下駄の音

カランコロン
下駄の音です

お客様がパスポートを持ってこられました

満面の笑み
そして
「私もようやく国際人ですな、ふぁっふぁっ」
楽しそうに
取れたてほやほやのパスポートを差し出されました

照れ隠しでしょうか
パスポートを離したその所在ない手を
テーブルにたまたま置いていた祇園祭の冊子に・・・
そして
懐かしいそうに仰いました

学生の頃、確か17でした
祇園祭のアルバイトをしたことがあります
傘をかぶって鉾を引く若衆の一人
もうかれこれ60年も前のことです

さてこのかた
初の海外旅行に挑まれます！

その旅の日までは体調整え万全で臨みたい
今はそのことばかりで頭がいっぱいです
不安もありますが
この年になって日々が過ぎることを指折り数える
そんな、楽しみができるなんて…

取得されたパスポートは10年ものでした

カランコロン　カランコロン
軽快に響く下駄の音、お客様の思いが表れていました

「恐山」とは

「人が死ねばお山（恐山）さ行ぐ」
イタコの口寄せで有名な霊場恐山

写真が本で知る限り、
あの世の一丁目、恐ろしく、
おどろおどろしい場所だと思っていました
死者の霊魂が集まるところだと…

ご参加のお客様も同じ思いだったのでしょう
光りものや、派手な色目の服を着て
取り憑かれないよう事前準備万端の方

気持ち悪くなったら先に戻るね！
そう宣言されて挑んだ方

しかし、いざ訪れてみると、
確かに殺伐とした荘厳な雰囲気は漂うのですが、
それより、人間の悲哀や祈りを
強く感じる場所でした

亡くなった子供のおもちゃである風車が
カラカラ、カラカラ回り、
無造作にお菓子が供えられ、
積んである石には、
幼くして亡くなったであろう子供の名前が書かれ、
服を着せ、靴を置き、かばんをひっかけ、
人間のように作られた石があり…

息子の魂に会いに来る母親が作ったものだそうです

あっちにもこっちにも
魂が浮遊しているような気配がします

蒸し暑い、カンカン照りの日でしたが、
背筋は常にスー――ッ

皆さんはどう感じられたでしょうか

「迎えが来ても、こんなしめっぽいとこ来たらあかんな
わしは賑やかなとこに行くで！」

あら、私一人がゾクゾクしていただけのようでした

そうそう！その調子です
もし、迎えが来ても「まだまだ！」と
追い返してください

それにしても恐山
観光地でも恐ろしい場所でもありませんでした
人々の祈りある霊場
訪れて初めて分かる、
生と死の対峙を感じる聖地でした



▼我が街再発見の旅・新コースはコチラ
http://ameblo.jp/arailuka/entry-10586300396.html

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貸切バス・オーダーメイド旅行のご相談は…
銀のステッキ旅行
TEL　0797-91-2260（平日8:30～17:00）
■公式ホームページ:http://www.gin-st.com
■銀ステ旅先案内人：http://ameblo.jp/arailuka
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抜海発+++幌舞行き 木造駅舎の旅

まだ冬の、ある朝のこと。
会社に１枚のＦＡＸが届きました。

「今朝、ＮＨＫでＪＲ北海道の木造駅舎巡りの旅をしていました。

　日本最北端の木造駅舎、抜海駅や、
　ニシン漁で栄えた港町の増毛駅。
　映画ぽっぽやの舞台になった幌舞(幾寅)駅など…。

　とても良さそうでした。
　ぜひ銀ステさんで企画して下さい」

北海道ならお任せを、と企画担当に名乗りを挙げたものの、
広い広い北海道の「点」と「点」を
１日数便のわずかな列車で、いかに「線」として結ぶのか。
ルーティングの難しさに、すぐ頭をかかえるはめになりました。


