私事ですが、我が家のかなり大きな冷蔵庫の野菜室は、
つい二週間ほど前まで、桑の葉でいっぱいでした。
そして時が流れ、今は、冷凍庫がいっぱいです。
桑の葉を盛大に食べていた蚕が、すべて繭になったのです。
その数、316個!
(ある日の収穫)
(サイズもいろいろ)
ということで、私の専らの関心は、この冷凍庫のなかの300あまりの繭をどうするか。
繭の行く末は、二つあると聞きました。
生糸。または、真綿。
生糸にするべきか、真綿にするべきか。
それが問題だ。
ハムレットのように悶々としていた私に、うってつけのツアーが巡ってきました。
「大音の糸取り」
滋賀県湖北に今なお残る、繭の糸取り工房の見学です。
こちら、賤ヶ岳のふもとにある大音は昔、いかごの里と呼ばれ、
ほとんどの家で、豊かな湧き水を使った糸取りが行われていたのだそうです。
今では昔ながらの製法で糸取りをしているのは、こちらの佃工房さんのみ。
70~80度のお湯で繭を煮ながら、わらで素早くなでて繭の端の糸をたぐり、
それを20~25本ほど束ねて、一本の糸につむいでいきます。
こちらの繭は、岐阜県の美濃から取り寄せた春蚕(はるこ)。
蚕が桑の春先の新芽を食べて育つので、糸が丈夫なのだそうです。
まるで手品のような手の動き。
この糸はすべて、琴や三味線など、和楽器の糸になるそうです。
この日のお客様の大半は、お琴の先生とそのお弟子さん。
この大音の糸を用いてお琴の糸をつくっておられる工場が近所にあると伺い、
飛びこみでお願いしたところ、快く受けて下さり、作業を見学させていただくことができました。
「琴には30年間お世話になってきたから、一度見ておきたかったのよ~」
と先生、感無量の様子。
ということで、午前中は生糸でした。
さて午後からは、真綿を使って真綿布団を作っておられるお店へ。
原料となる繭。
繭は1000m以上の一本の糸からなっており、
それを切れないように慎重に、くるくると湯の中でまわしながら糸を取るのが先の「糸取り」でしたが、
真綿の場合は、それを一本の糸にするのではなく、繭をふやかしてそのまま四角く引き伸ばします。
そのため、多少、不揃いな繭でも使えるのだとか。
糸取りに比べると簡単そう!
と思えたのは、職人さんの手つきを見ているときだけで、
いざ体験させていただくと、なかなかこんなふうにきれいにはなりません。
こうして何枚か重ねたものを、天日で乾かして、
さらにこうして二人で引き伸ばします。
その作業を繰りかえして、「真綿布団」ができあがります。
さわらせていただきましたが、軽くて、暖かくて、やさしくて、気持ちがいい!
こちらの真綿布団のお店でも、年々、繭不足に悩んでいるそうです。
養蚕農家が減り、九州や四国から繭を取り寄せていますが、
後継者不足でそれもいつまでもつだろうか、と。
そこで、自分のところでも繭を取ろうと、
三年前から、まずは桑の木を育て始めたのだそうです。
この秋から本格的に蚕を育ててみるとのことで、
今は、春の蚕で準備中。
この繭が、十日あまりもすれば、カイコガになって、卵を生んでくれるのですね。
さて、ここ最近の懸案だった、生糸にするべきか、真綿にするべきか。
この日のツアーで心は決まりました。
糸取りは、とても無理。
くわえて繭も不揃いですから、真綿にします。
最後に訊いてみました。
「この真綿布団、一枚つくるのに、どれぐらい繭がいるんですか?」
答えは、…なんと3000個!
「300個ぐらいやったら、なあんもできひんで」と。
いいのです。
ハンテン(片腕だけ?)とか、首巻き、とか、何か作って、ときどき触ってみたい。
つやつやと優しい手触りが、蚕をなでていたときの感触にそっくりでした。
(最後の最後、316個めの繭になった蚕。一番ちびちゃんで心配しましたが、がんばりました)
さて、そんな繭ツアーを終えての帰り道。
すっかり影響を受けやすい私の目は、途中で立ち寄ったサービスエリアでも。
「あ、こんなとこにも繭が…!」と、一瞬、立ち止ってしまったのでした。
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