先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

セブン&iがアメリカのコンビニを2兆円強で買収か?

2020年02月20日 14時07分31秒 | 日記

ロイタ -や日経が、 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は20日、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのガソリンスタンド部門買収を巡る一部報道について「現時点で決定された事実はない」との声明を発表したと報じていた。セブンは決定はしてないとしているが、アメリカでのコンビニの展開は、ガソリンスタンドと兼業すると言う腹つもりであろう。アメリカでは、環境問題には無関心派が多く、当面はガソリンスタンドは繁盛すると思われるから、日本でのコンビニ経営が難しいのに比べ、まだ、伸びる可能性が在ると踏んだんであろう。。

ブルームバーグなどはマラソンのガソリンスタンド部門であるスピードウェイの買収でセブン&アイHDが独占交渉に入ったと報じていた。同買収の提示額については約220億ドル(約2兆4500億円)と伝えている。

これについて同社は「新たな成長戦略については、提携や買収などさまざまな可能性を模索しているが、現時点で決定された事実はない。開示すべき事実が決定された場合には速やかに公表する」とした。

米国では日本に比べて敷地が広いため、コンビニとガソリンスタンドの一体型が多く、物販などの需要も取り込めるとの狙いもある。石油連盟によると、米国のコンビニの約8割がガソリンを販売しており、コンビニとガソリンスタンドを一体運営することで人件費の削減につなげている。

米元売り最大手のマラソン・ペトロリアムもコンビニと給油所の一体運営をしており、セブンは買収で安定した利益を稼げるとみている。

米国の自動車販売台数は日本の約3倍だが、ガソリン消費量に至っては日本の約10倍とも言われている。欧州中心に世界ではEV(電気自動車)の普及が進んでいるが、米国ではガソリン需要が当面続くとみて今後も店舗の奪い合いが起きる可能性が高い。


自動車産業の「破壊者」米ウェイモ(アルファベットの関連会社)の正体

2020年02月20日 13時03分56秒 | 日記

 

日経が、CBインサイツの『自動車産業の「破壊者」米ウェイモの正体』と言う解説記事を載せていたが、開発力や戦略で数ある自動運転開発会社の中で群を抜いていると言う事から、標題のテーマとした模様。ウェイモはグーグルと同じく、持ち株会社アルファベットの参加だから、グーグルの技術を自由に使えるが故に自動運転で最強になったのだろう。狙いは、自動運転のシステム技術や高性能センサーLiDAR等の要素技術の外販、配車サービスで、自動車産業全体に対する影響力がとてつもなく巨大化するのではと指摘。日経も中々、面白い記事を載せると感心する。

 
世界でも屈指の技術力を誇る米ウェイモの自動運転車

世界でも屈指の技術力を誇る米ウェイモの自動運転車

・ウェイモは自動運転車と配車サービスを組み合わせている。このふたつは車の所有と需要に頼る既存の自動車メーカーのビジネスモデルに最も破壊的な影響を及ぼす脅威だ。もっとも、ウェイモの競争相手は米ウーバーテクノロジーズなどの配車サービスだ。ウーバーは市場シェアの7割を握っており、ウェイモと同様に自動運転車の開発に取り組んでいる。

・ウェイモは部品サプライヤーでもある。自社の高性能センサー「LiDAR(ライダー)」を他の業界の競合しない企業に外販し始めた。自動運転システムの一部を収益化する機会に注目しており、ライダーを手がける米ベロダイン・ライダーなどとライバル関係になる。

・ウェイモはアルファベット内部のAIの専門知識を活用できる。グーグルはアルファベットとして再編されたことで、AI事業の合理化やAIの専門知識を持つ様々なチームの分野を超えた協力が盛んになった。ウェイモはアルファベット傘下の英ディープマインドと共同で、画像の認識やセグメンテーション(識別)に取り組んでいる。

■ウェイモによるAIの活用や訓練

 

自動運転を開発するに当たり実際の走行では偶然起こるような環境は実現が難しいから、自動運転車は代わりにVR(仮想現実)シミュレーションを使って何十億マイルも走行している。ウェイモのシミュレーションソフト「カークラフト(Carcraft)」は「ファジング(fuzzing)」と呼ばれるプロセスを使い、こうした特別なシナリオをつくりだす。

