先端技術とその周辺

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米確保の人工呼吸器14万台、約半数は簡易型で、コロナ重篤患者救えず

2020年12月06日 03時14分35秒 | 日記

[2日 ロイター] - 米政府は今年4月、約30億ドル分の人工呼吸器を非常時に備える米戦略的国家備蓄(SNS)用に発注したと発表した。新型コロナウイルス感染が西海岸と東海岸で急拡大したことに伴う措置で、深刻な呼吸器疾患から米国民を救う目的だった。

 米政府は今年4月、約30億ドル分の人工呼吸器を非常時に備える米戦略的国家備蓄用に発注したと発表した。しかし、ロイターが公開の仕様書を閲覧したり医師や業界幹部らに取材した結果、4月の発表以降に米政府が調達した14万台のうち、ほぼ半数は簡易型の呼吸装置だったことが分かった。写真は人工呼吸器を使用する患者。ヒューストンの病院で11月撮影(2020年 ロイター/Callaghan O'Hare)

しかし、ロイターが公開の仕様書を閲覧したり医師や業界幹部らに取材した結果、4月の発表以降に米政府が調達した14万台のうち、ほぼ半数は簡易型の呼吸装置だったことが分かった。コロナ患者の主要な死因である「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」の治療に必要な最低限の要件を満たさないとされる装置だ。

ARDSの患者に気管挿管して使うタイプの集中治療室(ICU)用装置はわずか10%しかなかった。40%が短時間の使用を想定する搬送用装置だった。

米胸部専門医学会の学会誌に掲載された人工呼吸器専門家22人の9月の研究によると、国家備蓄に追加された装置の半分は、ARDSの治療に向いていなかった。

事情に詳しい関係者によると、こうした人工呼吸器の配備数や性能を詳しく分析したのは、今回のロイターによる分析が初めてだ。

ジョンズ・ホプキンズ病院(ボルティモア)のサジッド・マンズール医師によると、呼吸器の多くがARDS患者に必要な条件を満たしていない上に、こうした人工呼吸器が国家備蓄されていることが、誤った安全の意識につながる。「ARDSになると症状は極めて重くなる。こうした患者のためには、どうしてもICU用の呼吸器が必要だ」と話す。

人工呼吸器の国家備蓄を管轄する米厚生省の報道官は、省庁間の部際チームが、新型コロナの治療ニーズをぎりぎり予測するしかなかった3月に、どの機種や性能を調達するかを推奨したと説明した。

当時は新型コロナについてほとんど分かっておらず、厚生省として想定できる最悪のシナリオに基づいて準備しようとしたという。

その後に連邦政府が新型コロナの臨床データを多く入手できるよになり、対応を修正したとしている。

米国では先週にコロナ新規感染者が110万人を超え、コロナ死者は26万8000人を超えている。現状で米国内に人工呼吸器供給の危機はない。ステロイド剤などの治療法が出てきて、気管挿管の需要が低下しているためだ。厚生省や簡易型の呼吸器のメーカーは、そうしたタイプでも新型コロナのそれほど急性でない症状を改善することはできるとしている。

しかし、ICU勤務経験があり、人工呼吸器使用の研究も発表している呼吸器疾患専門家の3人は、ロイターの取材に対し、連邦政府はARDS患者に対処できる人工呼吸器だけを追加調達すべきだったと語る。予算なども限られる中で、この春に重視されるべきだったのは、まさに当時供給が不足していたタイプの機器だったとしている。

米胸部専門医学会の報告の共同執筆者、マイケル・クリスティアン医師によると、集中治療室の患者の圧倒的多数が深刻な呼吸器症状である場合、患者を支えられるのは複雑な機能の人工呼吸器だ。

厚生省当局者を含む呼吸器疾患の専門家はこの10年、議会公聴会や研究発表で、インフルエンザ大流行などを想定した国家備蓄の必要を訴えていた。

新型コロナ患者は人工呼吸器に数週間つながれることがあり得るが、簡易型の呼吸器は通常は数時間程度、重篤な状態になった患者をICUに運び込む際などに使うことが想定されている。

