日経xTechによると、『サムスンの照準は5Gから3nmプロセスへ、2022年量産開始に向けTSMCと先陣争い』という。当面はDRAMやNANDのメモリーであるが、HPC(High Performance Computing)分野にも中国のPC、スマホベンダーから受託生産(ファウンドリー)を拡大していると言う。日本の半導体メーカー、中国と韓国メーカーに押され、収縮する一方! 安部長期政権の成果であろう。
2020年1月20日、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)の定期人事異動が発表された。年初の人事異動は同社の関心や投資先を推測できるとして韓国ではとても注目されている。今回は半導体研究所やファウンドリーなど半導体部門の昇進者が多く、半導体事業を担当するデバイスソリューション部門としては初めて女性専務も誕生した。
韓国メディアは、日本の半導体素材輸出規制を乗り越えたことをたたえる意味を込めた人事だったと評価した。さらに、今回の人事異動からサムスン電子の2020年は、「半導体工程」「5G(第5世代移動通信システム)」「LEDテレビ」がキーワードになるとも分析した。
サムスン電子の報道発表資料によれば、潜在力のある若手リーダーを昇進させたことや、成果主義という原則に沿って年齢や入社年度に関係なく成果と力量を保有した人材を登用したこと、外国人や女性の昇進を拡大したことが主な特徴だという。さらに、半導体部門は世界で初めて100層超えを達成した3次元積層NAND(3D NAND)フラッシュメモリーである第6世代「V-NAND」にCOP(Cell on Peri)技術を適用して量産できるようにしたことや、MRAM研究、DRAM競争力強化などの実績を評価した人事とも説明した。
人事発表の翌1月21日には、半導体部門協力会社271社に過去最高額のインセンティブ417億4000万ウォン(約38億2000万円)を支給したと発表した。サムスン電子の半導体工場に常駐する協力会社を対象にしたもので、上期および下期の2回に分けて支給する。同社によれば、2010年から累計3476億5000万ウォン(約318億1000万円)を支給してきたという。
3nmプロセス開発工場を幹部が激励
サムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏の2020年初仕事も半導体だった。同氏は1月2日、世界初の3nmプロセスを開発している華城(ファソン)工場の研究所を訪問、「過去の実績が未来の成功を保障してくれるわけではない」「間違った慣行や思考は果敢に廃止して新しい未来を開拓していこう」「隣人や社会と一緒に分け合い一緒に成長するのが我々の使命であり100年続く企業に至る道であることを肝に銘じよう」と社員を激励した。同工場では2019年12月31日に停電事故が起きており、その対策を議論するために同氏が訪問した可能性もある。この事故では、華城変電所の送電ケーブルに問題が発生して付近一帯が停電。その影響で同工場の半導体生産ラインが1分あまり中断し、数十億ウォンの損失が発生したと報道された。ちなみに同氏の2019年の初仕事は、水原(スウォン)工場の5Gネットワーク通信装備生産ラインの稼働式典だった。
華城工場の研究所が開発している3nmプロセスは、5nmプロセスよりも半導体チップの面積が35%以上減り、消費電力は半分に、処理速度は30%ほど早くなるという。サムスン電子は、2020年に5nmプロセス半導体の量産、2022年に3nmプロセス半導体の量産を目標としている。同社は3nmプロセスにおいてゲート全周型トランジスタ構造を採用する計画であり、「3nm Gate-All-Around Early(3GAAE)」と呼ぶ工程の設計キット(PDK v0.1, Process Design Kit)を、2019年5月14日に米国サンタクララで開催した「Samsung Foundry Forum 2019」で配布済みである。ファウンドリー世界1位の台湾積体電路製造(TSMC)も当初2023年だった計画を前倒しして2022年に3nmプロセス半導体を量産すると表明しているだけに、どちらが先に量産に成功するかも注目されている。
ファウンドリー事業を拡大
サムスン電子の株価は、2019年9月に4万3000ウォン台だったのが2020年1月22日には6万3000ウォン台に上昇し、上場以来最高水準を記録している。2018年末に始まったメモリー半導体(DRAMとNANDフラッシュメモリー)の値下がりが止まりつつあることや、メモリーに偏らず事業領域を拡大しようと同社が投資を続けているシステム半導体への期待感が反映されているようだ。
サムスン電子は、システム半導体でも世界1位を目標に、2030年までに133兆ウォン(約12兆2000億円、うち研究開発に73兆ウォン、生産インフラ設備に60兆ウォン)を投資するとともに、1万5000人の専門人材を採用すると発表している。投資拡大により、同社は中国の検索最大手である百度(バイドゥ)のファウンドリーにもなった。バイドゥのクラウドコンピューティングやエッジコンピューティングに使う人工知能(AI)処理向けプロセッサー「崑崙(Kunlun)」を2020年からサムスン電子のファウンドリーで量産する。百度のアーキテクチャー「XPU」とサムスン電子の14nmプロセス技術を適用している。これによって、同社はHPC(High Performance Computing)分野にもファウンドリーを拡大できた。
サムスン電子の2019年の営業利益は、主力製品であるメモリー半導体および液晶パネルの値下がりによって悪化し、2018年の半分程度にとどまった。しかし、英市場調査会社のIHSマークイット(IHS Markit)は、2020年に世界各国で5Gの商用サービスが本格的に始まるとデータトラフィックが急増し、データ処理速度も重要になることから、より高額な半導体の需要が拡大し、ファンドリー市場規模も増加が見込めると発表。この流れに乗ってサムスン電子の業績も2019年よりは良くなるのではないかという期待が株価に反映されたようだ。