5
「こころあたりは?」
隼人が同じ質問をまたくりかえす。
里佳子も美智子も。
二人とも絶句している。
いまになって恐怖がよみがえってきたのだ。
沈黙をやぶったのは美智子だった。
まったく心当たりはないらしい。
「だって、わたしは直人の喪にふくしていたのよ。
三年間も芸能界からとおざかっていたの。
たった一本の主演映画だけで、
引退したも同然の生活を、
母と里佳子おばさんと三人でおくっていたのよ」
あらためて、恐怖がこみあげてくる。
あの狙撃はわたしに向けられたものだった。
口封じに仲間を撃つだろうか。
わたしが、命をねらわれている。
ねらわれいるのは、わたしだ。
信じられない。
その信じられない襲撃が白昼堂々と実施された。
わたしの行動はあいてにつつぬけだ。
たえず尾行されていたのだ。
ねらわれていた。
なぜなの?
なぜ??
命をねらわれる覚えはない。
なにもない。
美智子はからだをこわばらせた。
ふるえていた。
涙がほほをつたった。
「ひとに恨まれることなんてしてないわよね」
運転席から里佳子の声だけがひびく。
里佳子はおおきなため息をもらす。
里佳子は事件のあとだけに周囲に気をくばっている。
慎重に車を走らせる。
美智子はパーティー会場をぬけだしてからの。
小さな旅。
危険との遭遇に疲れ果てた。
美智子は、隼人の肩にほほをよせて眠ってしまった。
ほほのまだ乾いていない涙。
隼人は、そっとハンカチでふいてやった。
隼人を信頼しきっている。
あどけない寝顔だ。
無邪気な少女のような寝顔だ。
直人の夢でも見ているのだろう。
朝までつづいていた受賞パーティーの記者会見をすっぽかした。
一昼夜も寝ていないことになる。
「美智子はあのまま引退するきだったの。
わたしたちが、直人さんの三回忌の記念に、
彼をまだ忘れていない証に、
彼の仏前に新作の映画を供えたらとすすめたのよ」
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里佳子も美智子も。
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まったく心当たりはないらしい。
「だって、わたしは直人の喪にふくしていたのよ。
三年間も芸能界からとおざかっていたの。
たった一本の主演映画だけで、
引退したも同然の生活を、
母と里佳子おばさんと三人でおくっていたのよ」
あらためて、恐怖がこみあげてくる。
あの狙撃はわたしに向けられたものだった。
口封じに仲間を撃つだろうか。
わたしが、命をねらわれている。
ねらわれいるのは、わたしだ。
信じられない。
その信じられない襲撃が白昼堂々と実施された。
わたしの行動はあいてにつつぬけだ。
たえず尾行されていたのだ。
ねらわれていた。
なぜなの?
なぜ??
命をねらわれる覚えはない。
なにもない。
美智子はからだをこわばらせた。
ふるえていた。
涙がほほをつたった。
「ひとに恨まれることなんてしてないわよね」
運転席から里佳子の声だけがひびく。
里佳子はおおきなため息をもらす。
里佳子は事件のあとだけに周囲に気をくばっている。
慎重に車を走らせる。
美智子はパーティー会場をぬけだしてからの。
小さな旅。
危険との遭遇に疲れ果てた。
美智子は、隼人の肩にほほをよせて眠ってしまった。
ほほのまだ乾いていない涙。
隼人は、そっとハンカチでふいてやった。
隼人を信頼しきっている。
あどけない寝顔だ。
無邪気な少女のような寝顔だ。
直人の夢でも見ているのだろう。
朝までつづいていた受賞パーティーの記者会見をすっぽかした。
一昼夜も寝ていないことになる。
「美智子はあのまま引退するきだったの。
わたしたちが、直人さんの三回忌の記念に、
彼をまだ忘れていない証に、
彼の仏前に新作の映画を供えたらとすすめたのよ」
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