男爵の仲裁なしでは、この議論は気まずくなっていたかもしれなかった。が、事ゲームに関する限り、男爵の言葉は法律のような力を持っていた。彼は静かな口調で「このままでいい」と言い、人々は従った。すぐに分配は終わり、彼は両手をこすり合わせ、この不愉快な事件にけりがついたことに嬉しくなって叫んだ。
「まだ六時ではないか。二、三ゲームする時間ならあるぞ」
しかし、その場にいた男たちは皆顔も蒼ざめ疲れ果てていた。屈辱を感じ、自分でも恥ずかしく思い、帰ることしか頭になかった。人々はクロークへ急いだ。
「エカルテ(二人でするカードゲーム)ぐらいならいいだろう?」と男爵は叫んでいた。「簡単なやつだ。五ポイント百ルイでどうだ? 誰かやらないか?」
誰も彼の言葉を聞いていなかった。仕方なく諦めて、男爵も他の者たちの後を追った。マダム・ダルジュレは踊り場に立ち、一人一人に挨拶をしていた……。最後尾の一人であったド・コラルト氏も既に手摺のところまで達し、階段を二、三段降りていた。そのときマダム・ダルジュレが素早く彼に向かって身を屈めた。
「貴方、残ってくださいな」彼女は言った。「お話がありますの」
「ああご勘弁願えませんか……」と彼は言い始めた。
彼女は「いいから残って!」と大変高圧的に遮ったので、彼も敢えて逆らおうとしなかった。彼はまるで歯医者に連れて行かれる男のような様子で再び階段を上がり、マダム・ダルジュレの後について廊下の奥にある婦人用閨房に入った。部屋に入るとすぐドアは閉められ、閂が掛けられた。
「さあ説明していただきましょうか」とマダム・ダルジュレがぴしゃりと言った。「今夜ポール・フェライユールさんをここへ連れて来たのは貴方でしたね?」
「ああ、遺憾なことです! 何と言ってお詫びをしたら良いか分かりません……。僕にとっても大きな打撃になりますよ、おそらく……。あのロシュコットの馬鹿と二時間後に決闘をしなくちゃならないんですよ」
「貴方、彼とどこで知り合ったのです?」
「ロシュコットのことですか?」
マダム・ダルジュレのいつもの微笑は消え失せていた。
「私は真面目に話しているんですよ」彼女は威嚇を滲ませた口調で言った。「フェライユール氏とはどのように知り合ったんです?」
「簡単なことですよ。七、八カ月前、弁護士が必要になって、彼を紹介されたんです。彼は見事に僕を弁護してくれて、それ以来友達付き合いをしているんです」
「どういう社会的地位にある方?」
ド・コラルト氏の顔には、実際、ひどくうんざりした表情しか浮かんでおらず、ただただ眠りたいという欲求だけしかないように見えた。彼は肘掛け椅子に腰を下ろし、半分あくびをしながら答えた。11.6