ウェイモの研究者は、機械学習のアルゴリズムを改良し続けるためにシミュレーションで「2万5千台相当の車を常時走行させている」と明らかにしている。

■物体や周囲の状況の認識

自動運転車の最も基本的なタスクは、周囲の物体を認識することだ。ウェイモは人間の脳の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」を活用し、どんな気象状況でも信号機や自転車、歩行者、車線などを正確に検知する。

 

 

同社の研究チームはこのほど、人間の手ぶりを理解する車の動画を公開した。動画では、信号が故障した交差点で自動運転車が停止し、警察官の手信号に従って進む様子が示されている。

歩行者や近くを走る車の次の動きの予測は、事故を避けるために欠かせない。ウェイモは2019年、車のセンサーからニューラルネットワークにデータを送信し、近くの車のある時点での位置を予測するシステムで特許を取得した。

自動運転車は通常、道路のグラフデータ(あるエリアの車線やこうした車線の進行方向の詳細なデータ)が使える場合には、これを使って車の位置を予測する。だが、ウェイモの特許では近くの車の物理的特徴を調べ、グラフデータがなくてもその車の次の動きを予測できる。

■自動機械学習(オートML):AIを使って最適なAIを選択

ニューラルネットワークのアーキテクチャー(構造)は数千種類あり、エンジニアはこれらを手動で試し、いくつかを微調整して目の前のタスクに最適なニューラルネットワークを見つけ出している。だが自動運転車にとって、反応時間は正確さと同じほど重要だ。公道での遅延は命取りになりかねない。

「自動運転車の公道走行に必要な質と速度を達成するためにニューラルネットのアーキテクチャーを最適化する作業は、新しいタスクではエンジニアが何カ月もかけて微調整する複雑なプロセスだ」(ウェイモの担当チーム)

ウェイモは19年1月、グーグルのAI研究者と共同で、ライダーで木や歩行者、車を検知するのに最適なニューラルネットワークのアーキテクチャーを見つけるプロセスを自動化する様々な方法をテストした。

 

 

自動機械学習によるアーキテクチャーの検索
出所:ウェイモ

自動機械学習によるアーキテクチャーの検索
出所:ウェイモ

 

 

ウェイモとグーグルが試している手段の一つはプロキシ(代理)データセットの生成だ。この場合のプロキシとは、AIのアルゴリズムの訓練に必要な実際のデータセットの「軽量版」だと考えてほしい。実際のデータセットで数千のニューラルネットのアーキテクチャーをテストするには膨大な演算力が必要となり、数カ月かかる。

まず実際のデータセットの代理にふさわしいプロキシを生成する。それから自動MLを使って1万種類以上のニューラルネット構造を自動検索し、プロキシデータで最も実績が優れていたニューラルネットを特定する。

 

 

ウェイモによると、ライダーのデータでこうしたプロキシのエンドツーエンドの検索が使われるのは、今回が初めてだという。

■進化的選択

ウェイモはディープマインドのチームと協力し、ニューラルネットの最適なモデルを選ぶ「evolutionary selection(進化的選択)」という概念も研究している。

これは自然界での進化の仕組みに似ている。1組のニューラルネットワークを互いに競わせ、演算力や演算に使うリソースの無駄を避けるために実績の良い方だけを残す。最適なネットワークを「コピー」して子孫を作り、これを活用する。

 

 

出所:ディープマインド

ウェイモとディープマインドは初期の実験でニューラルネットに路上の歩行者や二輪運転者の周囲に箱を描かせるタスクを課し、次の2つの基準について結果を評価した。

・あるシーンで検知された歩行者の数

・歩行者と特定された物体のうちの実際の歩行者数

■オープンデータセット

自動運転車の開発が盛んになるのに伴い、AIのアルゴリズムの訓練に必要なクリーンなラベル付き(正解付き)データの需要が高まっている。

「AI開発チームはこうしたデータを喉から手が出るほど欲しがっている。今は数千ドルを費やして自前でデータを収集しているからだ。シリコンバレーの比較的小さなスタートアップ企業で、顧客向けに画像のラベル付けを手がけるスケール(Scale)はこのほど、企業価値が10億ドルに達して『ユニコーン』になった」(米誌フォーブス)

