退職オヤジのひとりごと

退職オヤジが直面する新しい日々…感動か困惑か?
カオスの日々を綴ります

中根東里

2025年02月17日 12時59分48秒 | 本を読みました

磯田道史氏の『 中根東里 』を読みました。


以前読んだ『無私の日本人』に納められているものです。


内容は・・・
 徳川時代に存在した学者で、清貧に生きたその人生を数少ない資料からまとめたものです。

幼い姪に『 出る月を待つべし 散る花を追うことなかれ 』という言葉を残しました。


特に印象に残ったところは、

『無益の文字を追いかけ、読み難きをよみ、解し難きを解せんとして、精神を費やし、あたら光陰を失ってはいけない。わたしも、あやうく、指をもって月とするところであった。四書五経は指にすぎない。大切なのはその彼方にある月だ。』…月を見るものは、指を忘れて可なり


私たちは、手段を目的とはき違えてしまうことが間々あります。気をつけたいものです。


政治家の皆さん、選挙に勝つことは手段であって目的では無いですよ・・・。


法治国家崩壊

2025年02月14日 12時08分27秒 | 本を読みました

吉田敏浩氏 新原昭治氏 末浪靖司氏の『 検証・法治国家崩壊 』を読みました。


これは、現在の司法の立ち位置を決めた『砂川裁判』について追求した本です。

その研究の元になった資料は、アメリカの情報自由法(30年を経た政府文書は原則開示)にもとづく「解禁秘密文書」内で発見されたものです。
それは2008年に発見されました。(この本の初版は2014年7月です)


内容は・・・
 はじめに(吉田敏浩)
 PART1 マッカーサー大使と田中最高裁長官(吉田敏浩)
       1959年3月31日から12月16日まで
 PART2 秘密文書の発見
       砂川裁判干渉の秘密工作の背後にあった米軍の世界的な戦略(新原昭治)
       アメリカと田中最高裁長官の深い関係、そしてアメリカが生み出した「九条解釈」(末浪靖司)
 PART3 検証・法治国家崩壊(吉田敏浩)
 付  録    核密約と有識者委員会(新原昭治)
 


幇間政治家や幇間官僚、さらには最高裁判事までアメリカの顔色を伺った立ち振る舞い。
日本国民に対し裏切りともとれる発言の数々。
読み進めていくにつれ、兎に角腹立たしい内容のオンパレードで、読むのに時間がかかりました。


特筆すべきは田中耕太郎最高裁判所長官による、1959年12月16日の砂川裁判判決と、そこに至るまでの数々の米国との裏交渉などにより、司法がその役割を放棄し、日本国憲法が米駐留軍の前に無力化してしまったこと。

それは統治行為論と呼ばれ「裁判所で憲法判断が可能であるにもかかわらず、高度の政治性を理由に、裁判所が憲法判断をしない」ということで、その後の日本を方向付けてしまったものです。

それにより、行政の中心にいる一部政治家により、法は自由に解釈され、彼等には「違法」というものがなくなってしまう。

1972年の横浜市村雨橋における戦車輸送禁止の道路法・車両制限令に対し、日本政府がとった適用除外改定などもその一例です。

その後無力化した司法のもとで、行政は特例法を作り続けたようです。

歴代内閣の国会答弁とは異なる憲法解釈をした安倍政権下での集団的自衛権などは、その最たるものなのでしょう。

プライドを捨て実利をとったということなのでしょうか。


乱発される閣議決定を見ていると、三権分立は中身の無い「はりぼて」に思えてなりません。

 
沖縄の米軍基地問題に興味を持ってから、日本における米軍基地使用について疑問に思っていたことが、少しずつ解った気がしました。


学校ってなんだ!

