アートセラピー「心のお絵かき」の世界

アートセラピストで妻で母で女の、楽しく豊かでゆるい人生後半日記。

ドライビング・ミス・デイジー

2019-06-27 11:44:05 | 美術・芸術
昨日、紀伊國屋ホールで、市村正親さんと草笛光子さん主演の「ドライビング・ミス・デイジー」を見てきました。

う~ん、素晴らしかったです!!

草笛光子さん、85才とは思えない美しさと声の張り。
あんな風に年をとりたい、という目標ができましたわ。

市村正親さんも、相変わらずの声量と、おかしさと哀しみの混ざった素晴らしい演技でした。

数年前に美輪明宏さんのエディット・ピアフを見たのが最後でしたが、入口ホールに山のように飾られた花かごを見て
「ああ、これがお芝居よね」と、一気に華やいだ気分になりました。





ユダヤ人のお金持ちの未亡人とその息子、そして未亡人に雇われることになった黒人運転手の人間模様の物語です。

不当な人種差別を受ける黒人、雇い主でお金はあるけれど、やはり人種差別の標的になっているユダヤ人親子、
価値観の違い、誰にでもやってくる老い、とけっこう重いテーマが終始漂い続けます。

最初はお二人の軽妙な掛け合いが可笑しくてけっこう笑えるのですが、後半になるにつれ、それらのテーマは
避けがたい壁になって表れてくる。

というか、お互いの存在によって、自分がそのような壁に無意識に無自覚に生きてきたことに気づいてしまって、
そこから心の中の葛藤が始まってしまうんだよね。

私たちにもあるでしょう、知らなかった意識していなかった時はのんびりなにごともなく過ごしてきたのに、
何かを知ってしまったわかってしまったことで、心の中にさざ波が立ってしまったことって。

外界はなにも変わらないのだけれど、自分の内側が変化することによって生み出される葛藤です。

なので、非常に苦い場面がたくさん出てくるわけ。

それでも私たちは希望を持って舞台を見続けます。希望を舞台に託すような気分で。

そして最後に、私たちはふっと暖かい涙がにじんでくるのを感じます。

いろんな壁はある。

でも、相手を思いやる気持ち、相手を大切に思う気持ち、そんな非常にシンプルな気持ちが、
壁を粉砕しあるいは溶かしてしまえるのだと、二人の渾身の演技が教えてくれます。

難しい事なんて何にもいらない、素朴な愛情が結局一番強いんだってわかった時、なぜかほっとしたような
暖かい涙がにじんでこぼれました。

ああ、そうなんだ。

やっぱり。

これでいいんだって。