台風で足元をベチャベチャにさせながら、
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる最後の作品、
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」を初日に見てきました。
緊急事態宣言解除の初日でもありましたが、
チケットの購入はギリギリまで待って、
なるべく入場者が少ない回を選んで見に行きました。
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』最新予告
ちなみに007シリーズは学生の頃から機会があれば劇場で見ていて、
ダニエル・クレイグが主演した作品については
最初の2作はテレビで、後の3作は劇場で複数回鑑賞。
Q役のベン・ウィショーが出演するようになってからは
やる気を出して初日に見たり、劇場でも繰り返し見に行ったりしています。
何故3作分のプログラムの画像かというと、
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) October 1, 2021
私がベン・ウィショーのファンだからですっ!! QQQ https://t.co/WECiPbWYqf
前作の「スペクター」で犯罪組織スペクターの親玉ブロフェルドを捕らえた後、
スペクターの一員であったミスター・ホワイトの娘マドレーヌとともに姿を消し、
ジャマイカで実質引退生活を送るジェームズ・ボンド。
旧知の仲であるCIAのフェリックス・ライターが現れ、
誘拐された科学者の救い出すよう依頼される。
…というのが、今回明かされているあらすじ。
今回は私の大好きな「フリーバッグ」「キリング・イヴ」のクリエイター
フィービー・ウォーラー=ブリッジも脚本チームに参加していることもあって、
特に楽しみにしていました。
(もっとも彼女はストーリーが出来てからの参加で、サポートのような役回りだったらしい。)
#ノータイムトゥダイ
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) October 1, 2021
フィービー・ウォーラー=ブリッジは既にある脚本に異なる方向性を加え、登場人物を掘り下げるために参加したらしい。
そして「ボンドはボンド」であり、ボンドを女性にするよりも女子のお手本となるような強い女性を別に作る必要があるとの回答。https://t.co/eNbxv2jLru
クレイグ版ボンド作品の中では最も長い上映時間163分。
鑑賞時にもさすがに長いと感じましたが、
ダニエル・クレイグを送り出すためにはこれだけの舞台が必要なんでしょう。
実際、もうしばらく007シリーズは作られないんじゃないかと思うほどの幕切れでした。
(もちろんJames Bond will returnの文字は出てきますのでご安心を。)
台風の低気圧で頭痛が酷い状態で見たので、
正直思考が低下してちゃんと理解できたように思えないですが、
記憶している範囲内で感想を残しておこうと思います。書きながら思い出せるかも。
(間違った認識をしているところがあったらすみません!)
【ここからはネタバレ注意!!】
●突然の別れ…!
過去を清算し、マドレーヌとの新しい人生を歩むためヴェスパーの墓を訪れたボンド。
しかし墓が爆破され、命を狙われたジェームズはマドレーヌがスペクターに自分の位置を教えたと思い込み、
激しく非難するだけでなく、列車に乗らせて、別れを告げてしまいます。
…ちょっと待って、いくら人を信用出来ない諜報部員だからといって、
連れ添った恋人をすぐに疑うなんてひどくない? ちょっと短絡過ぎでは…?
第一、ヴェスパーの墓の位置なんてスペクターならすぐに調べがつくのでは…?
そして「5年後」の字幕にびっくり(笑)。
しかし見終わってから考えると、のちに登場する娘の存在を彼に伏せておくには
この別れと5年間が必要だったんでしょうね。
●気分が上がるちょい役チェック
科学者の一人として「フリーバッグ」の銀行員のおじさんことヒュー・デニスが端役で出てて興奮。
普段から主役級俳優よりバイプレーヤーが好きだから、
大作に知ってるor興味のある英国俳優が出ていると小さい役でも嬉しくなっちゃう。
●新007、ノーミ登場
CIAのフェリックスやローガン・アッシュと立ち寄ったジャマイカのクラブで
「キャプテン・マーベル」のマリアことラシャーナ・リンチが演じるノーミと出会うジェームズ。
実は彼女は死んだと思われているジェームズの後釜として007を割り振られたMI6だとわかります。
(ジェームズはMと電話ごしで久々の会話)
MI6内でも私たちの世界と同じく007=ボンドで定着しているらしく、
職場でボンドを引き連れたノーミを「007」と呼ぼうとした同僚たちが
困惑の表情を浮かべているのがなんともおかしい。
●新人エージェント、パロマ!
