あまりにも有名な平家物語の冒頭。
そのなかの一文に沙羅双樹が出てきます。
朝に花開いたかと思えば、夕にはきっぱり散る。
その儚さを世の道理にたとえているのは周知のこと。
その沙羅双樹の花が開花する時にだけ公開される妙心寺東林院、
そこで聞く説法に、ちょっとドキっとしたもので。
性格上、また仕事柄、よくよくお寺には寄せていただくので、
この手の話には慣れたもので、
そう簡単には心動かされることはないのですが、
あら、今日はまんまと動かされました。
しかも、全くひねりも何もない単純な言葉にです。
苔むす庭に無数に落下した風情ある沙羅の花。
すでにやや茶色にくすんできていました。
それらを指差し、ご住職が鉄板ネタと思われるひとこと。
「落ちた花は、もう二度と木には戻らないのです」
年を重ねるたびに当たり前と思うことの指数が、
どんどん曲線を描きだした昨今。
「ああ、本当にそうですよね」
ご住職のしたりの厚顔に、深く頷く私がいました。
これって、落ちるその日がそう遠くない年齢に近づいてきたと、
自身が認識する度合いに比例するように思うのです。
どうでしょう。
で、この手の話の落としどころも、でしょうねと、わかりきったことなのに
うっかり頷く私なのでした。
「だから今を生きましょう」
と、世の無常をとっくに知っておられるお客様。
先程の説法は、なんとかの念仏の如く、
「ほんなら落ちる前にせいぜい食べまひょか」
神妙な顔でおっしゃいました。
なるほど。
ようやく曲線を描きだした私などには、まだまだ未知数の指標。
でもある日、カーブは、とんでもない動きをするのだということも、
それを本当の自由と呼ぶことも、
日々、現場で教えていただいています。
私を早々と老成化してくださった、皆さんに心よりお礼申し上げます。
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