小切手で両替した金額はゲートオフィスに保管してもらい必要に応じて引き出す、面倒がなくて良い。問題はドラッグによる出費だ。大使館に管理されているぼくのお金の出費が多くなれば大使館はぼくに不信感を持つだろう。
マリーへのお金の支払いは今からはっきりさせた方が良いだろう、ずるずるとお金を持っていかれそうだ。前回マリーは裁判所での出費は300ルピーだったと言った。ぼくが見ている前で200ルピーのバクシシを払っていたし交通費、買物それに日当みたいなものを考えると300ルピーは妥当な金額だと思う。今日は60㌦の両替分1800ルピーでマリーに500、ぼくが1300、それは時計を入れた時バクシシ200ルピーを彼女が払ったから、その金額を考えれば今回もこれで良いだろう。細かい事を言うと多分、今日の対ドルレートは32ルピーくらいだと思う、だとすると1920ルピーな筈だ。差額120ルピーはマリーが抜いている。それを彼女に言ってしまえば、ぼくらの関係は気まずくなるだろうから言わない。
問題は日本のことだ。薬物所持でデリー警察に逮捕されたというのはどう考えても格好が悪い。その上、刑務所に入れられている。それも何年の刑でどんな生活をしているのか、外国での刑務所暮らしでは面会に行くにしてもそう簡単ではない、ただ気をもむばかりだろう。近所や親戚の人には何も言えない、まあ、外国のことだから刑務所と言わなければ分かりはしないだろうが。とにかく参った。どんな手紙を書いても心配するだろう。
「どうなっているんだ、連絡くらいしろよ」
「はい、申し訳ありません」
家族が安心するとすれば日本に帰って元気な顔を見せる事しかない。それにはとにかく早くここから出ることだ。健康に気をつけて出る事だけを考えよう。手紙は出さない里心がついたら勝負は負ける。家族のことはほっとく。