退職オヤジのひとりごと

退職オヤジが直面する新しい日々…感動か困惑か?
カオスの日々を綴ります

小林秀雄の政治学

2022年05月31日 07時07分29秒 | 本を読みました


中野剛志氏の『 小林秀雄の政治学 』という本を読みました。

どこでこの本にたどり着いたかは覚えてません。


内容は
第一章 理論
第二章 歴史
第三章 戦争
第四章 自由
第五章 政治
第六章 実践
第七章 日本
というものですが、第三章から読み始めました。


これもまた、私には難解なものでした。

印象に残ったのは、第五章の中で、
『政治家は、社会の物質的生活の調整を専ら目的とする技術家である。精神生活の深い処などに干渉する技能も権限もない事を悟るべきだ。政治的イデオロギイ即ち人間の世界観であるといふ様な思ひ上がつた妄想からは、独裁専制しか生まれますまい。』
という一節です。

政治は衣食住の管理実務で有るとみなしていて、イデオロギーによって社会を操作しようとする現代政治を批判しています。

『イデオロギーとは、権力の手段へと堕とした思想なのである。』と言い切っています。

 

最近、政府は『愛国心』『ナショナリズム』などと装って、個人の心の中にまで踏み込んでこようとしています。

小林秀雄は、「政治と文学(昭和二十六年)」で、すでに警鐘を鳴らしていたようです。

 


また、教育に携わってきた私にとって、
『出来上がった知を貰う事が、学ぶ事ではなし、出来上がった知を与へる事が教へる事でもなかろう。質問する意思が、疑う意思が第一なのだ。』
というくだりが心に響きました。

 


内容の一割も理解していないかも知れませんが、読んでいて発見のある面白い本でした。

 


東京地裁判決

2022年05月30日 04時06分15秒 | ニュースより

5月26日にある判決が出ました。


吉川貴盛・元農相に有罪判決…閣僚時の汚職で有罪判決は鈴木宗男議員以来      
https://news.yahoo.co.jp/articles/03e6866c0e0c064d1b0ad799dd9f9b774e55b794

 

裁判長は「吉川被告は業者からの金が有利な取り計らいを受けたいという趣旨だったと認識していた」「多額の現金を繰り返し受け取っていて農水行政全体の公正さに悪影響を及ぼす非常に悪質な行為」と指摘しました。
 そのうえで、「大臣としての高い倫理観が求められていたにもかかわらず、自覚に欠けていた」「『政治献金だと思った』などと不合理な弁解に終始し反省していない」などと述べ、懲役2年6カ月、執行猶予4年、追徴金500万円を言い渡しました。

 


判決が出たので『公判中なので発言は差し控える・・・』といういい訳で発言を避けてきた人たちは、この判決を受けて、事件に対する意見を発表してほしい。

被告と同意見で「政治献金」であると考える・・・という考えなら、
刑が確定していないので、また「発言は控える」と繰り返すことになるのでしょう。

判決を真摯に受け止め対処する・・・という考えなら、
任命責任も含め党から正式なコメントを出すべきだし、今後このような犯罪が起きないようにどう取り組んでいくかの方針を参院選前には明確にすべきでしょう。(本人が控訴するかどうか態度を示していないので何ともいえませんが)

 

何らかの発信をしなくてはいけない人は、

被告を農林水産大臣に任命した安部晋三元首相
被告の入閣を強力に推薦した菅義偉元首相
かつて被告が所属していた派閥の長二階俊博氏

そして、それらの発言を受けて考えるのは、札幌市北区・東区をはじめとする有権者たち。

 

被告には、『判決は納得しがたい部分もあるが、党に迷惑をかけるから受け入れる』的な言い訳ではなく、事実を明らかにしてほしい。

 

更にここで考えたいのは、刑が確定していなくても、「東京地裁は有罪と判断した」ということです。

事実はどうあれ、少なくとも「白」ではなく「黒に近いグレー」であるということが問題でしょう。

公権力を持つ立場の人間が、その権力と直接利害関係のある企業(個人)から献金を受け取ることの是非です。

双方が『政治献金』と言い張っても、贈収賄が横行するこの社会では認めがたいものです。

(抜け道だらけの政治資金規正法にも問題があると思いますが)


「献金の自由」とは別の次元の倫理観の問題です。


被告が感じるべき「立場上の責任」は権力を有する者が当然持つべき感覚ではないだろうか。

 

「非常に悪質」といわれた行為・・・意図的であれば当然だが、本人に自覚がないのだとすれば、更に大きな問題が潜在していると言わざるを得ません。


政治の劣化は、法の外にある倫理観の欠如に透けて見える気がしてなりません。

 


