◆2月22日(火)◆
2月18日に公開された映画「オペレーション・ミンスミート」を見に行きました。
オミクロン株の影響で感染が拡大する中、引き続き劇場に行くのは出来るだけ控えていますが、
「ファーザー」に続き、待ちに待った敬愛するマーク・ゲイティスの出演作なので、劇場で見ないわけにはいきません。
ベン・マッキンタイアのノンフィクション本(『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』)を基にした、コリン・ファース、マシュー・マクファディン、ケリー・マクドナルドら出演の映画”Operation Mincemeat”にマークが出演するようです。 https://t.co/panX4X0w7o
— マーク・ゲイティスinfo (@MarkGatissJp) December 6, 2019
英国での公開日は2021年1月7日から4月22日に延期されていたので、
状況によっては日本も延期になるかと覚悟していましたが、無事予定通りに公開されました。
『オペレーション・ミンスミート』本編映像解禁!作戦の全容は… 2.18公開
第二次世界大戦中の1943年。
イギリス連合国軍のシチリア上陸作戦を成功させるため、
諜報部員のユーエン・モンタギュー(コリン・ファース)と
MI5のチャールズ・チャムリー大尉(マシュー・マクファーデン)は
イアン・フレミング少佐(ジョニー・フリン)が提案した
「偽の作戦に関する文書を持たせた死体を海に放流し、ナチス・ドイツを欺く」作戦を支持する。
海軍情報部のゴドフリー提督(ジェイソン・アイザックス)に
「最も失敗しそうな作戦」と揶揄されながらも、
ユーエンの弁護士時代からの知り合いで有能な秘書官へスター(ペネロープ・ウィルトン)や
チャールズの誘いで参加することになった海軍省のジーン(ケリー・マクドナルド)らの協力を得ながら、
2人は作戦成功のため、入手した男性の遺体に「海兵隊員のウィリアム・マーティン少佐」と名付け、
詳細な個人情報や人となりを構築していく…
原作である『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』は未読なのですが、
映画に登場するイアン・フレミング少佐(言わずもがな007シリーズの作者)や、
Mことジョン・ヘンリー・ゴドフリー提督は実際にはこの作戦に関わってないようなので、
脚色されているところも多いのだとなんとなくわかります。
この2人は英国の諜報部というイメージをわかりやすくするために登場させてるのかもしれませんね。
映画ではジーンに片思いするチャールズと、
彼女に急接近するユーエンの三角関係も描かれていて、
鑑賞された方の「恋愛要素いらない」という感想も見かけていたのですが、
原作ではどうだったのかなー。多分映画だけの演出なんだろうな。
(現実ではビル・マーティン少佐の恋人の写真を提供した女性はMI5の職員だったようです。)
嫉妬したチャールズがジーンを動揺させようと、
ダンスしながらユーエンの家族のことを吹き込む場面は「馬鹿だねぇ」と頭を抱えちゃったなー。
結果的には良かったのかもしれないけど。
それにしても、軍服着せて文書持たせてポイっと海に投げるのかー、
くらいの軽いイメージで見はじめましたが、
ユーエンたちが作り上げていくビル・マーティン少佐の人物像が、
まるで映画や小説の主人公の肉付けをしていく過程のようで、大変興味深かったです。
開封されたか確認するために、手紙の中にまつげを落としておくとか、
さらには死体がどこに漂着してドイツの諜報部員の誰に情報が渡り、
上官の誰に知らされるのか、特定の個人まで想定して計画が立てられていく様子に、
なんて緻密な作戦なんだ…と気が遠くなります。
事実は小説よりも奇なり、なんて言いますが、
現実の欺瞞作戦は物語よりも繊細ではるかに想像力を要するのが意外。
チャールズが自分の周りに本を執筆している軍人だらけで「作家に囲まれてる!」と文句を言っていて
劇場でもちょっと笑いが起こってましたが、
実はスパイは小説家以上に想像力とストーリーテリングの力を要する職業なんだなと納得しました。
この映画を見た当時は、ロシアがウクライナに進軍する前でしたが、
状況を注視しながら、現代の諜報活動でもあそこまでの繊細さが求められるかな…
むしろもっと派手なネット上の活動が求められたりするのかな…などと考えたりしていました。
ところで、私のお目当てのマーク・ゲイティスは、ユーエンの弟アイヴァーを演じています。
劇中では共産主義者としてゴドフリー提督に目をつけられているため、
ユーエンの立場を危うくする身内として、本人がいないところでもしばしば言及されている存在。
予告編では全然出てこなかったので心配でしたが、思ったより登場していてホッとしました。
実際のところ、アイヴァーは当時英国と同盟国だったソ連のスパイで、
う「インテリゲンチャ」のコードネームで英国の情報を流していたと見られています。
弟は弁護士としての活動をしていない兄が英国のスパイであることを知っていたようですが、
ユーエンの方は劇中のように共産党員ではあったが卓球と芸術を愛する変わり者だという認識だった様子。
さらにアイヴァーは国際卓球連盟会長として40年以上卓球の国際普及のために活動しています。
卓球というと強豪国として中国が有名ですが、
中華人民共和国が誕生して間もない1950年代には毛沢東と直接コンタクトをとって、
中国が世界的に活躍出来るスポーツとして紹介したのがこのアイヴァーだったのです!
劇中に登場する第20委員会のジョン・セシル・マスターマン委員長(アレックス・ジェニングス)は、
この彼の国際卓球普及への情熱が常軌を逸しているという点で行動を怪しんでいたそう。
さらに、アイヴァーは映画評論家でもあり、
(クレジットされていませんが)「下宿人」「暗殺者の家」「サボタージュ」「知りすぎていた男」「間諜最後の日」といった
初期ヒッチコック映画の製作補としても知られています。
本編の冒頭で、ユーエンが息子にジョン・バカンの小説「三十九階段」"The 39 Steps"を読んで聞かせ、
アイヴァーが人目を気にしながら外出する?姿が映し出されますが、
これを映画化したヒッチコックの「三十九夜」の製作にもアイヴァーは関わっているのです。
この他、映画テレビ技術者協会、世界平和協議会、動物保存協会と様々な肩書きを持った人物で、
アイヴァーひとりだけを取り上げても面白すぎて1本映画が作れそう!!
考えてみると、役者で製作者で脚本家でコメディアンでLGBT活動家でもあるマークにはぴったりの役かも。
キャスティングの妙だな。
そうだ最後に。第二次大戦中の暗号解読という点でエニグマ解読に挑むアラン・チューリングを描いた
「イミテーション・ゲーム」を思い出したりもしていたのですが、
ペネロープ・ウィルトンが暗号解読班として女性2人を連れてきたのが記憶に残りました
「イミテーション・ゲーム」の中でチューリングが仕掛けたテストを
「まさか女が解けるわけがない」と思ってたのを考えると、
あそこに連れてこられた彼女たちはそんな時代の社会環境で職を得てる相当優秀な人材なんだろうなー。
彼女たちの経歴も面白そうですよね。
参考:
The Incredible Story of Ivor Montagu: The Godfather of Chinese Table Tennis - Populous
ピンポン外交の陰にいたスパイ(柏書房株式会社)←読んでみたい
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