田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

直人!! タスケテ(4)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-03 11:05:51 | Weblog
4

「こいつもうたすからないよ」
仲間に撃たれた。
哀れな男。
死んでいく男の額に手をおいた。
目を閉ざしてやっている。
それから立ち上がった。
キリコはおおきく手を広げて死体の横にいる。
まるで、ブルーシートで人目を遮断しているようだった。
いやじっさいにそうした効果があるらしい。
何台もの車がなんの注意もはらわずに通過していく。

「あのかたどなた」
パニックから立ち直った美智子が発した言葉だ。
しみじみとした顔で隼人の返事を促している。
「キリコ。黒髪キリコ」
隼人もそれしか知らない。
「知りあいが、日光にいたのね」
すこし、オコッテいるようだ。
声がとがっている。

「美智子それより、早く乗って」
美智子の険悪な表情をやわらげようと、
里佳子がふたりの会話に割ってはいる。
ぼくだってキリコの正体を知りたい。
まだなにもわかってはいない。
全裸の少女が幻のように二社一寺への街道に現れたときは、おどろいた。
それがいまは、完全に実体化した。
そのうえどこかに暴漢の死体の処理をたのんでいた。
「クリーニング屋は呼んどいたから。ぐずぐずしないで、さきにいって。
携帯に連絡はいれるから。直人さんのね」
隼人はからかわれている。
「クリーニング屋? それって……」
「わたしは日光忍軍の棟梁の孫娘。それくらいの手配はなんでもないわよ」

「これってロケですか」
直人との思いでの場所を覚えていてくれた記者が追いついてきていた。
「サンケイ週刊の三品です。カメラは、写真はとりません。だから、教えてください。トラブルですか」
「ごめんなさい。東京にもどってからにしてください。ほんとにごめんなさいね」
里佳子がこたえる。
プレスの車がつぎつぎに到着する。
危ないところだった。
美智子が隼人といるところを目撃されるところだった。
隼人は後部座席に身を伏せていた。
里佳子はゆっくりとBMWをスタートさせた。

隼人がいる。
急ぐことはない。
これから、なにか危険があっても頼りになる若者がいる。
でも、隼人を人目にさらしたくはない。
直人とそっくりなのを気づかれたくなかった。
それこそ、マスコミの狙い撃ちに美智子さらすようなものだ。
だれもが、直人そのものが生きていたと思うだろう。
わたしだってまだ半信半疑なのだから。
イトコだときいたいまもまだ信じられない。

隼人が美智子の隣にいる。
エンジンはぶじだった。
美智子はうれしそうにほほえむ。
「ほんとにあのころの直人さんに瓜二つね。そっくりよ」
里佳子が慎重に車をスタートさせた。
すぐに後部座席に声をなげかけてくる。
「美智子。怪我はなかったでしょうね」
美智子は窓の外を見あげている。
上空をキリコの操縦するヘリが東京方面に飛びさっていく。
「活動的なひとね」

「ぼくは直人兄さんの恋人が女優さんだなんて聞いていなかつた。
きれいなひとだとは母からいわれていました」
美智子は静かに吐息をもらした。
「襲われるこころあたりは? ……あいつらだれです。
プロですよ。こころあたりは」
美智子は危うく拉致されるところだっのだ。



 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村



風評被害に負けるな/分厚い教科書の津波 麻屋与志夫

2011-04-03 01:11:36 | Weblog
4月3日 日曜日
●昨日、ベニマルに買い物に行った。
ボトルの水も十分に棚に並んでいた。
一名様一瓶にかぎらせてもらいます。
棚にはそんな張り紙がしてあった。
でも、震災前とほとんどかわりない品揃えの棚。
ほっと安心した。

●でも、値段は高くなっている商品がおおいらしい。
カミサンが嘆いていた。
だが、欲しいものが買える。
ありがたいことだ。

●地震の直接的な被害はなかった。
瓦屋根が壊れたり。
老朽住宅が崩壊したり。
わが街でも全く被害がなかったわけではない。

●震災後、なにも手につかずぼんやりと三週間過ごしてしまった。
めずらしく、風邪をひいた。
まだ治っていない。
「震災のストレスよ」とカミサンにいわれた。
そうかもしれない。
震災の被害者の辛さを想うとなにもできないじぶんがなさけなかった。

●「お幾つですか」とよく訊かれる。
「まだまだ還暦前です」と嘯く若さがあったのに、
被災地の同年輩の人たちをみていると可哀そうでたまらない。
こちらも、きゅうに年をとってしまった感じだ。

●たしかに風邪が治らなかったのはストレスによるものだった。

●テレビから流れる情報を読みとれない。
風評もいろいろと流れてくる。

●ベニマルでゲキ安のシナがあった。
地元産のイチゴだ。
たぶん、放射能が検出されたというようなうわさでも流れたのだろう。
四パック入、一箱500円。お気の毒に。これでは生産農家では箱代にもならないだろう。
昔は流言蜚語といった。風評の恐ろしさを痛感した。

●もちろん、二箱ほど買ってきた。
風評なんかに負けてたまるか。

●このところ、ぼうっとすごしていたが、新鮮なイチゴを食べたら元気が出た。

●震災後の風評被災からコレで立ち直れそうだ。
なにも恐れることはない。

●それよりも、来週からの新学期。
教科書は来年から分厚くな。塾の教材はそれをさきどりしている。内容も難しくなっている。
この精神的な津波に子どもたちは耐えられるだろうか。
震災の話題にかき消されているが、
これは、たいへんなことだ。
学校や塾の現場での混乱は目に見えている。
塾長としてはまた悩みが増えた。

●ゆとりある教育にならされている。
いままでの教科書でも、ついてこられない生徒がいたのに。
教育現場での苦労はこれから始まるのだ。

●小学生も英語の授業がはじまる。
みんなで、がんばらなくてはね……。
そうとしか、いいようがない。




 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村