科学者ヴァルド・オブルチェフはMが極秘裏に進めていた「フェニックス計画」という
DNA兵器開発に携わっていたため何者かに誘拐されますが、
MI6とCIAは情報交換を行っておらず、
MI6はノーミが、CIAはジェームズとサポート役のパロマがそれぞれオブルチェフを追うことに。
「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」のアナ・デ・アルマス演じるパロマは、
今回の作品の中でもっとも輝いていたエージェントだと言えるかも。
やる気に満ちているパロマは、経験が浅い故にちょっと空回り気味で、
合言葉の確認を忘れたり、
タキシードを着せるためにジェームズの服を自分から脱がせようとしたり。
現場に乗り込んだらまず酒を一杯ひっかける余裕を見せる、
ジェームズのベテランぶりが頼もしい。
しかしいざオブルチェフの追跡となるとパロマも本領発揮。
敵をなぎ倒し、素早く車両を調達した上で作戦を成功させ、
ジェームズも彼女の手腕を認めます。
後でプログラムを見たら監督のキャリー・ジョージ・フクナガがキャラクターを考え、
フィービーと共に台詞を練ったとか。やっぱりフィービーは期待を裏切らないっ!!
パロマには今後も機会があれば登場してほしいくらいだなー。勿体ない。
●オブルチェフは、一体何者?
科学者オブルチェフを追ってきたはずが、
MI6の監視下にあるはずのブロフェルドの声が響く中、
スペクターのメンバーに囲まれてしまうジェームズ。
しかし、オブルチェフがターゲットの対象となるDNA情報をすり替えたために、
ジェームズではなく、スペクターのメンバー全員がDNA兵器をばら撒かれて即死してしまう。
ジェームズはパロマの協力を得て、なんとかオブルチェフを捕らえ、
フェリックスたちの前でスペクターのメンバー殺害の首謀者を問いただすが、
実はCIAのローガン・アッシュがオブルチェフと同じ組織の一味であり、
ジェームズとフェリックスを船に監禁し、オブルチェフを連れ去る。
重傷を負ったフェリックスは浸水し沈みゆく船の中で亡くなってしまう。
つまり、
スペクターがオブルチェフを誘拐、ジェームズの暗殺を要求
↓
実はオブルチェフはスペクターの壊滅を企む全く別の組織の一員のため、
ジェームズではなく、その場にいたスペクターのメンバー全員を殺すための兵器にすり替える
↓
ジェームズではなく、スペクターのメンバー全員死亡
↓
ジェームズがオブルチェフを確保
↓
ローガン・アッシュがオブルチェフを元の組織に連れ帰る
ということだと思うのですが、
見ている間はややこしくてなかなか関係性が頭に入ってきませんでした。
●Qのディナーデート!!
英国へ戻り、古巣のMI6へ「来客」として戻ったジェームズは、
マネーペニー(ナオミ・ハリス)の誘いで夕食を準備中のQの家へ。
ベン・ウィショーがインタビュー等で今作は
「Qの私生活が垣間見える」と語っていたので楽しみにしていたのですが、
「スペクター」で語っていた猫たちや、気になる男性とのディナーを用意するQの姿が見られるとは!
エプロン代わりの日本製の前掛けも、公開前から話題になってましたよね。
ベン本人の個性が反映されているのか、
Qのセクシュアリティが明言されて嬉しかったです。
その後、Mのオフィスでジェームズと出くわしたQが、再会済であることを悟られまいと、
「ボンド久しぶり〜(汗)」とごまかすシーンが最高に可愛かったです(笑)。
嘘が下手くそすぎる!(逆に言うとベンの芝居がうまい!)
