銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

諸行無常の響あり

2021年06月18日 | 見かけだおしNのつぶやき

あまりにも有名な平家物語の冒頭。

そのなかの一文に沙羅双樹が出てきます。

朝に花開いたかと思えば、夕にはきっぱり散る。

その儚さを世の道理にたとえているのは周知のこと。

その沙羅双樹の花が開花する時にだけ公開される妙心寺東林院、

そこで聞く説法に、ちょっとドキっとしたもので。

 

性格上、また仕事柄、よくよくお寺には寄せていただくので、

この手の話には慣れたもので、

そう簡単には心動かされることはないのですが、

あら、今日はまんまと動かされました。

しかも、全くひねりも何もない単純な言葉にです。

苔むす庭に無数に落下した風情ある沙羅の花。

すでにやや茶色にくすんできていました。

それらを指差し、ご住職が鉄板ネタと思われるひとこと。

「落ちた花は、もう二度と木には戻らないのです」

 

年を重ねるたびに当たり前と思うことの指数が、

どんどん曲線を描きだした昨今。

「ああ、本当にそうですよね」

ご住職のしたりの厚顔に、深く頷く私がいました。

これって、落ちるその日がそう遠くない年齢に近づいてきたと、

自身が認識する度合いに比例するように思うのです。

どうでしょう。

 

で、この手の話の落としどころも、でしょうねと、わかりきったことなのに

うっかり頷く私なのでした。

 

「だから今を生きましょう」

 

と、世の無常をとっくに知っておられるお客様。

先程の説法は、なんとかの念仏の如く、

「ほんなら落ちる前にせいぜい食べまひょか」

神妙な顔でおっしゃいました。

なるほど。

ようやく曲線を描きだした私などには、まだまだ未知数の指標。

でもある日、カーブは、とんでもない動きをするのだということも、

それを本当の自由と呼ぶことも、

日々、現場で教えていただいています。

私を早々と老成化してくださった、皆さんに心よりお礼申し上げます。

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