長期間の使用に向く肺の保護機能などを備えていないことが多く、専門家によると極めて重症な新型コロナ患者を救える可能性が低くなる。

<理想的でなくとも>新型コロナ感染が中国や欧州で拡大した今年初め、世界各国の政府は人工呼吸器の確保に奔走した。アザ-厚生長官は2月、米国の人工呼吸器の備蓄は、新型コロナ流行と闘うには不十分だろうと表明。当時の備蓄は大半が重篤な呼吸器疾患に対処可能なタイプだったが、台数は約1万4000台だった。

トランプ大統領は3月下旬に米国は10万台を追加で生産するか調達すると約束し、数週間後に厚生省は大量発注を発表した。

厚生省報道官によると、当時はICU用だけでなく、患者搬送中や野営病院での臨時使用も想定して、調達する呼吸器の種類を多様化することが意図された。たとえ機器が理想的なものでなくても医療機関のニーズを満たすため、可能な限り多くの呼吸器を調達することが必要と判断し、そう推奨していたという。

国家備蓄は10月までに14万台が加わった。このうちICU用が1万5000台だった。厚生省の契約通知によると、このタイプの機器の価格は1台当たり約2万1600ドル。

このほか、重症患者のICU搬送時の使用を想定するが、圧力のコントロールや酸素レベル調節などの高機能も備えた、回復までの数週間に使用できるタイプを約5万8000台調達した。この平均価格は約1万6800ドル。

重篤な患者の短時間の移送や、それほど急性でない患者向けには4種類を計約6万6000台、総額約4億5000万ドルで調達した。平均価格は約7900ドル。ただ、このタイプでは重篤なコロナ患者の救命は難しい。

ロイターの分析によると、4タイプはWHOが3月に指針を公表した重症新型コロナ患者治療の最低基準を満たしていない。4タイプのメーカーのうち、コンバット・メディカルは、それほど急性でないコロナ患者を助けることができる機器だと述べた。ヒル・ロム・ホールディングスとレスメドは、WHOの基準を満たしている機器ではないとした上で、やはり急性ではない患者の治療に役立つとした。

<患者のリスク>

4つ目のタイプを共同で製造したのは、米フォード・モーターと米ゼネラル・エレクトリック(GE)。仕様書や専門家によると、気管挿管をしている急性症状のコロナ患者に長期間使うのには適していない。

カリフォルニア州が7月に国家備蓄から人工呼吸器500台の供給を要望したところ、受け取ったのはフォード/GEの製品だった。同州の公衆衛生当局者によると、必要だったのはより高機能な機器だったため、返却を要望。その後、厚生省はICU用の500台を送ってきた。同州に対し、フォード/GE製もそのまま保有できるようにした。

フォードは、製品の性能への質問についてはGEにするよう取材に返答した。GEはコメントを拒んだ。仕様書には「搬送中の患者支援や、重篤でない治療での使用のために特に設計された」と明記されていた。

国家調達を監督する当局者に助言するシンシナティ大学のリチャード・ブランソン教授は、気管挿管をしているコロナ患者向けの人工呼吸器を病院が必要としている時に、フォード/GEの製品を送るのは問題かもしれないと指摘。「期待していたのと違う機器を受け取り、それが患者の必要に合わない場合、患者が危険にさらされるため、リスクが高い」と指摘した。適切な時に適切な機器がなければ「患者は生き延びられない」とも述べた。


楽天とNTTが携帯通信産業を変える?

