先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

YouTube見れば"東大生"に 開かれた学びの扉 ネット動画のリアル?!?!

2020年02月25日 21時51分58秒 | 日記

日経が『YouTube見れば"東大生"に 開かれた学びの扉』なる記事を載せていたが、東大も『東大TV』で、ニュートリノをめぐる素粒子物理学の理論をノーベル物理学賞の東大宇宙線研究所長の梶田隆章が説明する等をYoutubeで配信。ほかにも「次世代人工知能」「中国の外交と東アジア情勢」「ノーベル賞作家ル・クレジオ氏講演」など自然・社会・人文の各領域で多様なテーマの講義を集め、現在約1300のコンテンツがあると言う。

ネット動画を利用した大学関連の教育番組は2013年に設立された日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)があり、国公私立を問わず、加盟する36の大学の講義をネットで無料で見られるようにした。381講座が公開され、これまでに110万人が視聴している。

JMOOC副理事長の深澤良彰は言う。「ネット動画で学び方が変わりつつある。これからは学歴より、その人が何を学んだかという『学習歴』が知力の評価軸になっていくだろう」という。

東大TVの撮影風景(東大提供)

東大TVの撮影風景(東大提供)

 

 

■東大ならでは

スタートは2005年。東大TVリーダーの中澤明子は「大学の知を社会に開放する事業として始めた」と話す。配信しているのは主に公開講座で、5人ほどのスタッフが撮影と編集を担当する。「ノーベル賞受賞者が講義するコンテンツは本学ならでは」と学術支援職員の渡辺泰子。また独自の動画配信サイト「UTokyo OCW」では大学の正規の講義を収録し、講義資料とあわせて無償公開している。

動画サイトを使い、最先端の知を研究者が肉声で伝える――。このアイデアは00年代初頭に米マサチューセッツ工科大学が先鞭(せんべん)をつけた。同大は現在2400の講義を公開。世界で5億人が視聴する巨大な知のプラットフォームに成長した。

 

東大TVリーダーの中澤氏(右)と学術支援職員の渡辺氏。手に持っているのは東大TVのマスコットキャラクター「ぴぴり」

東大TVリーダーの中澤氏(右)と学術支援職員の渡辺氏。手に持っているのは東大TVのマスコットキャラクター「ぴぴり」

■変わる知力の評価軸

日本では大学間の連携の動きが進む。13年に設立された日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は国公私立を問わず、加盟する36の大学の講義をネットで無料で見られるようにした。381講座が公開され、これまでに110万人が視聴している。

JMOOC副理事長の深澤良彰は言う。「ネット動画で学び方が変わりつつある。これからは学歴より、その人が何を学んだかという『学習歴』が知力の評価軸になっていくだろう」

 

JMOOCには36の大学が加盟する

JMOOCには36の大学が加盟する

 

 

■他者を意識する

 

「論文ユーチューバー」――。奇妙な肩書で活動している在野の研究者がいる。専門の有島武郎研究のかたわら、ユーチューブに「新書よりも論文を読め」というシリーズ動画を営々と投稿し続けている荒木優太だ。文学や哲学の紀要論文などを解説する高度な内容で、公開している動画数は200にのぼる。ホワイトボードに手書きしたレジュメを画面で大写しにし、自分は声だけで解説を加えるスタイルだ。

このような動画を作っているのは「考えをまとめるため」だが、それだけではない。「自分が個人の考え方に凝り固まってしまわないために公開している」という。

ユーチューブには見た人が動画の内容を評価するボタンが実装され、コメントも書き込める。情報を一方的に伝えるのではなく、対話や反論に対して開かれているといえる。「動画を見ている他者を意識することで、緊張感をもって研究できる」と荒木は話す。

荒木氏はレジュメを画面に映しだして、姿を見せずに論文を解説する

荒木氏はレジュメを画面に映しだして、姿を見せずに論文を解説する

 

15世紀の欧州で活字印刷の技術が発明されると、知の伝達方法は文字が中心になった。そして今、その一部が動画に移行しつつある。だが「それは驚くことではない」とメディア情報学者の石田英敬は指摘する。「プラトンの著作を読めばわかるように、古代、知は対話によって伝えられた。文字はそれを実況中継するメディアだった。その文字が動画に変わってきたと考えればよい」

 

■受け手への責任

 

動画は語り手の肉声を伝え、アニメーションやCGなどを使えばより効果的に情報が伝わる。内容を直感的に理解できる点では活字よりも優れている面があるが、そのわかりやすさには落とし穴もある。