2025年02月12日 02時40分00秒 | 本を読みました

工藤勇一氏 鴻上尚史氏の『 学校ってなんだ! 』を読みました。


リタイアしたとは云え、それなりに関心がある学校教育なので読んでみたくなりました。


内容は・・・
 はじめに(鴻上尚史)
 第一章 学校が抱える問題
 第二章 自立をさせない日本の学校
 第三章 同質性への違和感
 第四章 対話する技術
  おわりに(工藤勇一)

不覚にも工藤勇一氏を存じ上げなかったのですが、千代田区立麹町中学校で校長をされている時に、宿題廃止、定期テスト廃止、固定担任制廃止などを打ち出し話題になった方と知りました。
(鴻上尚史氏はNHKのcoolJapanで知っていましたが、劇団を主催されていた演出家とは知りませんでした)


本文は対話形式で、読みやすいものでした。

タトリング」と「テリング」や「第一次資料」と「第二次資料」、「シンパシー」と「エンパシー」など、私にとってためになることが多く記されていました。
     

 

最近ハマっているドラマに『御上先生』があります。

そこで提起されている問題とこの本で扱われている内容がリンクしているいるように感じました。


読んで良かったです。


日本外交

2025年02月03日 03時32分16秒 | 本を読みました

孫崎享氏の『 日本外交 現場からの証言 』を読みました。


5年前に読んだ創元社刊同名の著書の元になった本です。
同じ内容ですが、平成5年の中公新書版を読んでみたくて探しました。


内容は・・・
 はじめに
 第一章 外交の第一歩は価値観の違いの認識
 第二章 親善が外交の中心でいいか
 第三章 情報収集・分析
 第四章 新しい外交政策の模索
 第五章 政策決定過程
 第六章 外交交渉


30年前の本ということで、書店にはなく古本屋でも見つかりませんでした。
図書館でも見つからなかったのでネットで調べたところ、「通販での古本通販」があることを知り、検索してみたところ、やっとヒットしました。山口県の書店でした。


特に印象に残ったのは、ロシア人と日本人の心情の比較で、
「日本人の人間関係は60点くらいから始まり、決して100点にはならないし、0点にもならない。それに対し、ロシア人の人間関係の基本は100点か0点で、真ん中の5~60点の関係は居心地の悪さを感じさせる。」というもの。

一度読んだはずですが、やはり新しい発見があったように思います。(5年前にも発見したはずなのに忘れていたのかもしれません)


そして「外交では51点をめざし52点をめざし、なんとか48点、49点になることを避ける」という枝村純郎大使が語ったことば。

私たちはとかく100点を求めがちだが、相手の立場を考える外交では51点をめざす・・・深い言葉だと思いました。


私も51点を目標に頑張ろうなんて思いました。が、これは普段の私の点数ですね。


戦後史の正体

2025年01月23日 04時10分07秒 | 本を読みました

孫崎享氏の『 戦後史の正体 1945-2012 』を読みました。


以前読んだのですが、どうしても読み返してみたいと思った本です。

やはり、読み返すと新しい発見が多くありました。
忘れたくないところに貼る付箋も、ずいぶん違う場所に貼り替えたりしました。


内容は・・・
 はじめに
 序 章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
 第一章 「終戦」から占領へ
 第二章 冷戦の始まり
 第三章 講和条約と日米安保条約
 第四章 保守合同と安保改定
 第五章 自民党と経済成長の時代
 第六章 冷戦終結と米国の変容
 第七章 9.11とイラク戦争後の世界
 あとがき
 資料① ポツダム宣言 
   資料② 降伏文書
   資料③ 年表


ベストセラーになっただけの充実した内容の本です。

戦後の日米関係を、米国の圧力を軸に「高校生にも読める本」を意識し記されたものです。


ネットのレビューに『高校の教科書にすべき』などと書いた人がいましたが、本当にそう思わせるものです。

内向きになりがちで、自分の考えに近い意見の中だけで生活している若い世代の人には、この本に触れて「視野」を広げ、表面化しない見えにくいところに視線を向けることが、より良い未来の選択に繋がる気がします。


本当に読み返して良かった。

戦後日本を支えてきた高齢世代も、読んで気づくことはとても楽しいことだと思うのです。