ウェイモは同社のロボタクシーが数百万マイルを走行して集めた訓練データを無償で公開している。データを無償で公開するのは同社が初めてではなく、用途が限定される非商業的なライセンスである点には批判も多い。

ウェイモの主な狙いはAIを認知に使う場合の一定の問題を解決するために優れたアイデアを募り、コンペを開催することにある。

■自動車分野の既存プレーヤーへの影響

ウェイモの成功は自動車業界の主な利害関係者に影響を及ぼしている可能性がある。まずはサプライヤーだ。ウェイモは自動運転車の開発コストを抑えるため、関連製品の外販を当面の目標にすると明言している。

 

 

例えば、同社は最近「スケールメリットを生かしてセンサーをもっと手ごろな価格にするため」に、最も高価な自動運転車の部品の一つであるライダーを他の業界の競合しない企業に外販し始めた。これにより、ウェイモはベロダインなどライダーを手がける他社と直接競合することになる。

ウェイモは一部のAIソフトウエアでも同様の手法に踏み切り、この分野の中小勢を徐々に排除する可能性がある。ウェイモは車を生産していないため、自動運転システムを求めている既存の自動車メーカーの「自動車版アンドロイド」になるかもしれない。

自動車メーカーに対しても、、自動運転ソフトで、ルノー、日産等の大メーカーと提携している。

将来的には、自社サービスで使う自動運転車向けに車両を大量購入する可能性もある。消費者が車の所有よりもシェアリングを好むようになりつつあることも考えると、既存メーカーは利ざやの薄いコモディティープレーヤーに陥りかねない。

もっとも、ウェイモがしのぎを削るのは過密状態にある市場だ。市場が細分化したり、寡占状態になったりする時期があるかもしれない。

 

 

過密状態の自動運転車市場

過密状態の自動運転車市場

 

 

自動車整備やディーラーにも影響を及ぼしている。ウェイモは米自動車ディーラー最大手のオートネーションと提携し、確固たる拠点を持つ既存のディーラーに修理やメンテナンスを委託しようと計画していることが明らかになった。

ウェイモの影響により自動車サプライヤーは需要が増えたり、予知保全や(グーグルが大半の修理・メンテナンス費用を支払う場合には)新たな法人向け事業に注力するなど運営方法が変わったりする可能性がある。

オートネーションのマイケル・J・ジャクソン最高経営責任者(CEO)は米ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューでこう指摘している。「こうした車(自動運転車)は乗用車をはるかに上回る数十万キロを走行しなければ採算がとれない。このため、今よりもずっと積極的で予防的なメンテナンスが必要になる」

ウェイモはロボタクシーの燃料補給と洗車を委託するため、米レンタカー大手のエイビス・バジェット・グループとも提携している。

■配車サービス

ウェイモは18年、米アリゾナ州フェニックスで自動運転車による配車サービス「ウェイモ・ワン(Waymo One)」を開始した。サービスは限定的な上、完全な自動運転車ではなく安全のために運転手が同乗するため、期待外れとみなされた。

ウェイモ・ワンはフェニックスで既に約1000人の乗客にサービスを提供している。サービス拡大に伴い、価格設定が異なるモデルも試験導入している。

 

 

ウーバーや米リフトなどの配車サービス各社もそれぞれ自動運転の開発に取り組んでいる。各社の実証実験も成功すれば、既に市場シェアを握っている分ウェイモよりも優位に立つだろう。例えば、ウーバーは運賃ベースで米配車サービスの70%以上のシェアを占めている。


誰でも今すぐ「頭がよい人」になれる、「往復運動」の能力を鍛えれば

2020年02月20日 13時03分30秒 | 日記
 
ニューズウィークが、『誰でも今すぐ「頭がよい人」になれる、「往復運動」の能力を鍛えれば』なる解説をしている。
 
頭が良いと言う事は思考に優れている事で、「思考の正体とは抽象化と具体化を行き来する往復運動である」という。頭をよくするために重要なのは、「往復運動」の能力を鍛えることだ。思考停止せず、具体化と抽象化を繰り返しながら考えるのがうまい人こそ、「頭がよい人」なのだと説く。.