責任は誰にあるのか

2022年05月26日 18時04分03秒 | 本を読みました


『 「責任」はだれにあるのか 』という本を読みました。

副題の「政治家、企業、マスコミを叩けばすむのか? あなた自身の責任を考える。」に惹かれて古本市場で衝動買いをしました。


内容は
第1章 法的責任以前の責任とは
第2章 責任は免除されるのか
第3章 集団責任と自己責任
第4章 国家と国民の関係における責任
第5章 「責任」を論じることの難しさ
第6章 哲学は「責任」をどう考えてきたのか
第7章 「責任」の原理
というものでした。


頑張って読んだのですが、第5章以降は文章もさることながら、「哲学」の知識のない私には難解なものでした。

印象に残ったのは、責任の追及が下品な野心やルサンチマンや好奇心にもとづいてスキャンダルにされている・・・というところでしょうか。

責任は「感じる責任」と「求められる責任」というものがあり、権力者やメディアなどだけではなく、私たちの日常で多く考えるべきものだと知りました。

 

先の戦争責任についても触れていましたので、少し時間をおいてから読み直してみようと思いました。

 


大河への道

2022年05月25日 09時34分37秒 | 映画を観ました


『大河への道』という映画を観ました。


伊能忠敬の偉業『大日本沿海輿地全図』の作成を扱った物語です。原作は立川志の輔さんの創作落語だとか。


伊能家は、酒造りをはじめとして河岸問屋など多角的な事業を行っていたようです。


驚いたのは、私たちが知る地図作りの忠敬は56歳~72歳の16年間で、その年齢で日本全国を歩いて測量をしたことです。(当時の72歳は今のそれとは違うと思います)

また、隠居後51歳から趣味の天文学を極めるために天文学者高橋至時に師事したこと。

その、バイタリティーはすごいと驚嘆するばかりです。


そして忠敬死後、高橋景保を中心に地図作成作業が続けられる。


最後に徳川家斉がかけたことばは、とても感動しました。

 

 中井貴一さんが、志の輔さんの落語を聴いて映画化したいと動いたことに感謝する作品でした。

 


戦争犯罪

2022年05月22日 10時06分06秒 | 雑感


今、よくいわれる『戦争犯罪』という言葉に考えさせられました。


国家が領土や主権の堅守を目的として闘うとき、非戦闘員に対する攻撃が有効な手段の一つとなっている気がしてなりません。

第二次大戦でもベトナム戦争でも、事例は山ほど有ると思います。(具体的に調べてないのですが)

恐ろしい話しですが、戦争作戦行為の中に戦争犯罪と国際法上挙げられているものも含まれているのではないだろうか。

 

普段「殺人は最も重い犯罪」と位置づけられているこの世の中で、国家が殺人を認めることに矛盾を感じます。


戦争そのものが犯罪的行為ではないかと思うのです。(だから当事国は「戦争」と言いたがらないのでしょう)

 

しかし同時に『正当防衛』という言葉が思い出されます。

正当防衛は「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」とされています。  Wikipedia


ここに武力行使を正当化する根拠があるのでしょう。


唯、『過剰防衛』ということも考えられます。

過剰防衛の要件は、(1)不正の侵害があること、(2)防衛の程度を超えたこと(過剰性)、(3)防衛の意思があること、(4)過剰性の認識があること ・・・ だそうです。


更に、『誤想防衛』ということもあるのだとか。

これは、正当防衛の要件たる事実 (特に「急迫不正の侵害」) が存在していないのに,存在していると誤信して防衛行為を行うこと。

 

残念ながら国連が当てにならない(200年間中立を守ったスウェーデンがNATO加盟を希望したのも、そんな所が理由なのではないだろうか)ことが証明されてしまった今日、これらを『誰が認定』するのかわかりません。


また、個人のトラブルと国家間の諍いとを同じ目線で語るのはいけないことだとも思います。

命令に従わざるを得ない所に所属している人たちが、みな指導者と意を共有しているとはとうてい思えないからです。

そこでは、「思考判断」が「命令」という所で止まってしまう・・・。

 

双方が勝手に主張するばかりだから、紛争は「防衛のための戦争」と位置づけられ、自国や同盟国を正当化する論調のみが飛び交います。いわゆるプロパガンダです。


21世紀とは思えない戦争が続く今、紛争を評価するのには国家と一線を画したマスコミの報道がより大切です。

プロパガンダに冒されない社会(個人)でありたいと願います。


報道統制が厳しい国の人たちにもそうであってほしい。

独裁国家のわかりやすい規制もそうですが、一見自由そうだが隠れた報道規制があるほうも危険な気がします。

 

いずれにしても「戦争」では多数の人の命が奪われます。

 

チャップリン映画の「殺人狂時代」を思い出しました。

劇中のアンリ・ヴェルドゥの台詞
『Wars, conflict - it's all business. One murder makes a villain; millions a hero. Numbers sanctify.』
(戦争や紛争、これは全てビジネス。一人の殺害は犯罪者を生み、百万人の殺害は英雄を生む。数が殺人を神聖化する。)

 

早く戦争が終わってほしいです。