19年春に開設された「中田敦彦のYouTube大学」。お笑いタレントが「教育系ユーチューバー」となり、政治経済から哲学、歴史まで幅広く解説する動画を投稿する企画だ。若い世代の支持を集めたが、欧州や中東の近現代史を解説する内容が不正確だとの声があがり、"炎上"した。

フェイクニュースがSNSを通じて瞬時に拡散する時代。伝達する内容に正確性が求められるのはいうまでもない。社会学者の鈴木謙介は「教育とは受け手側に対して責任を持つこと。これがネット上に自由に投稿できる動画サイトで担保できるかどうかは怪しい」と慎重な見方を示す。

とはいえ、「知の動画化」の流れはこれからも進むだろう。鈴木は「知的なエンタメと考えれば多くの人が楽しめる利点はある」と話す。その特質を伸ばしていく知恵と倫理が求められている。


世界の鉄道メーカー、合併で巨大化!

2020年02月25日 21時22分13秒 | 日記

 

東洋経済が、『世界2大鉄道メーカー「統合」、どうする日本勢?』と言う解説記事を掲載していた。それによると、1位が中国中車で売上2.5兆円、2位がフランスのアルストムとカナダのボンバルディアの新合併会社で売上が2兆円、そして3位がジーメンスで売上1兆円、4位が日立で売上6千億円。5位が川崎重工の1300億円。シーメンスはM&Aに動いているはずで、日本勢は、事業統合に動かないと世界から取り残されると指摘。しかしながら、中国の中国中車が、世界一の鉄道メーカーになっているとは驚き。中国の鉄道車両は低価格が売りだが、近年はクオリティも改善されており、世界各国で中国中車と他の欧州・日本のケーカーが競合する局面が増えてきた。中国に対抗するためには規模の拡大が不可欠だと説く。
 
鉄道メーカー世界3位のアルストムは同4位のボンバルディアの鉄道事業を買収すると発表した(記者撮影/編集部撮影)

世界の鉄道メーカーの勢力図が大きく変わろうとしている。鉄道車両製造の売上高ランキングで世界3位のアルストム(フランス)が、同4位のボンバルディア(カナダ)の鉄道事業を買収すると、2月17日に発表したのだ。

ランキングの1位は中国の複数の車両メーカーが統合して2015年に誕生した中国中車で売上高は約2.5兆円と断トツだ。2位シーメンス(ドイツ)、3位アルストム、4位ボンバルディアの売上高はいずれも1兆円程度で拮抗している。

この3社は総称してビッグスリーと呼ばれるが、アルストムとボンバルディアの統合で中国中車に迫る売上高2兆円メーカーが誕生し、ビッグスリーの構図は崩れる。

2021年統合を目指す

買収スキームはこうだ。アルストムはボンバルディアの鉄道事業を行う子会社「ボンバルディア・トランスポーテーション」の株式の100%を58億~62億ユーロ(6994億~7477億円)で買い取る。

ボンバルディア・トランスポーテーションの株主はボンバルディアのほか、カナダの年金基金「ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)」が株式を32.5%保有している。CDPQは株式売却額をそのままアルストム株式の購入に当て、同社株を18%保有する筆頭株主となる。同社に取締役を2人派遣する。

アルストムのアンリ・プハール・ラファルジュCEOは、「今回の買収でアルストムの世界展開がさらに進展し、鉄道業界のニーズにもさらに応えることができる」という声明を発表している。臨時株主総会や規制当局の承認を経て、2021年の上半期に買収を終えたい意向だ。


ソニー、やっと5Gスマホ発売開始

2020年02月24日 21時48分19秒 | 日記

ソニーが2月24日、『5G対応のフラッグシップスマートフォン『Xperia 1 II』など、2機種を商品化』。5Gミリ波帯対応デバイス『Xperia PRO』の開発も発表。そもそも、世界をリードしている中国の防犯カメラ、ソニーのCMOS(以前はCCD)や映像処理装置が搭載されていて、その優秀性や、価格性能比が優れているのは、偏にソニーのおかげと思う。それだけの力が在るのだから、ソニーは、むろん他の日本の通信機器メーカーは、世界で活躍出来る力はまだあると思う。

ソニーの5Gスマホの発表内容を見ても、後進企業製線では決してない。

ソニーは、Xperia™スマートフォンとして初めて第5世代移動通信(以下、5G)に対応し、新たにZEISS®(ツァイス)レンズを採用したトリプルレンズカメラ搭載のフラッグシップスマートフォン『Xperia 1 II (エクスペリア ワン マークツー)』に加え、アスペクト比21:9の有機ELディスプレイとトリプルレンズカメラを搭載したミッドレンジのスマートフォン『Xperia 10 II (エクスペリア テン マークツー)』も発表しました。これらの商品は、本年春以降に日本を含む国・地域にて順次導入を予定しています。
さらに、プロフェッショナル向けソリューションにも対応した5Gミリ波帯対応デバイス『Xperia PRO (エクスペリア プロ)』の開発も発表しました。