2020年12月06日 03時14分11秒 | 日記

 

日経ビジネスが、楽天とNTTの携帯ビジネスの方法が今までのドコモ、ソフトバンク、KDDIとは違うことを明らかにしている。というのは、いままでのドコモ、ソフトバンク、auの携帯ビジネスは、携帯をメーカーから再販して、月好きの通信料をいただくというものであった。しかしNTTの携帯ビジネスは、NECと資本提携し、自社携帯も売るというものだし、楽天の携帯ビジネスは、巨額な通信装置を運営・維持するためのシステム(ソフトウエア―)を他の通信業者に販売するというもので、両者とも、これからの携帯通信産業を変えるであろうとしていた。

NTTも、新たな携帯通信料金体系を出しそうだし、楽天も料金も大胆なものを発表している。今後に期待したい。

以下、記事の引用:::::::::::::::::::::::::

楽天の通信装置運用システムの外販は、自社サービス用に構築した完全仮想化ネットワークのノウハウや機能を、外部の通信事業者に販売していく取り組みだ。特定ベンダーによる囲い込みから逃げられるOpen RANに基づいたアーキテクチャーをベースに、楽天が自社向けサービスで売りにしている汎用サーバー上に構築可能なソフトウエア基地局や、コアネットワーク用のソフトウエア、運用管理用のシステム(OSS/BSS)などを、スマホのアプリストアのような画面を通じて世界の通信事業者に提供する。

三木谷氏は「世界の通信事業者のネットワークコストの合計は年30兆〜40兆円。RCPを活用することで少なくともネットワークコストを30%削減できる。世界各地から問い合わせが殺到しており、RCPは大きな可能性がある」とする。

RCPの画面例。アプリストアのような画面を用意する
 
RCPの画面例。アプリストアのような画面を用意する
(出所:楽天の会見をキャプチャー)

楽天の日本国内の携帯電話事業は波乱続きだ。2020年10月に東京都や大阪府、奈良県の一部エリアでKDDIのローミングを終了したことで、サービスがつながりにくくなったという声が利用者から出ている。楽天のネットワークが、世界有数の品質を誇る大手3社に追い付くにはまだまだ時間がかかりそうだ。

ただ視点を海外に転じると、楽天の携帯電話事業は世界的に大きな注目を集めている。楽天は東京という世界有数の品質が求められる地域で、完全仮想化によるネットワークを運用している点も一面の事実だ。日本国内の携帯電話サービスの勝算はともかく、日本をテストベッドにして世界進出することが楽天の狙いの一つだとすれば、こちらは大成功だろう。

RCPの潜在顧客となる海外通信事業者の開拓も進んでいる。楽天は2020年9月にスペインの大手通信事業者のテレフォニカと、2020年10月にサウジアラビアの大手通信事業者Saudi Telecom Company (stc)とモバイルネットワーク技術の連携を進める覚書を締結した。

三木谷氏は2020年11月の決算会見で「RCPのニーズは3分野にまたがっている」と打ち明ける。まずはローカル5G用途だ。ローカル5Gの課題は、現時点で数千万円かかるといわれる機器コストだ。ソフトウエアベースで機器を構成できるRCPを活用することでコストを抑えられる。

 2つ目のニーズは、RCPに用意したさまざまなソフトウエア機能から、例えば課金システムなど一部の機能だけを活用するような用途だ。楽天は2020年5月、RCP強化を目的に、通信事業者向けネットワーク運用システム(OSS)を提供する米Innoeye(イノアイ)を買収すると発表した。三木谷氏は「イノアイは世界数十の携帯電話事業者とビジネスしている。広義のRCPの売り上げはすでに立ち始めている」と続ける。

 最後は楽天と同様、ネットワークすべてをRCPの要素で構築するニーズだ。三木谷氏は「当初RCPは新興国中心のニーズと思っていたが、先進国からも多くの要望が来ている」とする。

 楽天のここ最近の業績は、携帯電話事業の先行投資が響いて赤字が続いている。RCPのビジネスが軌道に乗れば、仮に国内の携帯電話ビジネスの不振が続いたとしても、トータルの事業として十分成り立つ可能性がある。

 

楽天の携帯電話事業の損益分岐点は「700万契約」(三木谷氏)という。楽天のプランは月2980円の1プランであるため、700万契約に達したときの通信料収入は年2500億円の計算になる。一方、RCPによるビジネスが三木谷氏のいう年30兆円の1%を取っただけでも年3000億円が転がり込む。楽天にとってRCPは、国内の携帯電話事業以上に大きなビジネスになる可能性がある。

