「暗黒物質」探索のための実験装置=イタリアのグランサッソ国立研究所(東大など提供)=共同
未発見の謎の物質「暗黒物質」を探索している東京大や名古屋大、神戸大が参加する国際実験チーム「ゼノン」は17日、イタリアのグランサッソ国立研究所の地下にある施設で実施した実験で、想定外の事象を観測したと発表した。未知の素粒子を捉えた可能性があるという。
暗黒物質である可能性は低いが、信号の特徴から素粒子物理学で存在が予想される粒子「アクシオン」かもしれず、東大などはさらに詳しく調べる。アクシオンも探索が続く素粒子で、太陽で生まれるとされる。発見されれば物理学の最も基本的な理論「標準理論」の未解決問題を解く鍵になる。
アクシオンではなく別の素粒子ニュートリノのこれまでに知られていない性質が関係していることもあり得る。また信号が雑音である可能性も否定できない。
実験はマイナス100度に冷やした超高純度の液体キセノン3.2トンを使用し、暗黒物質などが到来した際にキセノンと衝突し、放出される信号を観測するのが目的。
キセノンとの衝突頻度は非常にまれで、観測される信号のほとんどは雑音だが、2016年から18年に実施した今回の観測では、理論的に想定される232個の雑音信号を53個上回る特別な信号を観測した。〔共同〕
朝日新聞の記事では、正体は不明だが、宇宙の物質の85%を占めるとされる暗黒物質(ダークマター)の検出をめざしていた東京大などの国際研究チームは17日、イタリアで2018年まで実験していたデータから謎の信号が53個見つかったと発表した。暗黒物質ではなさそうだが、ノイズでは説明できないといい、未発見の素粒子「アクシオン」を検出した可能性があるという。
東京大や名古屋大、神戸大などが参加する国際研究チーム「ゼノン」は、暗黒物質を直接検出するため、イタリアの地下施設に液体キセノン3・2トンを満たした検出器を設置。暗黒物質がキセノンとぶつかって光や電子をわずかに出すのを待つ実験をした。16~18年分のデータを解析したところ、想定されたノイズ以外に、どうしても説明がつかない信号があったという。
物理学の標準理論が予言した17種類の素粒子は、12年にヒッグス粒子が発見され、すべて見つかった。だが、標準理論で説明できない現象も多く、さらなる素粒子が複数予言されている。今回のデータは、その一つのアクシオンが太陽から飛来した場合のシミュレーション結果と99・98%の確率(3・5σ(シグマ))で一致した。
ただ、検出器に紛れ込んだトリチウムによるノイズや、素粒子ニュートリノの未知の振る舞いによる信号の可能性も残っており、今回のデータでは99・9999%(5σ)には達せず、物理学的な発見とは言えない。