エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

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2022-06-01 15:16:37 | 地獄の生活

パスカルにあのおぞましい汚名を着せたことで利益を得るのは一体誰なのか? ド・シャルース伯爵の突然の死を度外視すれば、そしてマルグリット嬢のパスカルへの揺るぎない愛情を度外視すれば、だが。答えは明らかにド・ヴァロルセイ侯爵だ。パスカルがいなくなれば彼の独壇場となるであろう……。

このような思いが次々と浮かんできてマルグリット嬢の目を冴えさせ、なかなか眠れなかった。しかし彼女は二十歳であり、その日は気を動転させるような出来事が起きた日であり、しかも二晩目であった。疲労が彼女を包み込み、ついに彼女は眠り込んだ。

翌朝七時ごろ、マダム・レオンは深い眠りからマルグリット嬢を目覚めさせるため、彼女の体を揺さぶらなければならなかった。

「お嬢様!」と彼女はとっておきの一番優しい声音で言った。「お嬢様ったら、早くお起きになってくださいませ!」

「あ、一体何事なの?」

「それはですね……まぁ、どう申し上げたら良いのやら……葬儀を取り行うために葬儀屋が従業員を全員整列させておりますのよ……」

確かに、葬送のための働き手たちが集まってきていた。彼らの重い靴音が玄関ホールから鳴り響いていた。中庭からは棺を乗せる横板や棺に被せる垂れ布などの用具一式を準備する物音が聞こえていた。

威張り返ったカジミール氏が作業の指揮を執り、いつものように大声を張り上げ尊大な身振りで幔幕をどこに吊るすかの指示を出していた。幔幕には涙模様の銀がちりばめられ、ド・ドゥルタール・ド・シャルース家の紋章が飾られていた。下男たるカジミール氏が自分もひとかどの人物になったものだと感じられるときであった。昨夜以来、パリで死者を商売のネタにする数多くの事業家たちからさんざんおべっかを浴びせられた効果である。この手の業者がこの町には一体どれくらいいるのか、普通の人は見当もつかない。誰かが自宅で死ぬと、二時間後にはすべての葬儀屋の知るところとなり、行列が始まるのである。

真っ先に駆け付けるのは死体防腐処理業者の仲介人であり、ぞっとするようなパンフレットを携えている。すぐその後に、大理石墓石業者の代理人が、あらゆる種類の墓碑の一覧が載っているアルバムを見せにやって来る。いかなる悲しみのどれにもふさわしい碑文や碑銘が揃っている。

これはまさに土地を巡る攻防だ。一方では埋葬の地所を求め、他方では「恰好の地下墓所」を喜んで譲ろうという投機家の代理人がやって来る。更に別の者は挨拶状の印刷の許可を貰おうとやって来る。その手紙を各戸に届ける役目を仰せつかるためだ。葬儀関連業者の中には、商品見本とともにパンフレットを雨あられとばら撒く者もあれば、わざわざ人を寄越して喪服を紳士方に提供する業者もある。身体のサイズに合わせ、上品な仕立てで、見栄えのする最上の服ばかりを取り揃え、二十四時間以内に届けられるというのだ……。6.1

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