トランプ大統領に「中国ウィルス」と名指しをされ、「コロナの細菌を持ち込んだのは、米軍だ」と、早速中国の政府報道官が反論しました。
子供の喧嘩と変わらない次元ですが、二大強国のせめぎ合いには、安閑としておれないものがあります。いつの間にか地球をのし歩く恐竜となった中国について、今回も、頭や手や足の情報をもとに、勉強していきたいと思います。注目したのは、青字で示した次の2つの叙述です。68ページです。
〈 1. 2011 ( 平成23 ) 年、当時の胡錦濤国家主席の発言 〉
・「現行の国際通貨体制は、過去の遺物だ。」( 米有力紙に明言した。 )
・「西側が通貨を手段に、共産党政権の転覆を企てた。」「門外漢の我々も、国際金融を学んだ。」
・ 人民元の国際化という、「脱ドル依存」へと舵を切る。
・ 2012 ( 平成24 ) 年、円と人民元の直接取引を開始し、みずほコーポレイト銀行が参加
・ 2013 ( 平成25 ) 年、中国・台湾間の人民元直接取引に、三菱東京UFJ銀行等、日本の3メガバンク参加
2017 ( 平成29 ) 年に、トランプ氏が大統領になって以来、米中戦争がエスカレートし、ペンス副大統領が、中国はアメリカの敵とまで断定した遠因が、胡錦濤氏の発言にあるのではないかと考えます。国際通貨体制がドルを基軸通貨としていることで、アメリカによる世界の金融支配が可能となっているからです。
みずほコーポレイト銀行や三菱東京UFJ銀行など、日本の3メガバンクが中国に協調していたことを、日本のマスコミが報道していたのかどうか、金融に弱い私は記憶にありませんが、アメリカは日本も許していないはずです。
二大強国の間に挟まれ、現在の日本がどのように振る舞っているのか、具体的に知りませんが、双方の顔を立てながら、得意の曖昧戦略で時間を稼いでいるのでないかと、そんな気がしています。
〈 2. 中国では経済成長に伴い、中間所得層が増えた。 〉
・ 国有企業の社員や、公務員に、富が集中する現象が生まれた。
・ 世界では、中間所得層が社会変革の担いになるが、中国は異なる。
・ 政変が続いたため、「地位や権益を失いたくない」と、保守的に考える者が多い。
・ 彼らは、中国共産党の、最大の支持基盤になっている。
国有企業の社員と公務員は、「親方日の丸」の職場に安住し、お客へのサービスを忘れた人間です。昔の国鉄や電電公社の社員たちが、横柄に対応していたことを思い出すと、よく分かります。騒乱や飢餓、あるいは殺戮が続いた中国で、安定と豊かさを保証している共産党政権を、彼らが支持する気持ちが理解できます。
しかしここでまた、記事を書いた日経記者への苦情です。「中間所得層を構成する、国有企業の社員と公務員の総数は、何人なのか。」・・・この数字があれば、政府を支援する国民の人口比率が分かります。残りは私企業の社員と農民ですから、変動する人口が、中国の未来を予測させます。
富裕層と中間層は都市部に住み、貧困層は農村部にいると説明していますが、「都市部の人口と農村人口」の正確な数字が書かれていません。細かなデータが説明されても、マクロの数字がないと、全体把握ができません。都市部と農村の人口につき、やっと見つけた説明を、紹介します。
「国家統計局によると、2011 ( 平成23 ) 年での都市人口は、6億9千万人、」「農村部は6億5千万人で、初めて都市の人口が、」「農村を上回った。」「都市人口のうち、約2億人が農村からの出稼ぎ者である。」
出稼ぎ農民数は、統計局の数字によると2億人ですが、別に4億人というデータもあります。農村から都市への人口移動の背景にあるのは、所得格差です。都市部住民の年間所得が、 2万1,810 元であるのに対し、農村部は6,977 元と、およそ 3分の1 です。この人口流入が、農民工と言われる低賃金労働者を大量発生させ、社会問題になっています。
「中国の経済成長は、農村の若者を中心とする労働力が、」「低賃金労働者として、都市へ供給されることによって、支えられてきた。」「都市部では、成長の恩恵を受ける、富裕層が生まれる一方で、」「農村からの流入者は、貧困に苦しむ。」「若者を欠いた農村では、成長が鈍り、都市との経済格差は広がるばかりだ。」
若者が住んでいるのは、市内各所にあるマンションの地下4階に作られた、核シェルターの一角です。石造りの部屋は、核シェルターの一部を改造した違法建造物で、広さは15平方メートル、家賃は月額約6,300円だそうです。こうした地下室に住む若者たちは「ねずみ族」と呼ばれています。人口2千万人の北京市内に、2百万人近くいるそうです。
彼らは、元々から都市部に住む国有企業の社員や公務員と同様、中国経済を発展させた国民です。恐竜となった強大な中国と、縁の下で支えてきた庶民との格差を、もう少し調べ、日本を考える一助にできたらと思います。
本日はここで一区切りとし、明日も「ねずみ族」(農民工) について報告します。