Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

東京オペラプロデュース「オッフェンバック:青ひげ」2016.02.06初日批評(No.2454)

2016-02-06 21:26:16 | 批評

1991年「青ひげ」日本初演のベルリン・コーミッシェ・オーパー来日公演をはっきり越えた 飯坂純指揮 島田道生演出 及川尚志タイトルロール 東京オペラプロデュース「青ひげ」


  今日「音楽観」がはっきり変わった私高本。元「訳詞上演推進派」だったのだが、昨日までは「原語上演の方が良いらしい派」にまでは転向していた。今日

「原語上演が望ましい上演形式派」に転向したことを宣言する




  私高本の「音楽観」を形作った出会いの1つが、ベルリン・コーミッシェ・オーパー来日公演「青ひげ」であった。3日しか公演が無いのに2日も聴きに行った。内初日は1階最前列で聴いた。東ドイツの東ベルリンの ベルリン・コーミッシェ・オーパー の創設者フェルゼンシュタインの「ドイツ語訳詞台本版:青ひげ」が極めて流暢であり、魅力に憑りつかれ、日本オペレッタ協会「ベナツキー:白馬亭にて」公演に合唱団員として出演したほど。合唱団チーフは離婚された前妻。う~ん、人生の転機だったにまで至ったことは間違いない(爆


  ・・・でその ベルリン・コーミッシェ・オーパー「青ひげ」と比較して

「舞台装置が貧弱」の1点を除いて、指揮 も 演出・台本 も 主役・脇役・合唱団の歌唱も オーケストラ も 東京オペラプロデュース「青ひげ」が全て上回っていたことに愕然とした。


  何が一番大きな要因なのか? はわからない。日本語で語られた台詞は 島田道夫訳詞通り なのか? 歌手のアドリブ なのか? も全く分からないからである。本日公演を聴いただけの(舞台裏を全く知らない)私高本の感性に従って書いてみたい。

  1. 飯坂純指揮 のリズミカルさ!


      オッフェンバック「青ひげ」は徹頭徹尾リズミカルな曲である。時々思い出したように、抒情的な歌が混入するが、大半はリズミカルに進行する。合唱団は良く統率されていたが、ソリスト陣は(全員が初めての歌唱なこともあり)歌い上げ過ぎて遅れたり、走ってしまいそうになる。それを オーケストラ と 合唱 でリズムを弾ませ、元のテンポに引き戻す 飯坂純指揮の「棒の技」がスゴい!
      テンポがズレ掛かった ソリスト に向けて、はっきり視線を向け、打点を強調する。4小節以内(だと思う)には ソリスト のテンポは収縮する。これって、「オペラ指揮者」の必須条件なんだが、新国立劇場「魔笛」とかだと、1998年初演以来、2016年公演まで実現しなかったんだよね、結構有名なオペラ指揮者を招聘している時が半数以上なんだが、、、
      失礼かも知れないが、私高本の憶測を書く。

    飯坂純 は「オッフェンバックオペレッタ の指揮を ミンコフスキ(か同等以上の指揮者)を目指した。そして到達した。


      猫頭ヒョーロンカ=私高本 は、「青ひげ」のミンコフスキ指揮の録音(&録画)は知らない。だが、「地獄のオルフェウス(天国と地獄)」などの他演目のDVDは存在している。それに匹敵するほど、「音の切れ」が良い。
     「オッフェンバックの声楽部分」は、「張り上げて伸ばしたくなる音型」が多い。だが、伸ばしては「音楽が生きない」のだ。飯坂純 は、熟知している。
     ちなみに、第1幕では弦楽器の音程が結構広がっていたのだが、幕を追う毎に合って来た。弦楽器奏者って、「棒」とか「管楽器」とかで音程が変わるんだよねえ、N響とかでも。明日、の楽日公演は 第1幕から本日の第3幕の音程で演奏して下さい><


  2. 島田道生 の演出&日本語台詞訳詞 が オリジナル の「メイヤック & アレヴィ 台本」に忠実なこと!