フラッグシップスマートフォン 『Xperia 1 II (エクスペリア ワン マークツー)』

Xperiaとして初めて第5世代移動通信システム(以下、5G)のSub6 (6GHz未満の周波数帯)に対応し、ソニーの技術を結集したフラッグシップスマートフォン。5Gの高速通信により、撮影した大容量データの送信や4Kコンテンツのストリーミング再生などをより快適に楽しめます。

■世界初※1となるAF/AE※2追従最高20コマ/秒※3の高速連写などを実現する本格的なカメラ性能を搭載。撮り逃したくない大切な一瞬を捉えます。
  • ソニーのレンズ交換式デジタル一眼カメラα™で培った技術により、60回/秒※4のAF/AE※2演算を行うコンティニュアスAFに対応。それにより、世界初となる※1AF/AE※2追従最高20コマ/秒※3の高速連写を実現。
  • 被写体の質感までを忠実に再現するZEISSレンズを新たに採用したトリプルレンズカメラと3D iToFセンサーを新搭載。
  • 3D iToFセンサーや1/1.7”大判センサーなどにより暗所での高速AFと高感度撮影を実現。
  • 本格的なシネマ撮影体験を可能にする「Cinematography Pro」には、映像制作現場のクリエイターの声を反映した新機能を搭載。
  • 21:9 4K有機ELディスプレイと 90Hzディスプレイ相当の残像低減技術でクリアな映像を実現します。立体音響技術「Dolby Atmos®(ドルビーアトモス®)」には、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと協業した独自のチューニングを実装。映画などの対応コンテンツにおいて、より一層没入感ある映像視聴を楽しめます。
  • ソニー・ミュージックエンタテインメントとの協業により、その場にいるかのようなリアルな空気感など、クリエイターの制作意図を忠実に再現するソニー独自のオーディオチューニングを実装します。
  • 「ゲームエンハンサー」には、コンペティションセットなど新たな機能を追加し、ゲームプレイに集中できる環境と没入感あるゲーム体験を実現します。
  • Qualcomm社製の最新プラットフォーム Qualcomm® Snapdragon™ 865 5G Mobile Platformを搭載。4000mAhの大容量バッテリーやワイヤレス給電規格Qi(チー)に対応。電池持ちをよくする「STAMINA®モード」、防水(IPX5/8)、防塵(IP6X)性能など、充実した基本性能を備えます。

ミッドレンジスマートフォン『Xperia 10 II (エクスペリア テン マークツー)』

Xperiaのミッドレンジモデルとして初めて有機ELディスプレイとトリプルレンズカメラを搭載します。

  • アスペクト比21:9※5、約6.0インチのフルHD+有機ELディスプレイを搭載。画質最適化による引き込まれる映像美と、21:9ならではの高い利便性を両立します。
  • 3つの画角でクリエイティブな撮影を可能にするトリプルレンズカメラを搭載。
  • 約151gの軽量ボディや防水(IPX5/8)、防塵(IP6X)性能、3600mAhの大容量バッテリーなど、安心して日常使いができる充実の基本性能を搭載。

開発発表

5Gミリ波帯対応デバイス『Xperia PRO (エクスペリア プロ)』

映像制作などプロフェッショナル向けソリューションにも対応した、5Gミリ波帯対応デバイス※6。Xperia 1 IIに搭載しているカメラ機能やディスプレイなどを有し、高品質な動画視聴や写真撮影が可能です。

  • ソニー独自の4方向に配置したアンテナ技術と低誘電率素材により、通信の安定性を保持するのが難しい5Gミリ波帯において、360度全方位の通信の受信感度を高め、超高速でのデータ送受信を実現します。また、5Gミリ波の接続している方向や通信のデータ送受信速度を画面上に表示する独自の通信解析機能を搭載。通信状況を視覚化し確認可能になることで、プロフェッショナルの映像伝送のワークフローをサポートします。
  • 独自の熱を拡散する構造により、通信環境を最適に保ち、高画質の映像伝送が必要な際に長時間の使用を実現します。
  • HDMI※7接続に対応。レンズ交換式デジタル一眼カメラやプロフェッショナル向けカムコーダーなどのモニターとして利用しながら、撮影中の映像データを、5G通信でサーバーやクラウドなどに伝送することが可能です。これにより、本デバイス単体で撮影から映像確認、データ伝送まで実現します。

日本の移動体通信技術、もはや、後進国並み。米国の中国警戒感で漁夫の利?