それから半年。

「ＪＲ北海道・木造駅舎巡り」の旅が一昨日、終わりました。

行程表を見ると、降り立った駅、通り過ぎた駅が
次々と思い起こされます。


■7月16日
　抜海(ばっかい)駅++++〈宗谷本線〉++++天塩川温泉駅

■7月17日
　音威子府(おといねっぷ)駅++++〈宗谷本線〉++++深川駅(乗換)
　++++〈留萌本線〉++++増毛(ましけ)駅

■7月18日
　増毛駅++++〈留萌本線〉++++深川駅（その後、車で旭山動物園と美瑛・富良野へ）

■7月19日
　富良野駅++++〈根室本線〉++++〈幾寅駅を通過〉++++新得駅(乗換)++++新千歳空港


実は今回のツアーの準備をするにあたり、
この１ヶ月ほど、一番大きなサイズのJR時刻表を、
穴の開くほどにらみつづけました。


けれども何度見たところで、

「やっぱりこの駅には、２時間に１本しか電車こないよなぁ…」とか、
「朝イチのこの電車を逃すと、次は…え、お昼すぎ？！」とか、

出るのはため息ばかり。

でも

十数年前は、こんな旅ばかりしていました。


その後、旅行業に携わって８年。
気づけばこんな旅を、もう十年以上もしていませんでした。


お客様の声から始まる銀のステッキの旅づくり。

あの日、１枚のＦＡＸをお送りいただいた
この旅の本当の企画者であるお客様。
アンケートにこう記して下さいました。

「トテモ、タノシイ旅ニナリマシタ。
　コレカラモ、コンナ旅ガデキマスヨーニ！」



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恐山へＧＯ！ＧＯ！

今日から東北は恐山の大祭へ
10名のお客様が出発されました

実は、調度一年前にリクエストいただいていた企画です

一度は行きたい
でも魂までとられそうで怖い
でも行きたい
とられるかしら
でも・・・
もう少し生きていたい
でも・・・

そんな押し問答を何度も繰り返され
結局「怖いから」
そんな理由でたちぎれていた企画です

それが、また別の方からリクエストを頂戴し
早速企画し、サロン内でご紹介したところ
思いがけず反響があり出発決定
さらに・・・
最初にご依頼下さった方が
悩まれた末、お申込み下さったのです

「魂をとられない方法を聞いたから・・・行きます！」

今日、お見送りに伊丹空港に出ました
皆さん
「恐山」モード？にはほど遠く
空港内に漂う夏休み、バカンスの陽気な雰囲気そのもの
楽しそう！

その中で、あの迷いに迷われ
最終的にお申込み下さったお客様
私の姿を見て…
「こうして体全体を叩けば憑かないようよ」
パタパタ
体を叩くゼスチャー
入念です

これぞ「恐山」へ参拝の正しい姿かもしれません

日本に残る土俗信仰
それを真に受け入れ、向き合う姿勢

イタコの口寄せ

冗談めかしに参加されていたとしても
何か強い思いがあってご参加下さった方もあるのでしょうか

「恐山」
日本風土が生みだした
畏敬・畏怖の念を持てる、今では稀少な場所なのかもしれません

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逆瀬川ー西宮北口 あっという間の・・・

『人生は、あっという間のできごとよ
早かったわぁ
さすがに100までとしても
もう知れてるわね
嫌んになるわ』

逆瀬川から西北行きの阪急電車で
偶然ご一緒したお客様
道中お付き合いさせていただきました

逆瀬川駅ー
あなた、よく会うわねぇ
腰？駄目よ、動く度に悲鳴上げてるわ

小林駅ー
海外はとにかくあっちこっち行ったけれど
もう駄目
でも最後にひとつと言われたら…
ハワイね

仁川駅ー
ホテルの窓辺からあの心地良い風に当たるだけで
なんだか幸せ～
でもパスポートも切れたから
海外はもう卒業

甲東園駅ー
最後に一緒に行った友ももう亡くなっちゃたし・・・
でもハワイはもう一度行きたいなぁ

門戸厄人駅ー
え？今日はどこへって？
歌舞伎の講習会が大阪であるから
定期的に通っているの

西宮北口駅ー
80なんてすぐ
こんなに人生が早いなんて
思いもしなかったわ

あなた、
がんばんなさい！
今しかできないことが沢山あるから
スグよ、スグ
人生なんか

そう、手を振ってお別れしました

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