Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

作曲家論 : シューマン第10回 (No.1391)

2006-10-07 21:19:23 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 お待たせしました。

シューマン「交響的練習曲」の続き

である。

 シューマンは「新全集」が Schott から出版されるハズだが、ピアノソロ曲は今のところ1曲も出ていないようだ。「交響的練習曲」について、「方針」が決まらないと出し難いと思うが、まだ決まっていないのだろうか?

  • ブライトコプフから出版された「旧シューマン全集」は
  • 【基本的には】「生前出版された最終稿 = 決定稿」

の考えで、クララ・シューマン の目の黒い内は、編集 & 出版 された。 【基本的には】と 【 】 でくくったのはちょっとワケあり、である。

 クララ・シューマン は極めて嫉妬深い人である。 「シューマンの女性関係」のみならず、「クララよりもピアノのうまい リストにも嫉妬」など、『極めて嫉妬深く』

  • ロベルト・シューマンの「音楽の中身」よりも
  • クララ・シューマンの「怨念」を優先!

して、「旧シューマン全集」は編纂された。マジである。 その為

  1. 幻想曲 作品17 が「リストに献呈された」の理由で削除!

  2. 交響的練習曲 作品13 の内、第2版で削除された2練習曲 と 遺作5練習曲 が「昔の女の父親の主題」と思われる理由で不採用


となった。本当の話である。 う~ん。
 ロベルト・シューマンの「最高傑作」と目される曲2曲ともが、この扱いだったのに、さすがに ブラームス は心を痛め、クララが「旧シューマン全集 編纂」引退後(← 前のブログに「死後」と書いたのは、私高本の誤りでした。訂正済み)に、どちらも「Supplement」として出版したのである。現在私高本が確認できないのは「交響的練習曲 作品13 第1版 → 第2版」で削除された 『2曲の練習曲』について、「旧シューマン全集」で、ブラームスは結局出版したのか? しなかったのか? である。 誰かご存知の方がいらっしゃったならば、教えて頂ければ幸いである。

 21世紀の現在「交響的練習曲 作品13」を 「最終稿 = 第2版」で演奏するピアニストは皆無に近い。おそらく、1950年以降、LPが出てからの主な録音でもほぼ皆無に近いだろう。古いところを当たってみると

  1. ナット(1955)は「第2稿 = 第1版」
  2. ルビンシュタイン(1961)も「第2稿 = 第1版」
  3. ソフロニツキ(1959)は「第1稿 = 第3版」

 随分昔から「最終稿」は敬遠されているのである!

最高傑作作品が、「生前最終正規出版稿」でほとんど演奏されない作曲家


と言うのは、私高本の記憶では、シューマン以外思い浮かばない。 ストラヴィンスキーの3大バレエ「稿問題」は、どの「稿」も演奏する指揮者がいる。ブルックナーの交響曲では、最終稿がほとんど演奏されないのは、まだ「大作曲家」として認められていなかった「第1番」だけ。ショスタコヴィチの「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は最近は初稿の方が多いが、最終稿演奏することもあるし・・・

シューマンは大作曲家である。


 これに異論を挟む人は少ない。だが、「新全集」がこれだけ進行状況が悪い作曲家も珍しい。 「新全集大好き」のドイツ人作曲家では、他には皆無なのでは? バッハもヘンデルもハイドンもモーツァルトもベートーヴェンもシューベルトもブラームスも全部出ている!!!

 原因は「どの稿を採択すれば良いのか?」が「シューマン学者筋」で見極められないからだろう。明日号は、「交響的練習曲」前後のピアノ作品3作品の「稿問題」について述べる予定。

 私高本は(聴くのは好きだが)シューマンは(シューベルト、伊福部昭、モーツァルト、リストに比べると)ちょっと苦手かも知れない。
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作曲家論 : シューマン第9回 (No.1390)

2006-10-05 20:49:10 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 一昨日号「シューマン」について、大幅に手を入れた。本日号と続けて読んだ時に、はっきりと理解できるように、である。
 シューマン「交響的練習曲 作品13」は、出版された経緯が複雑怪奇(?)であり、なかなか理解し難い。 読者の皆様に 理解し易いように構成して見た。
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シューマン「交響的練習曲 作品13」の「版」と「稿」



 この曲は「初版出版 → 第3版出版」に 56年も掛かった! 曲であり、しかも経緯が厄介。 『ブルックナー交響曲』のように、最新研究が 20世紀末 ~ 21世紀 なら、盛り上がるのかも知れないが、最終の「第3版」出版が19世紀末! う~ん、人類の記憶から消えかかっているのかも!?