<「頭がよい」とは何か。東大出身で教育関連のビジネスを手掛ける谷川祐基氏によれば、思考とは具体化と抽象化の往復運動であり、それがうまい人が「頭がいい人」だという。目から鱗の谷川流「賢さ」論を紐解く>

「頭はよくなる。よくなりたければ」――そう言われれば、多くの人が「よくなりたい!」と前のめりになるだろう。だが実は、それぞれの人が思い描いている「頭がよい」の中身は千差万別だ。

 

にもかかわらず、世の中には「頭がよくなる方法」が氾濫している。

いわゆる「脳トレ」やクロスワードパズル、あるいは将棋をやると頭がよくなるとか、たくさん本を読めばいいとか、それよりも論理的思考のほうが大事だとか、青魚をたくさん食べるといいとか......。

そうした方法論の前に、そもそも「頭がよい」とは何なのか、どうすれば他人から「頭がよい」と思われるのか、それを解明することから始めようというのが、谷川祐基氏の新著『賢さをつくる――頭はよくなる。よくなりたければ。』(CCCメディアハウス)だ。

本書は、概念だけが語られて、結局、読者が最も知りたい「頭がよくなる方法」については何ひとつ触れられずに終わるような物足りなさとは無縁だ。前半では、身近な例を取り上げながら、頭のよさの本質を多角的に捉えている。そして後半では、今すぐ誰にでも実践できる「頭をよくする方法」を紹介している。

インプットかアウトプットか、抽象化か具体化か

教育関連のビジネスを手掛ける著者の谷川氏は、日本一「頭がよい」と言われる東京大学の出身。塾には一切通わず、高校3年生の秋から始めた受験勉強だけで現役合格を果たした。

そう聞けば、さぞかし生まれつき頭がよいのだろうと思ってしまう。当の谷川氏も「人それぞれ頭のよさは違う」と、頭のよさに個人差があることを否定しない。しかし、その上で、頭のよさの個人差をタブー視する態度こそ、頭のよさは生まれつきであり、変えることができないと決めてかかっている考え方ではないかと疑義を呈する。

頭のよさを生まれつきだとするならば、そうでない人には頭がよくなる道が閉ざされているのか。

そうではなく、「頭のよさ」というのは、考え方や思考方法の違いにすぎないのだと谷川氏は主張する。本のタイトルどおり、頭はよくなるのである。もし、よくなりたいと願うならば。

では一体、頭のよさとは何なのか。

学校のテストの点数が高い人こそ頭がよいと考える人もいれば、飲み込みが早い人や知識量の多い人を頭がよい人とする場合もある。あるいは、自分の頭で考えることのできる人、頭の回転が速い人、論理的な人、応用力がある人が頭がよい人である、といった回答もあるだろう。

こうして見ると、「頭のよさ」の定義は多様であり、そのことが「頭がよい」とは何なのかを分かりにくくしていると言える。しかし、ひとつだけ確かなものさしがある。それは、インプット重視かアウトプット重視か、という判断基準だ。

 

先に挙げた例のうち、前半の「テストの点数が高い」「飲み込みが早い」「知識量が多い」などはインプット重視の「頭のよさ」であり、後半に行くほどアウトプット重視となる。

小中学校など教育の初期段階ではインプット力が重視され、成長するほどアウトプット力が求められるようになる。企画力やプレゼンテーション能力など、社会に出て必要とされるのはアウトプット力のほうだ。

この「インプット力/アウトプット力」を、本書では「抽象化能力/具体化能力」と言い換える。インプットによって情報を抽象化することで概念として理解し、アウトプットによって具体化することで情報を実用に換える、ということだ。