2020年02月24日 20時51分03秒 | 日記

日経が、日本の移動体通信市場で、日本の技術は存在感が無いと言う記事を載せていた。基地局だけの市場を見ても、世界市場は2兆数千億だが、ファーウエイとZTEで、1兆5千億と、70%以上の市場占有率は驚き。又、サムソンも10%のシェアーなのに、日本勢は3%。全く後進国入りを達成した。お見事と皮肉りたくなる。

 

 

 

 

 

年明け以降に絞っても、日本も無縁と思われない要注目のニュースが3つあった。

1つは米内務省が1月末に安全保障上の理由から同省の持つドローン艦隊810機の飛行を原則休止したことだ。艦隊の大部分は世界最大手のDJIはじめ中国製であり、休止の決断はドローンを通じて集めた情報が中国側に漏れるのではとの米政府の懸念を示唆している。

2つ目は2月13日の米司法省によるファーウェイの追起訴だ。起訴状には情報窃取などの具体的な手口が克明に記されている。例えば優れた情報を取ってきた社員を表彰する制度を導入したり、ファーウェイとは無関係を装った中国の大学教授と裏で連携して、米半導体企業の設計情報を不正に取得しようとしたり……。こうした司法省の言い分に対し、ファーウェイは「根拠がなく不公正」と反論し、全面的に争う姿勢だ。

そして3つ目はオランダASML社をめぐる綱引きだ。同社は半導体製造に欠かせない露光装置のリーダー企業だが、ロイター通信によると、ポンペオ米国務長官が同社技術の対中輸出の停止をオランダ政府に働きかけ、オランダ駐在の中国大使がそれに強く反発しているという。

次世代通信規格の「5G」ではファーウェイの排除をめぐって米欧の姿勢の違いが顕在化したが、半導体は5G以上に戦略的重要性が高い。日本にも東京エレクトロンはじめ機密技術の塊である半導体製造装置メーカーが集積し、経済産業省は中国への技術流出を警戒する米国からの水面下の圧力にさらされている。半導体をめぐって日米欧や台湾を含めた西側陣営の足並みがそろうのか、注目したい。

米中分断にどう向き合うべきか。日本政府としてはそれでも自由貿易の旗を掲げ、米中両国をブリッジするようなポジションをめざすべきだ。幸い日本のメガFTA(自由貿易協定)戦略への評価は高い。環太平洋経済連携協定(TPP11)の拡張や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の創設を通じて、日本などのミドルパワーが連携し、両大国を自由主義的な国際貿易秩序につなぎ留めたい。

企業はさらにしたたかな振る舞いが求められる。トヨタ自動車の19年の新車販売台数は米市場が最も多く、次いで中国が2番目だった。これまで「米国基軸」がトヨタの基本戦略だったが、今後は中国も米国に匹敵する重みを持つようになるかもしれない。中心が1つの円に比べ、中心(焦点)が2つの楕円は安定に欠ける。米中のはざまで、どちらに弾むか分からないラグビーボールのような危うい状況に、グローバル企業の経営者は向き合う必要がある。

とはいえ、マイナスばかりでもない。1990年代の日米半導体摩擦の最大の勝者は韓国のサムスン電子だったと言われる。当時最も勢いのあった日本メーカーが米国の政治圧力で攻勢を手控える間隙をついて、一気にメモリー市場で基盤を固めたのだ。

5G関連の通信機器をめぐって、日本のNEC富士通は以前のサムスンに倣い「伏兵戦略」を取るべきだろう。この市場はファーウェイのほかエリクソンとノキアという北欧企業による3社寡占だが、実は世界の有力通信会社は3社に過度に依存し、そこから抜け出せないロックイン構造に嫌気がさしており、技術のオープン化による寡占打破をめざしている。

米国主導のファーウェイ包囲網に加え、こうした技術の新トレンドが重なれば、今は「弱小」の日本勢にも展望が開けるかもしれない。現にファーウェイの部分排除を決めた英国政府の閣僚からは「日本の技術に期待したい」という発言も飛び出した。NECの渡辺望シニアエグゼクティブは「5Gを再び世界に出て行くきっかけにしたい」と強調する。ぜひそう期待したい。今回がおそらく最後のチャンスかもしれないから。


日本勢、石油合成繊維に代わって、植物由来の合成繊維!

