10日は、ろくに仕事をせずに渋谷へ。
シアターコクーンで上演されている、『調教師』を観にいく。
唐十郎作、内藤裕敬演出のプロデュース公演。
唐さんの芝居は好きだ。
そうは言っても何冊か戯曲を読んだりしただけだし、
テント公演も一回しか観た経験がないのです。
それでも好きだといいきれるのは、かたちはなんであれ、
唐さんの作品に触れたあと、
これだ、これが演劇なんだよ
と目が醒めるから。
そして、こうしちゃあいられないと思う。
異様な劇空間に焦がれて、火傷のあとをつけたい、体に刻みたいと思ってしまいます。
要するに、見せ付けられたエネルギーに圧倒されて、
自分まで力が湧いてくるような感覚になるのです。
この作品が、はじめは小説として完成されたのちに
『透明人間』『水中花』という戯曲になって上演され、
今回再び『調教師』というタイトルで上演されていることなど、
私は何も知らないところから観始めて、
前半は
「やっぱりテントが醍醐味の唐演劇をコクーンでやっても合わないんじゃないか?」
と感じていました。
舞台上ではいきなり人間が焼鳥屋の二階でもみ合ってる、
なのに「臭さ」を感じない。清潔過ぎる。
保健所員の田口(萩原聖人)と上田という男が
なにやらモモ(黒木メイサ)という女について話し合っている場面から、
狂水症の犬が人を噛んだという知らせが届き、
その「時次郎」という犬の飼い主である調教師の合田、
革ジャンを着た男・辻(椎名結平)、犬に噛まれたマサヤという学生、
統合失調症の女調教師・白川(木野花)と、次々に人物が舞台に引き出され、
そのつながりが整理できないまま、モモの身代わりの女(峯村リエ)が現われて前半終了。
ところが後半に入ると、とたんに過去と人々がつながりを持ちはじめ、
嘘の現実が急に真実に見えてくる。
辻という男とモモ―それは焼鳥屋にいるモモなのか、かつて辻のそばにいた犬のモモなのかわからなくなってくる―
の間に起きた、誰が見たのかもわからないような曖昧な夢のような記憶が、
繰り返し口から吐き出されると、だれもが虚構の中に現実を見始める。
雨がふり、樋を伝って下手に水が流れ込んでくる、
そして水の中に、皆呑み込まれる。
唐さんお得意の水だけど、今回は青々とした水だ。
辻が、自分の命を水中花に例えるけれど、
唐さんによると、これは千夜一夜物語をモチーフにしている。
作品の中にいくつもの背景があり、合わせ鏡のように果てしない深さを感じる。
今回見て椎名結平がこの作品の中に馴染んでいるのが面白かった。
革ジャンが煙草を吸うところはどうやってるんだろうか。
黒木メイサちゃん、綺麗な足じゃった。
押された時の倒れ方がよかった!
萩原聖人って以外とたくさん芝居出ているんですよね。違和感なかった。
演出で気になるのは、大人数になったときの、その他大勢の
「え!」「ああ」という反応の仕方。
どうもあれには慣れません。
それ以外は大人数場面はよく出来ています。
今、原作って手に入るのかな。
これから改めて唐さんの勉強をしたいと思います。