「ああ神様」とパスカルは思っていた。「ああ神様、負けますように」
彼の顔は死人のように蒼ざめ、汗で縺れた髪の毛がこめかみに張り付いており、手は震えて殆どカードを持っていられないほどだった。
「よ、四千フランにします」ようやく彼は、もごもごと呟くように宣言した。
「受けた!」と一人が答えた。
ああ、しかし、残念ながら、彼の願いは叶えられなかった。彼が勝った。一同の囁きが嵐のように高まる中で、彼は再び宣言した。
「八千フラン……」
「よし同額乗った!」
しかし彼がカードを配ろうとしたその瞬間、彼の隣に座っていた男が立ち上がり、いきなり彼の手首を掴むと大声で叫んだ。
「今度ばかりははっきり掴んだぞ……お前はいかさま師だ!」
パスカルは飛び上がった。危険が漠然とした不確かなものであった間は、彼のエネルギーは麻痺したようになっていた。が、実際に極端な恐ろしい危険がまさに目の前に出現すると、彼は元のエネルギーを取り戻した。自分の手首を掴んでいた男を荒々しく突き放したので、相手は長椅子の下まで転がった。それからパスカルは後ずさりし、挑戦的な脅しの姿勢を取ろうとした。が、その甲斐もなく、七、八人が彼に襲い掛かってきた。まるで犯罪者を取り押さえるかのように……。その間に、突き飛ばされ転がっていた男は、緩んだネクタイと乱れた服装のまま立ち上がっていた。
「そうとも」と彼はパスカルに向かって言った。「貴様はいかさま師だ! お前が手に持っているカードの中に別のカードを滑り込ませるのを見たんだからな……」
「下劣な奴!」とパスカルが怒鳴った。
「私は見たんだ……それを証明してやる」
男は館の女主人に方に向き直った。彼女はソファの上にぐったりとなっていた。その彼女に男は低くしゃがれた声で尋ねた。
「今夜何組のカードが使われていましたか?」
「五組の……」
「それでは、合計二百六十枚のカードがテーブルの上にある筈ですね……」
彼はゆっくりと非常に念を入れてカードを数え始めた。その数は三百七枚になった……。
「さあどうだ! お前こそ下劣な奴め!」と彼はパスカルに怒鳴った。「これでもまだ白を切るつもりか!」
パスカルは白を切ることなど考えていなかった。このように明白な物的証拠を前にして、言葉では対抗できないと理解するだけの理性を持っていた。この証拠は彼をぺしゃんこに圧し潰すことだろう……。四十七枚のカードが不正に紛れ込んでいたのである。確かなことは、それは彼ではないということだ!それでは一体誰が? 偶然というものは一様に割り振られるものであるのに、彼だけが一人勝ちするとは……。11.1