そしてMは、Qがジェームズを家に泊めているのは分かっている、と言っていた気がするのですが、
ジェームズが家に泊まってて、彼氏候補の男性にはバレないんだろうか!?
と勝手に心配してみたり。
でも00Qシッパーは絶対ここで喜んでいるはず(笑)
ずっとジェームズに振り回されてばかりだから、Qには幸せな私生活を送ってほしいな(笑)。
●能面サフィンとマドレーヌの過去
ジェームズと別れた後、なななんとブロフェルドのカウンセラーになっていたマドレーヌ。
(父に殺しをさせてた男にカウンセリングを施すなんてまともじゃないぜ!)
普段はロンドンのクリニックで診療しているらしく、彼女の元に一人の男がやってくる。
その男こそ、かつてスペクターに家族を殺された復讐のために
マドレーヌの母親を殺したリュートシファー・サフィン(ラミ・マレック)であり、
科学者オブルチェフやローガン・アッシュのボスだった。
サフィンはマドレーヌを殺さずに生かしてやった見返りを求めて、
ブロフェルドを殺害するよう、DNA兵器である香水を差し出す。
一方、ジェームズはもはやブロフェルドのみとなった
スペクターの壊滅を狙う存在(つまりサフィン)を追うため、
Mからブロフェルドとの面会を許されます。
面会を前に、香水をつけたマドレーヌと再会するジェームズ。
ところが、いざブロフェルドと面会する段になり、
うろたえて外に出てしまうマドレーヌ。
DNA兵器の香水をつけていることを知らないジェームズは、
彼女の手首を掴んだ手でブロフェルドにつかみかかってしまい、ブロフェルドは死んでしまう。
香水が出てきたあたりでこうなることが予想出来ちゃった!
サフィンが何者なのかは一番最初に描かれているので、
今回の敵はサフィンであることは観客にはわかっていますが、
過去の悪役よりもインパクトが薄かった気がします。
何故、彼に多くの人がついていくのか…
それほど牽引する力量があるのかちょっと分かり難い。
おそらく、スペクターに恨みを持つ、同じような境遇の部下なんだろうけど…。
例えばブロフェルドは「スペクター」の会議のシーンでその威厳が一見してわかるのですがねー。
そういう描写が足りないですよね
●マドレーヌの秘密
マドレーヌはサフィンに母親を殺された現場であるノルウェーの旧自宅へ身を隠し、
5年前の彼女にスペクターとの間に繋がりはなかったと知ったジェームズはマドレーヌと和解。
そして、彼女にマチルドという幼い娘がいることを知ります。
マドレーヌはジェームズの子ではないと言いますが…
いやいや、娘に決まってるだろっ!
●戦場でもお茶を欠かさない英国魂
マドレーヌとマチルドはサフィン一味に誘拐され、ノーミと合流するジェームズ。
ノーミはサフィンを追跡してたはずなのに、ジェームズが散々銃撃戦した後に現れて
そりゃジェームズも「何してたんだ?」と言いたくなりますよね。
2人はマドレーヌの旧自宅に隠されていた情報を元に、
Qが手配したグラインダーで、サフィンのアジトでありDNA兵器工場…
Qいわく、特定のDNAに反応するナノボットを製造する工場の島へと乗り込むことに。
(日露の近海の島らしい。)
ガジェットを取り出すQの引き出しの中にティーセットが入っているのが、
非常に英国的で笑いました。
●ボンド、土下座する
ノーミと共に島に乗り込んだジェームズを、
日本風の畳を敷いた空間で、マチルドを手元に置いたサフィンが待ち構えている。
どういう会話の流れだったのか、記憶が曖昧になってしまったのですが、
ジェームズがサフィンにジワジワ土下座をしながら謝るシーンで、
畳の上だから様式に合わせて土下座なのかと思ったら、失礼ながらちょっと笑いそうに。
●うさちゃん…
うまく逃げ出したマドレーヌと娘マチルドを、ノーミに頼んで島の外へと送り出した後は、
Mが命令を下したミサイルが着弾と共に、島にあるミサイルが誘爆するように
アジトのミサイル発射サイロの扉を開放。
しかし、サフィンとの格闘となり、マドレーヌと娘をターゲットとしたナノボットに感染。
サフィンはジェームズに倒されますが、
二度とマドレーヌとマチルドに触れることの出来なくなったジェームズは死を選び、
マドレーヌとの最後の会話を交わしながら、ミサイルの着弾を待つのでした…
…マチルドと血の繋がっているジェームズは、
感染した時点で死んでしまうんじゃないの?