 ・・・で、一昨日の 対比表に追加を加えて掲載しよう。この表は「あるようで、これまでどこにも存在しなかった内容」だと、私高本は思う。もし、以前に同内容の記載があるならば、教えて頂ければ幸いである。
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 この曲は

  1. 第1稿 = 第3版 「主題 + 17の練習曲」(1893年出版,ブラームスが クララ・シューマン「ロベルト・シューマン編纂」引退後に出版した。ブラームスが没するわずか3年前!)

  2. 第2稿 = 第1版 「主題 + 12の練習曲」(1837年出版)

  3. 第3稿 = 第2版 「主題 + 10の練習曲」(← 主題と関連の薄い2練習曲が削除された!)(1852年出版)



 これが「1893年」ブラームスが、「交響的練習曲の 補追5変奏曲を 世界初出版」した時の状況である。 しかも悪いことは重なり、

出版社ブライトコプフの「シューマン旧全集」は、第2版で出版されていた!


ので、初出版時 = 1893年 には、初めて楽譜だけを見た人は
  • シューマンの初期構想が
  • 17曲 だったのか?
  • 15曲 だったのか?(← 第2版で 2曲間引いた!)

は、深く研究していないと「誰にもワカラン」状況だったのかも知れない。断定は私高本にはできない。当時のべらぼうに高い「ブライトコプフ シューマン旧全集」のオリジナルを私高本は見ることはできないからである。 リプリントの「Dover : Piano Music of ROBERT SCHUMANN」全3巻を見ながらの(おそらく正しい)推測である。

 う~ん、問題は根深い。続きは明日号に(おそらく)掲載する。 「シューマンは奥深い」ことだけはここに明言しておきたい。
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ピアニスト佐伯周子の魅力を探る (No.1389)

2006-10-04 22:37:17 | ピアニスト・佐伯周子
 ブログを書こうと思って「Piano Music Japan」を開いたら、何と

洗足学園音楽大学

から、トラックバックを頂いていた! ありがたいことである。「シューマン : 交響的練習曲周辺」を書くつもりだったが、佐伯周子 が現在研鑽を積んでいる洗足学園音楽大学から、トラックバック頂いたお礼に私高本から見た「ピアニスト佐伯周子の魅力」を記載したい。
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ピアニスト佐伯周子の魅力を探る


 佐伯周子のピアノを聴いたのは、もう5年半前になる。 初めて聴いた時は「泥の中に、ダイヤの原石が無価値のように転がっているピアニスト」に聞こえた。 考えてみれば、大学入学当初なので、そんなモノかも知れないのだが、岡原慎也 や 川上敦子 の音楽を聴いていた私高本にとっては、
  • 惹きつける魅力は強い
  • 作品(← もしかすると 作曲家?)別の段差が激しい

と感じた。 現在「シューベルト完全全曲演奏会」を実行しているが、

  1. 最も初めに魅力を感じた → スクリャービン
  2. その次に魅力を感じた → モーツァルト

が当初である。 う~ん、「シューベルト」は「当時の佐伯周子のレパートリーに無かったのか?」 よくワカラン。

 最少に言って、スクリャービン + モーツァルト に シューベルト を足した作曲家の主要作品は素晴らしい! 日に日に伸びていくピアニズムは、洗足音楽大学 の教育の成果であると思われる。
  • 矢野裕子
  • 小林仁

に師事しているとのことだが、どんな秘法があるのか、教えて頂きたいモノである。

・・・で、全てが良いかと言えば、「作曲家の相性」が少々あるかも知れない。スクリャービン と 1才違いであり、同級生のラフマニノフ! これは私高本が聴く限り、どうも「佐伯周子では よくワカラン」状態が本日まで続いている。 単純に私高本の「ラフマニノフ理解」が不足しているだけかも知れないのだが。(あっ、「作曲家論 : ラフマニノフ」が進んでいないじゃないか!!!)
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 『若者の可能性は無限だ!』

と言ったのは、誰だった? 思い出せない。 しかし、佐伯周子 のピアノを聴く限り

  1. 才能がある
  2. 引き出せる指導者がいる
  3. 相性が良い

と、青年時代には、私高本には信じられないほどの「力」が産まれるようだ。 次回 『佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠る全曲演奏会 Vol.3』は 2007年8月8日。 「冬の旅」作曲家の作品演奏が 毎年夏になるのが、何となく寂しいかも。 主催者 = 私高本 の「季節感不足」が原因かも知れないが。
 明日は「シューマン」を掲載の予定。本日期待していた読者の皆様、ごめんなさい。「シューマンのトラックバック」があったら、必ず書いておりました!
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作曲家論 : シューマン第8回 (No.1388)

2006-10-03 23:41:50 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 「シューマンのピアノソロ曲最高傑作は何か?」を問い糾されると、おそらくプロ筋では

  1. 交響的練習曲 作品13(← 昨日号で紹介した作品)
  2. 幻想曲ハ長調 作品17

になると思う。 19世紀や20世紀のパリでの記述も残っているし。

・・・で、「交響的練習曲 作品13」についての評価は、はっきり言って定まらない。 なぜか?