2020年02月23日 20時25分54秒 | 日記

日経によると『東レ、100%植物由来の合成繊維 エシカル消費が後押し』。東レだけでなく、帝人や東洋紡も、食植物由来の繊維を開発していると言うから、まだまだ、日本は頑張れるし、脱・化石燃料に大いに貢献出来る。

東レは衣料などに広く使われるポリエステル繊維について、世界初となる100%植物由来の製品を2020年代前半にも量産する。石油原料から切り替え、脱炭素化につなげる。環境に配慮した商品やサービスを求める「エシカル消費」が広がりつつあり、アパレルメーカーから新たな素材の需要が増えるとみている。環境技術が企業の成長を一段と左右する。

 

 

 

ポリエステル繊維は、人工的に化学物質を結びつけてつくる「合成繊維」の一種だ。衣服や毛布、カーテンなどに幅広く使われ、世界の化学繊維生産量の8割を占める。大半が石油からできており、植物に切り替われば脱炭素の効果は大きい。

東レは完全植物由来のポリエステル繊維の試作に成功した。バイオ燃料の米スタートアップ企業、バイレント(ウィスコンシン州)との共同開発だ。スポーツウエアや婦人服、自動車の内装材などの用途を見込む。

一般的なポリエステル繊維はテレフタル酸とエチレングリコールからつくられ、使う割合は7対3となる。どちらも、特定の機能を果たすために、炭素や水素などの元素が決まった構造に組み合わされている。

どちらの原料も、これまでは石油からつくられていた。これを植物由来にする流れが生まれている。エチレングリコールの方については、すでにサトウキビが利用されている。インドのインディアグリコールズなどが供給し、東レや台湾の遠東新世紀など複数の繊維大手が一部植物由来の繊維として販売している。

もうひとつのテレフタル酸は、大量生産される一方で植物の利用が進んでこなかった。今回、植物の応用ノウハウを持つバイレントの技術を活用した。サトウキビやトウモロコシのうち、食用に回らない部分を使うもよう。

脱炭素の効果を生む理由は2つある。石油を使わないことと、原料になる植物が光合成で成長する際に二酸化炭素(CO2)を吸収していることだ。

耐久性や加工のしやすさは石油でできた製品と同程度という。発売当初の価格は石油のみを使った繊維よりも割高になるが、両社で量産技術も開発することでコストを下げていく方針だ。

 

開発に踏み出す背景には消費者や顧客企業の意識の変化がある。欧米の若者を中心にエシカル消費が拡大し、割高でも受け入れられ始めた。例えば英誌エシカル・コンシューマーによると、英国での「エシカル衣料」の18年の消費額は前年比16%増の5000万ポンド(約71億円)。1999年の12.5倍だ。

環境対応の取り組みなどで企業を選別する「ESG投資」によるマネーの拡大も、アパレル企業の背中を押している。世界持続的投資連合(GSIA)の調べでは、ESGに基づく投資マネーは世界で約31兆ドル(2018年時点)あり、2年で3割以上膨らんだ。

スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は30年までに、すべての素材をリサイクル品か、環境や社会に配慮した持続可能な調達に切り替えると発表した。繊維商社の社長は「欧米は環境配慮型の素材でないと商売にならなくなりつつある」と語る。

アパレルも動き出した。ファーストリテイリングは一部植物由来の繊維を採用済みだ。1月、国連が推進する「ファッション業界気候行動憲章」に署名した。同憲章は30年までにサプライチェーンも含めた温暖化ガス排出量の合計3割を削減することなどを目指している。英バーバリーなど90社以上が署名している。

 

消費者や小売りの間で環境配慮型商品のニーズが高まっている。ユニクロも一部植物由来の繊維を採用(東京都内の店舗)

消費者や小売りの間で環境配慮型商品のニーズが高まっている。ユニクロも一部植物由来の繊維を採用(東京都内の店舗)

東レは消費者や小売りの変化を商機とみる。完全に植物でできた繊維を投入するなどして、環境配慮型製品の供給量を30年度に、13年度の4倍にする計画だ。

他の国内大手も植物からできたポリエステル繊維に期待する。東洋紡は19年、同社としては初の植物由来原料を一部使った「エコールクラブバイオ」を開発した。帝人は植物由来の原料を4割使った「ソロテックス」の販売が好調だ。15年ごろから毎年2~3割のペースで売上高が伸びているという。19年度の売上高は前年度比25%増の約100億円を見込む。

野村証券の岡崎茂樹氏は環境配慮型の繊維について「(開発費などが)短期的なコスト上昇要因だが、企業が5~10年後に生き残るために欠かせない取り組み」と指摘する。市場の変化に研究開発のスピードをどう合わせるか。素材メーカーの重要な課題になる。