国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

米国の台湾放棄論は第二のアチソンライン演説か?

2011年05月20日 | 中国
フォーリンアフェアーズ2011年5月号で、注目すべき記事がある。チャールズ・グレーザ氏の、「米中のバランスを維持するには日韓との同盟関係を維持し、台湾は手放すべきだ」という記事である。フォーリンアフェアーズ誌は米国の外交政策を立案するCFRが発行しているので、この記事は決して見逃せないのだ。 台湾が共産中国の勢力圏ではなく米国の勢力圏に存在することは中国にとっては太平洋への出口を閉ざす障害物であり、米国にとっては中国包囲網の一環であった。中国の脅威に怯える米国などの西洋諸国にとっては、台湾の重要性はますます高まっていると思われる。そして、仮に台湾が中国の勢力圏になれば、日本と東南アジア・ペルシャ湾を結ぶ航路は中国海軍の支配下に転落し、日本は米国の属国から中国の属国に移行することになる。これは世界覇権が米国から中国へと移行することを意味する。西洋文明の世界覇権の帰趨は台湾にかかっていると言っても良いだろう。これに対して、韓国は仮に北朝鮮や中国に占領されても米国の覇権には影響は出ない。重要性の低い韓国を維持して重要性の高い台湾を手放すべきと言うチャールズ・グレーザ氏の論文の真意は何だろうか?て 私が第一に疑っているのは、これは米国が台湾を放棄すると見せかけて中国の台湾侵攻を誘発し、台湾を巡る米中戦争を勃発させるという米国の陽動作戦の陰謀であるというものだ。1950年6月の朝鮮戦争勃発の直前の1月にアチソン米国務長官がアチソンライン演説で米国の韓国放棄を事実上宣言して朝鮮戦争の引き金を引いた歴史が思い起こされる。米国としては、軍事力・経済力での優位がある今のうちに中国を叩いて弱体化させ、西洋文明の優位を維持したいという考えが大きいのだと思われる。中国の保有する米国債を踏み倒したい、米中戦争で日本も巻き込んで東アジア文明圏を消滅させたいという考えもあるだろう。更に、台湾を国家の生命線とする日本を脅迫して、日本から金を巻き上げ、日本企業を乗っ取ることも考えているかもしれない。現在の大不況を打開するには米国には米中戦争以外の選択枝は残されていないのかもしれない。ただ、中国側は米国との直接対決を回避する意志が強い様だ。今戦えば米国に負けるのは確実だが、時間がたてば米国は衰退し台湾は自動的に中国のものになる。従って中国は米国の陽動作戦に決して乗ることはないだろう。 . . . 本文を読む
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