あ、マドレーヌ由来だからジェームズは感染しても平気なのか…
と、頭の中が混乱した状態でこのエンディングを迎えました(苦笑)。
私はてっきり、ジェームズがうさちゃん人形をマチルドに渡して大団円!だと思っていたのに。
マドレーヌとマチルドだけがターゲットだとすれば、
今後2人に会わずに逃げて生存するという選択肢もあったかも。
(イーサン・ハントならありえそう。)
今回のジェームズはとりあえず生き延びようと足掻く事すらしない。
ダニエル・クレイグにとって最後の作品なので当然でしょうが、
それを選ばなかったのは、2人を守るというより、
会えないくらいなら死んだ方がマシだという結論なんでしょうね。
いやいや、でもあんたマドレーヌを5年以上も放っておいたくせに…。
ちょいと勝手じゃないですかね。
まあ、愛情なんていつも自分勝手なものか。
振り返ってみると、演出上の説明やメリハリが足りないような気もします。
オブルチェフを巡ってはスペクター&サフィン&MI6&CIAの4者がそれぞれ
保護しようと追っているわけですが、
MI6のジェームズはCIAのために働いて、CIAのローガン・アッシュが実はサフィンの手下で…と、
組織が入り混じっていてわかりにくいし、
そこに加えて、ナノボット兵器が「本人だけでなく血縁者も被害にあう」という複雑さ…
さらに言うと、サフィンはもっと「満を持して」、印象的にマドレーヌの前に再登場して欲しかった。
前述しましたが、彼のリーダーとしての描写も足りないし。
サフィンの組織も、スペクターみたいに組織のロゴを作るべきだったと思う!
キューバでのパロマの活躍はすごく魅力的だったけど、
それ故に、取ってつけたような存在になってしまってるし、
せっかくの新007、ノーミがちょっと霞んでしまうのも勿体無い。
本当なら「スカイフォール」のマネーペニーくらいフューチャーされてしかるべきなのに。
マドレーヌ以外の新しいボンドガールが必要だったんだろうけど、
そもそもジェームズとノーミがオブルチェフをバチバチ奪い合うだけじゃいけなかったんかい?
そして何より、突然マドレーヌを一方的に振っておいて、
5年後に自分の勘違いだったとわかると簡単によりを戻すジェームズの身勝手さ…。
もうちょっと苦渋の決断で別れるなり、深く許しを乞うなりしてたら、
彼の心の動きも見えてくるのに、これじゃーただの軽薄な男じゃん…
サフィンも自分が家族で生き残った存在ゆえに、マドレーヌやマチルドを見逃してしまうのはわかるけど、
マドレーヌを助ける場面はなかったし、マチルドの見逃し方もやけにそっけない。
これだけ尺が長いんだから、生き残った子供としてのサフィンの回想くらいあってもよかったんじゃないか。
そしてスペクターへの復讐のはずなのに、何故か潰滅後も世界中の人間をターゲットにしている点。
どういう基準でターゲットを選んでいるのか…(頭痛くて聞き逃してたかな…)
なんだか、ジェームズもサフィンも、やっていることが一貫していない感じがするんですよね。
…思い出しながら書いていたら、思いもよらず辛口で不満たっぷりになってしまいました。
冷たい足のまま、頭痛を抱えて見ていた一観客としての感想記録として受け止めてもらえたら幸いです。
改めて6代目ジェームズ・ボンド、お疲れ様でした。
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