 

次に、NTTであるが、NECと資本提携したNTT、キャリアの枠を超える。

 NTTは日本最大の通信事業者であるほか、世界でほぼ唯一となる本格的な研究開発組織を維持し続けている点でも特別な存在だ。

 世界のほとんどの通信事業者は大手ベンダーから通信機器を購入し、通信サービスを運用する立場にとどまっている。NTTも近年は、世界の通信事業者と同様に、大手ベンダーから機器を購入して運用するという役割にとどまっていた。研究所で先進的な研究開発に取り組むものの、それを製品化して世界に売るというアセットをNTTは持っていなかった。

資本業務提携を発表するNTT社長の澤田純氏(右)とNEC社長兼CEOの新野隆氏
資本業務提携を発表するNTT社長の澤田純氏(右)とNEC社長兼CEOの新野隆氏
(出所:NTT)

 そんなNTTがここに来てキャリアの枠を超える動きを見せ始めている。例えば2020年6月に発表したNECとの資本業務提携だ。「通信機器市場がオープン化や仮想化で大きく変わりつつある。当社は研究開発の能力は持つがメーカーではないので市場を形成することができなかった。情報通信産業で首尾一貫して市場を形成していくにはメーカーと組む必要があった」とNTT幹部は打ち明ける。

 短期的にNTTとNEC連合が狙うのは、異なるベンダーの機器でも相互接続できるようにするO-RAN仕様に基づく基地局製品の海外展開だ。NECはO-RAN仕様対応の基地局製品をいち早く市場に投入している。ただ現時点ではO-RAN市場準拠とはいえ、あらゆるO-RAN仕様対応機器が相互接続できるわけではない。そこで機器を確実につながるようにするというネットワークインテグレーションのニーズが生まれる。NTT幹部は「NTTデータの海外拠点を使ってこうしたビジネスを開拓したい」と続ける。

NTTが開発を目指す次世代ホワイトボックスのイメージ。CPUやメモリ、ボードをつなぐ回路に光技術を応用し、低消費電力かつ高速で動くようにする
NTTが開発を目指す次世代ホワイトボックスのイメージ。CPUやメモリ、ボードをつなぐ回路に光技術を応用し、低消費電力かつ高速で動くようにする
(写真:日経クロステック)

 長期的に両社は、NTTが2030年代の実用化を目指して取り組む次世代情報基盤「IOWN」の世界展開を狙う。鍵を握るのがNTTが「次世代ホワイトボックス」と呼ぶデバイスだ。ホワイトボックスは、文字通りインストールするソフトウエアによって基地局や人工知能(AI)のエンジンになったりする機器だ。現在のホワイトボックスは一般的なサーバーベースだが、NTTはIOWN構想で取り組む光半導体をホワイトボックスのバス回路に活用する。より低消費電力で動作し、高い性能を発揮する次世代ホワイトボックスを実現し、あらゆる機器をソフトウエアで塗り替えていく考えを示す。

 立場や出自がまったく違う楽天とNTTが、くしくも同じようなタイミングでキャリアの立場を一歩踏み出し、自らのノウハウを輸出しようと動きだした点は興味深い。スウェーデンのEricsson(エリクソン)や中国の華為技術(ファーウェイ)、フィンランドのNokia(ノキア)の大手ベンダー3社がシェアの8割近くを握る基地局市場に、オープン化の波が到来している点も両社への追い風になっている。

 もっとも海外市場の攻略には、世界各地の営業体制やサポート体制の充実が必要だ。楽天やNTTの海外の営業体制やサポート体制は上記の大手ベンダーと比べて大きく及ばず、大手の牙城を切り崩すための課題は数多い。しかしここ最近、存在感を失っていた日本の通信産業にとっては久々に明るい話題だ。日本発の新たな潮流として世界に一矢報いてほしい。