      もしかすると、指揮 よりも 演出&日本語台詞訳詞 の方が大きいかも知れない。フェルゼンシュタインの訳詞&台本 は、ベルリン・コーミッシェ・オーパー初来日公演で「青ひげ」とモーツァルト「フィガロの結婚」が上演された。「フィガロの結婚」は、フェルゼンシュタイン演出ではなく、クプファー演出になっていた。
     ・・・で、「ダ・ポンテ オリジナル台本」と比較して、改変が多く、『オリジナル台本の方が圧倒的に良い』と感じたのだが、その時は(今以上に)猫頭だったので、「台本改変が悪い」のか? 「ソリストのアドリブが悪い」のか? 分からなかった。ベルリン・コーミッシェ・オーパー「フィガロ」は1日しか聴いていないし、、、
      島田道生演出 は、「光の使い方」が巧み。これほど照明が「感動をもたらしたオペラ」は思い出せない。猫頭=私高本 は、島田道生 が過去に演出していたように錯覚していたが、「振付のみ」であり、今回が初演出、とのこと。マジか? 完全に手馴れているじゃないか!!!


  3. タイトルロール=青ひげ=及川尚志 の圧倒的な「劇場支配力」


      もしかすると、これがトップかも知れない。序曲から第1幕開始当たりは、「弦楽器の音程巾」も広く、ソリスト陣の(「歌」は良いのだが)「台詞」がべらぼおに硬かった(泣
      だが、

    及川尚志 が登場するや否や、『場の雰囲気が一変。オペレッタの楽しい世界』が展開した!


      のである。第1幕終了後の休憩時に及川尚志の経歴を見たら、イタリアオペラ & フランス語オペラ=カルメン のみの「藤原歌劇団員」ではないか! あれだけ多い台詞をしゃべりながら、(声帯の使い方が全く違う)声楽のハイポジションを通し切ったことには感服。私高本は、「ケック版楽譜」は知らないが、「楽譜よりもハイポジション持続」は露骨(なんだと感じた)。
      小さな声で言うが「菊地美奈へのブラヴォー」が少なかったのは、及川 の「ロングトーン」が一因だと感じる。ある意味、「勝った」んだよね。

 冒頭で書かなかったが、

菊地美奈 = ブロット も素晴らしかった


  及川尚志 に隠れた、かな。GPまででは伸ばさなかったのかな > 及川尚志w

 脇役陣も素晴らしかった。全員書くと夜が明ける(藁

ボベーシュ王 = 石川誠二 は、台詞&演技 含めて、「舞台回し」を完全に演じ切った


ことだけをここに報じておく。後、

ボベーシュ王妃=クレマンティーヌ=羽山弘子 が最高の歌唱


だけは記しておきたい。
 他のソリスト陣も 飯坂純 の棒に食らいついており、素晴らしい公演だった。

 1975年に留学した寺崎裕則が東ドイツが留学当時「控室に行くと(フランスの)シャンパンがふんだんにあった」と言う「ベルリン・コーミッシェ・オーパー」控室。国家威信をかけた東側世界公演と比べて、(わずかな補助金を得ているとは言うモノの)東京オペラプロデュース「青ひげ」公演が凌いでいた、と言うのは、(私高本の心では)信じられなかった。第1幕終了後は、誰とも声を交わせなかった。人生を変える公演、ありがとうございます。明日も聴きに伺います。


 ・・・で、「装置が東ドイツ以上」って、助成金が「国の威信を上げる東ドイツ」以上に来ないと無理><

 今回の東京オペラプロデュース「青ひげ」に向けて「大道具がベルリン・コーミッシェ・オーパー来日公演より貧弱」だけは言わないで><

 他は感じた通りに松尾プロデューサーに伝えて下さい。私高本は明日公演が楽しみでなりません><
コメント
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