往復運動の「距離」「スピード」「回数」

その上でユニークなのは、「思考の正体とは抽象化と具体化を行き来する往復運動である」という谷川氏の主張である。頭をよくするために重要なのは、「往復運動」の能力を鍛えることだ。思考停止せず、具体化と抽象化を繰り返しながら考えるのがうまい人こそ、「頭がよい人」なのだ。

例えば、「イヌ」と聞いて、思い浮かべるイメージは人によって違う。もし「チワワ」や「柴犬」などの犬種を思い浮かべたとしたら、それは「イヌ」という情報を具体化したのである。「哺乳類」「動物」という言葉が出てきた場合は、「イヌ」の抽象度を上げたことになる。

「チワワ」から具体化をさらに進めれば「うちのポチ」という唯一無二の存在に行き着く。抽象化を進めた先にあるのは「生物」というより大きな概念だ。つまり、ひとつの情報に対して振り幅をもって捉えるのが具体化/抽象化である。

「頭のよさ」を決める具体化と抽象化の往復運動には、3つのパターンがある――往復運動の「距離」「スピード」「回数」だ。

「距離」とは、先ほどの「うちのポチ」や「生物」のように、「イヌ」という出発地点から、具体/抽象それぞれの方向にどれだけ遠く離れられるか、ということだ。目の前の事柄に対して大局的な意見を言える人や、壮大なテーマを身近な話題に落とし込める人は、確かに「頭がよい」。

さらに別の視点からだと、発想が豊か、説明がうまい、行動が効率的、判断が的確といった人を指して「頭がよい」とすることもある。

「スピード」は、具体化と抽象化をいかに早くできるかということであり、いわゆる「頭の回転が早い」と言われる人は、これに該当する。テレビのコメンテーターのように、振られた話について具体度/抽象度を変えた回答を即座にできる人は、やはり「頭がよい」という印象を与える。

最後の「回数」は、そうした往復運動を何度もくり返すことを言う。頭がよい人は、常に的確な答えを導き出すように見えるが、それは普段から往復運動を重ねることで、抽象的な理論を具体的な実践によって検証しているからだ。つまり、行動もまた「頭のよさ」をつくる重要な一部なのだ。

「上下」ではなく「左右」と意識すれば往復運動しやすい

具体化/抽象化の2方向に、より遠く考えられる人、より早く考えられる人、より何度も考えられる人が、結果的に、人から「頭がよい」と言われるというわけだ。

だが、3つの運動能力すべてをバランスよく上げる必要はない。自分の個性や強みに合わせて、うまく組み合わせればいいのだ。例えば、谷川氏自身は「距離」は得意だが「スピード」はかなり遅いらしい。そこで、スピードの穴を埋めるべく「回数」をこなすことを大切にしているという。

具体化あるいは抽象化という思考そのものも、人によって得手・不得手があるだろう。本書では、それぞれの思考をしやすくするために、自分でできる「魔法の質問」をいくつか紹介しているが、まずは具体化/抽象化をもっと広い意味で捉えられるように、次のような対比を使って説明している。

具体は個別的で、抽象は全体的。具体は短期的で、抽象は長期的。また、具体は実用的で、抽象は本質的。具体が五感的・現実的・一面的である一方、抽象は概念的・精神的・多面的。そして、具体は手段であるゆえ問題解決であり、抽象は目的であることから問題設定となる。

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『賢さをつくる――頭はよくなる。よくなりたければ。』106ページより

 

一般的に、具体化と抽象化について語られる際は、上に抽象、下に具体を配した上下関係の図解が用いられることが多い。しかし、谷川氏に言わせれば、具体と抽象はどちらがより重要ということでもなければ、順番があるわけでもない。そこで本書では、上下ではなく、あえて左右に置き換えた関係図が使われている。具体が《左》で、抽象が《右》だ。

「もっと具体化しよう」「抽象的に考えなくては」と言われると、何やら小難しいことをしなくてはいけないような気になる。しかし、この図を用いて「もっと《左》に寄せよう」「今度は《右》方向で考えてみよう」といった具合に、思考を左右に行きつ戻りつさせることを意識すれば、自然と往復運動をしやすくなる。