  1. 「版」自体が3版もあり、その上「第3版」を演奏する人の演奏順が全く定まらない!

  2. シューマン自身が生前に出版した 第1版 と 第2版 の間に「演奏家では埋められないと思える溝」が存在する


の2点だろう。 特に「交響的練習曲 作品13」は「溝が大きい」気がする。
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 この曲は

  1. 第1版 「主題 + 12の練習曲」(1837年出版)

  2. 第2版 「主題 + 10の練習曲」(← 主題と関連の薄い2練習曲が削除された!)(1852年出版)

  3. 第3版 「主題 + 17の練習曲」(1893年出版,ブラームスが クララ・シューマン引退後に出版した。クララ&ブラームスが没するわずか3年前!)


である。 う~ん、一方向に増加しているとか、減少しているならば、問題は少ないのだが、「減ったり増えたり」している。 しかも、この曲が「最高傑作」の可能性が極めて高い!

 シューマンが「作品の構成」に最も悩んだ時期が「これ」である。 この「スケジュール? 本人の資質?」問題は明日号に掲載する。
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作曲家論 : シューマン第7回 (No.1387)

2006-10-02 21:19:26 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 シューマン「作品13 = 交響的練習曲」のCD紹介号です。「選び甲斐」もあり、かつ紹介のし甲斐も「シューマン」中最高でした。
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キーシン シューマン 「交響的練習曲」



第1位 キーシン (BRILLIANT CLASSICS 92118)





1,672円(税込,4枚組)



  • 演奏   :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 音質   :☆☆☆☆☆


1989年5月23日録音と英語表記で明記されている。場所は書かれていない。
 「キーシンの交響的練習曲」は、基本的に2種類の「ライブ録音」がこれまで出回っている。

  1. 1988年札幌公演ライブ
  2. 1989年5月23日ライブ

である。 はっきり後者の方が演奏が、より優れている! 演奏曲順には「やや違和感」を感じる方もいらっしゃるかも知れないが、21世紀の今日までに出て来た演奏中、「最高の名演 = キーシン1989年5月23日ライブ」である!!!
 以前は、韓国盤で「ワケのワカラン表記」もあったが、全部「無視」すれば何も問題なかった。「オランダ盤」になり、言葉の問題も「英語さえ読めれば」OKになったこともうれしい。(こんなことホザいている私高本自身が「韓国語は全くワカラン状態でも、このCDは買った」1人である。)音質の高さは、「過去の同音源CD」に比べて高い(ソ連盤とかロシア盤とかアメリカ盤とかと比較して)ことを明言したい。
 遺作練習曲5曲の演奏順は(おそらく)キーシン独特。 リヒテル盤辺りと比較しても説得力のある順序と思う。演奏順は「札幌ライブ」と全く同じである。
 「シューマンファン」は是非是非聴いてほしいCDである。

 ミスタッチは「通常のキーシン並み」であり、はっきり言って「リサイタルピアニストとしては少ない」方だが、多少はある。
 この録音の素晴らしさは「作曲家 = シューマン の本質」を抉り出すことを試みて、成功したことである。
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作曲家論 : シューマン第6回 (No.1386)

2006-10-01 20:25:08 | 作曲家・シューマン(1810-1856)
 お待たせしました。シューマン「作品12」のCD紹介号です。9月29日に落としたりして、予定よりも遅くなりました。CDは多く録音されているので、「選び甲斐」があったのですが、「廃盤」が多い曲でした。
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ブレンデル シューマン 「幻想小曲集」



同率第1位 ブレンデル (PHILIPS PHCP-10544)





1,529円(税込)



  • 演奏   :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 音質   :☆☆☆☆☆


1980年8月録音。
 シューマン「幻想小曲集 作品12」は
  • ブレンデル
  • グルダ(2回目の録音 Philips)
  • シフラ

がどれも味があって良かったのだが、ブレンデルの国内盤のみが現役盤の様子。 う~ん、「簡単に廃盤になり易い曲」の1つのようだ(泣

 「謝肉祭」の路線をさらに突き進めた曲であり、「シューマンの最高傑作」かも知れない曲集である。
 ブレンデルの演奏は「丁寧にいつくしむように暖かく抱きかかえる演奏」である。この曲集にふさわしい解釈の1つと思う。録音は(アルゲリチ盤やアシュケナージ盤やコルトー盤を含め)私のこの曲の手持ちCDの中では、はっきり最高である。グルダ新盤や、シフラ盤も、音質はブレンデル盤に遙か及ばない!
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