毎日新聞2018年2月16日がロシアで民主主義が育たない理由を慶応やの准教授やレポートしていた。 なるほどと思える指摘。
無政府」の時代、一因 大串敦氏 慶応大准教授(ロシア政治)
ロシアで民主主義が定着していない原因の一つはソ連時代末期にさかのぼる。当時のゴルバチョフ大統領が始めた政治・経済改革(ペレストロイカ)により、統治機構そのものが壊れてしまった。その後にロシアが誕生したが、地方行政府が連邦政府の指示を聞かず、法の管轄も及ばなかった。2期目のエリツィン大統領が健康を害したこともあり、ロシアでは無政府状態に近い状況が10年くらい続いた。これは「権力の真空」と呼べるだろう。
民主主義も支配の一形態に過ぎない。当時の欧米諸国はロシアで民主主義が定着することを後押ししたが、支配体制が整っていない中でシステムとして民主主義を取り入れても機能しない。欧米諸国もロシア人も高望みしすぎたと思う。
ロシアで支配体制を作り直すために10年を要してしまい、そのような状況で登場したのがプーチン大統領だ。プーチン政権の功績としては、それまで機能していなかった連邦制の改革に着手し、00年代中ごろには中央政府の権限を取り戻して、政権党の創設や税制改革を実行したことである。00年ごろから国際的な原油価格が上昇し、経済成長を後押しした点でも、プーチン氏は幸運だったといえる。
一方で00年代後半からプーチン氏個人への権力集中が始まり、汚職が深刻化している。この頃からプーチン氏の側近が大企業の幹部に就くようになり、政権が経済に介入する側面も顕著になっている。プーチン氏個人に権限を集中させたことにより、次の大統領の任期を終えた後に、どのような支配体制にすればよいのかを難しい問題にしてしまった。
権力移行、既に開始 ヤロスラブ・シュラトフ氏 神戸大准教授(近現代ロシア政治外交)
欧米による金融制裁が続き、米国との緊張が長引く中、中国などとの連携が重要性を増していく。複雑な国際情勢の中、安定した成長をもたらす経済モデルを生み出すことが最も大きな課題である。最近のプーチン大統領は「デジタル化」などに言及しており、今後のキーワードになるだろう。ただし彼自身がどれだけ力を入れて取り組めるのかは不透明だ。
プーチン氏は次の任期後を見据えており、権力移行の過程はすでに始まっていると思う。プーチン氏が再出馬するために憲法改正をする可能性は小さい。別の政治機関を利用する形で、政治に関与していく仕組みが検討されていくだろう。またメドベージェフ氏を後継指名したような方式もあり得るが、現時点では誰が後継候補となるのかは見えてこない。それでも情報機関などの出身者に経済を任せることはなく、経済に通じたリベラルなエコノミストを経済政策の中核に置き続ける見通しだ。権力移行を巡る議論が本格化するのは来年以降になるだろう。