつか行きたいと思っていましたが
予約が面倒なため、延び延びになっていました。
このたび何年か越しで思いが叶ったことになります。

憧れの場所に足を一歩踏み入れて、
さて、どんなインスピレーションに打たれたかというと…

「…トリック?」

はい。
まもなく劇場版も公開される、
仲間由紀恵・阿部寛主演のあのドラマです。
(大好きなのです)

日本の田舎に伝わる怪しげな風習やならわし。
迷信深い村人たち。
「あの石には犬神様のたたりがあっての~」という、あれです。

ぐるりと回ってみましたが、ダメです、
もう何を見ても、どれを見ても
『トリック』の世界にしか見えません。

「イサムノグチ、いいよね」とか気取ってみても、
やっぱしただのミーハーなドラマ好きかと、ややガックリし、
しばらくぼんやりと、思い思いに立つ石を眺めていました。

すると

不思議です。
それぞれの石に、表情が見えてきたような。

人でもない、自然そのままでもない、
人と自然とのちょうど中間のような存在。

イサムノグチが手をかけ、時間をかけ、向き合った石です。
表情豊かなのは当然かもしれません。

ノグチはここで、孤独ではなかっただろう
そんな気もしてきました。

晩年は家族はなく、一人暮らしだったそうですが、
自分の分身のような石に囲まれての牟礼での暮らしは
きっと心安らかなものだっただろう、と。


日系アメリカ人として、第二次世界大戦中には
自ら進んで入った日本人の強制収容所でスパイと疑われ、

デザインした広島平和記念公園の慰霊碑は
原爆を落としたアメリカ側の人間であるという理由で選考もれ。
ノグチはこの落選にひどく憤慨し、そして悲しんだといいます。

(後年にはアメリカ大統領の慰霊碑を設計したものの
 今度は日系人であるという理由で却下されています)

彫刻家としての名声は得ていたものの
拠り所のない根無し草だったノグチにとって
ここ牟礼での暮らしは、日本で初めて手にした居場所だったのかも…。


ぼんやりそう感じているうちに、時間終了。

後ろ髪を引かれる思いで
イサムノグチのかつての住まいをあとにしました。

『トリック』以外の感想に、ちょっと安堵しつつ…。


▼「孤高のアーティスト」イサムノグチ ツアー報告はこちら
http://ameblo.jp/arailuka/entry-10521042797.html

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