誰が言ったか知らないが、
周潤發を好きになったものが、必ず一度は経験しなければならない映画、
それが『大丈夫日記』。
私は、本当に潤發の映画が好きだと言い切れるようになったら、
この映画を観ようと心に決めていました。
なんとなく、刺激が強そうだからね。
そして今週、ついにその封印を解いたのです!
潤發演じる主人公・ファッツァイは「高給とり」の証券会社勤務。
雨の日に出会ったサリーとジョイ、ふたりの女性と付き合いだしたファは、
どちらと結婚すべきか悩んでいるところで、
ジョイに持っていた指輪を偶然渡してしまい、結婚に同意されてしまう。
それじゃあ、サリーとは別れるしかないと彼女に会いにいくと、
プロポーズされると勘違いされ、今度は指輪を渡される。
かくしてnoと言えないファッツァイの過酷な二重結婚生活が始まるのです。
はっきり言って、笑えます。
目を覆いたくなるような、ハラハラもののスクリューボールコメディ。
そしてチョウ・ユンファほどの人が、なぜこんな役を?と考えただけで
笑いが込み上げてきます。
これが『男たちの挽歌』のマーク?
これが『狼…』のジェフリー??
これが『アンナと王様』のシャムの王様???
この演技派俳優の欠片も感じられないマヌケっぷりはなんだ!
重婚がバレないように、その場しのぎで言い逃れ、
なんとか女たちをだまくらかし、しょっちゅう冷や汗タラタラ、
ビクビクしながら親友にすがる状況に陥っているにもかかわらず、
乗り切ると、妙に自信満々に
「ビック・マン(大丈夫)は俺だ!」と歌いだす陽気さ!
しかもその歌声もすばらしくヘタクソで最高!
ずり落ちたデカ縁メガネがまたまたマヌケさ倍増、面白すぎます!
酔った妻のご機嫌とりに、フランスパンを頭につけ、
眼鏡を逆にかけて「Drスランプ」の歌を踊り付きで歌いだしたときにゃあ、
そこまでバカやってくれると逆にかっこよくも見えてくるってもんです。
楽観的なのにピンチになると
「神様ぁ、僕が何をしたというんですぅ?」と嘆く、
そのコメディ的切り返しがすごいうまくて、
さすが!とも思えます。
ファが観てる側に語りかけてくるのも個人的にツボ。
(『フェリスはある朝突然に』と同じ。こういうの弱いんです。)
また、『男たちの挽歌』で、兄貴分だったマークを乞食同然に扱うボスを演じた
レイ・チーホンが、親友の同僚役でファの重婚生活を支えるために、
身を粉にして奔走するのもまた痛快です。
いいように利用された挙げ句入院させられて、ファの写真をペンで刺しながら
「死ね! 死ね!」と言ってるのに、なぜかまた助けようとするところが泣ける!
チーホンよ、どうしてそこまでしてファを助ける!
これもまた潤發映画によくある友情の深さなのか??
(「お前とは前世で何かあったな」というようなファッツァイの発言があるので、
おそらく、『挽歌』の頃の復讐をここでしているんでしょうね…)
あとは、ラジオをつけたファが、
「主演男優賞は、チョウ・ユンファです!」というアナウンスを聞いて
「またあいつかよー!」と言ってみたり、
『上海灘』の最終回を観ようというチーホンの婚約者に
「最後はユンファがババババって撃たれちゃうんだよ!」
と説明したりするご本人からのサービス付きです。
豪華女優二人(ジョイ・ウォン、サリー・イップ)が共演っていうのも贅沢。
ファと歌うシーンはすごくエレガントでかわいい!
クライマックスからオチまで、香港映画ならではのムチャクチャ加減ですが、
一度受け入れたらくせになりそうですよ。
とりあえず、観る気になった方は、
まず『男たちの挽歌』のマークの屈辱を観てから『大丈夫日記』を観ましょうね。
『男たちの挽歌』レビューはこちら
ここからマストバイ『大丈夫日記』!&『男たちの挽歌』!
さて、ほかにも周潤發出演作を観ました。
まず『ストーリー・ローズ~恋を追いかけて~』。
マギー・チャン演じる、ボーイフレンドにはこと欠かない美人学生ローズが、
大好きな自分のお兄さんのような男性に出会うまでを描いています。
彼女が大好きな保護者代わりの兄貴は、もちろん潤發なんですが、
ローズの恋人ガミンと二役を演じています。
問題は、ローズは一体だれが一番好きなのか、
はっきり分からないんです。
初めて深く好きになった人とダメになったときに、
忘れるためにパリに留学すると言いだすけど、
そこまで入れ込んでたのか分からなかったし、
兄貴も兄貴で、ただ妹が心配なのかシスコン入ってるのかいまいち分かりにくい。
それで最後までひたすら雰囲気が暗くて、つらかった。
映画としてどういうスタンスで描きたいのか分かりにくいです。
あえて、ミーハー路線で観るならば、ガミンの笑顔満載なところ。
潤發の笑顔フェチは萌え~です。おそらく。
あとベッドシーンがたまりません(笑)。
次の日にローズとガミンが初体験の話をしてるとき、
「あなたはいつ?」とローズが聞くと
「うーん…昨日の夜」とおどけてみせるガミン。
ひゃー。
ところでまるっきりネタバレですが、
潤發の死に方の美しさがこの映画でまた拝めます。
なんであんなにも切なく死ねるんだろうか。
意識を失っていくまでのあの演技、悲しいよー。
余計暗ぁーくなってしまいました。
あと一本は『アゲイン/明日への誓い』。
これは『男たちの挽歌』の前日談なんですが、
監督がジョン・ウーからツイ・ハークに替わったせいか、
まったく別物映画になってます。
マークがベトナムにいる、いとこと叔父を
女ボスの協力を得て香港に渡らせるんですが、
なんでホー兄貴の前日談じゃないんだろう。
続編である意味がない内容です。
あ、時任三郎が思いっきり吹き替えで出演していて、
なんで出てるんだろうかと思ってしまいました。
香港の日系の方でいいような。