田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

直人!! タスケテ(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-02 00:01:20 | Weblog
3

直人の従弟だった。
直人は三年たてば従弟の隼人がじぶんの今の歳に近くなる。
それを計算にいれていた。
そして、霧降での三年後の再会を演出した。
ニクイひと。
だがそこまでだった。
思いでにひたっているどころではない。
黒のセダンがフロントガラスを銀色に光らせてBMWと並んだ。
バンとノーズをたたきつけてくる。
強引におどして、美智子たちの車を停止させる気だ。
里佳子がブレーキを踏んだ。
相手の車が遠ざかる。

「美智子、体をひくくして」
「おばさん、わたしこわい」
「がんばって。あなたは鹿沼の翔太郎オジイチャンの孫よ」
 
バシツとサイドウインドが砕けた。
「美智子。かがんで」

「隼人。銃撃されてる。どこ、どこにいるの。たすけにきて」
「もうきている。頭上にいる」 
ばりばりとヘリがホウバリングしている音がする。

「どうする。隼人」
「武器は」
「攻撃ヘリじゃないから。でも、サル彦ジイチャンの猟銃がある」
「ウエンチスターのライフルじゃないか。直人の霊体装甲も着ている。ピストルも入っていた。これで十分だ」

「狙撃されてる。はやく来て」
「路肩に車を止めるんだ。心配するな。いますぐおりる」

クラクションを鳴らして迫ってくる。
威嚇しているのだ。
どうせ逃げられっこない。
嘲笑っているのだろう。 
 
この襲撃がなにを目的としているのか?
なにを意味しているのか?
美智子にはわからない。
だからこそ怖い。

襲撃犯がBMWの後部扉から美智子をひきずりたした。
速く。
隼人。
タスケテ。
速く!!
美智子はパニックをおこした。
うわ言のように、タスケテ。
直人。
隼人と叫んでいた。

里佳子が運転席からとびだしてくる。
必死の形相で襲撃犯をにらんでいる。
「離しなさい。美智子を離しなさい!!」

隼人のヘリが着地した。
襲撃犯の男は信じられないものを見た。
信じられないことが起きた。
ふいに空から男がヘリでおりてきた。
邪魔がはいるなんて想像もしていなかった顔だ。
恐怖に歪んだ顔。
夢中で発砲した。

銃弾は隼人の肩口をかすめた。
青白い炎がコートの肩口で爆ぜた。
隼人は男の首筋に空手チョップをきめた。
銃をつかうほどのことはなかった。
その油断をつかれた。
離れたところに停車していたセダンから狙い撃ちにされた。
まだ運転手がのこっていたのだ。
男の体がぐにやっとはねあがった。
隼人がライフルをかまえて応戦する。

黒のセダンは急発進した。
現れたときと同じように。
唐突に。
逃げていく。

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