田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

盗聴(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-10 08:59:37 | Weblog
2

美智子と同じ屋根の下で……。
夜を過ごした隼人。
キリコは気がかりなのだ。
美智子の家に泊りこんだ隼人。
キリコは隼人の行動がかなり気になるらしい。

「それより知り合いがおおいらしいな」
えへっ、というようにキリコは舌をだす。
「兄もふくめて一族のものはほとんど、東京にいるの。
故郷日光をでたからって別の暮らしかたがあるわけじゃないわ。
忍びは忍びよ」
例えばどんな職業なのだろう。
隼人べつのことをきいた。
「敵はどういう筋のものかわかった?」
「サル彦ジイのことみんな悲しんでいる。
悔しがっている。だから……かなりくわしく調べてくれた。
あの美智子さんを襲って死んだ男については、
なにもわからなかった。
わたしたちの敵は鬼神ときまっているのだけれど、
美智子さんが絡んでいるから少し複雑。
わかったことはだからすくないけど。
それから、あの死んでいった男……あいつの頭の中はからっぽだった。
美智子さんを襲うHな妄想しかなかった」

目の前にいるキリコが、隼人には異常な能力者だと思われた。
あの男の額に手を当てていただけではなかったのだ。
臨死の男の心をリーデングしていたのか。
キリコがきゅうに黙りこむ。
かなり熱心に滝の音を聞いている。
なにか気になるらしい。
なにか気がかりなことがあるのだ。
いままでのオドケタようすはない。
隼人に調査の結果を報告しょうとしている顔ともちがう。
息をつめて真剣な表情で滝の音に耳を傾けている。
キリコの顔に怒気が浮かんだ。

そしてそっと隼人の手をとると「盗聴されてる」と指で書いた。
盗聴探知機みたいな少女だ。
それとも女忍者だから。
ほんとうに探知機くらいもっていてもフシギではない。
いろいろ隠し武器を、暗器をもっていそうだ。

おどろいて、隼人はキリコの手をひいてその場を離れる。
滝の音になにか変った音でもダブっていたのだろうか。
それともこの家のどこかに電波のみだれがあるのか。
霧降の滝の音を子守唄として育ったキリコにしか。
わからな異音がひびいていたのか。
隼人には滝の音。
ただの飛瀑の音としか聞こえない。
 
中山邸の庭に造成された人工の霧降の滝。
そして音だけは本物の滝音を録音したもの。
隼人にはそれ以外のことは感じられない。

わからない。
監視されていた。
この家は、監視されていたのだ。

誰に?



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