エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

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2022-06-24 08:50:46 | 地獄の生活

彼はゆっくりと部屋に入ってきた。いつものように温厚な笑みを浮かべていたが、彼の鋭い目はじっとド・フォンデージ夫人に注がれていた。彼は挨拶をし、礼儀正しい言葉を口にした後、マルグリット嬢に向かって言った。

「お嬢さん、貴女と今すぐお話しせねばなりません。ですが、十五分ほどで済みます。その後こちらの奥様のもとに戻られると仰ればよろしいでしょう」

マルグリット嬢は判事の後に従い、故ド・シャルース氏の書斎に入った。ドアが閉められると老判事が言った。

「貴女のことを随分考えていましたよ、そう、たっぷりと。で、貴女にいくつかの点を説明せねばなりません。しかしその前に聞かせてください。わたしが帰ってから何がありました?」

「ああ、判事様、とても多くのことが起こりました」

それから彼女は簡潔にではあるが非常な正確さで、この二十四時間に次から次へと起こったこと、取るに足りぬ、それでいて重要な意味を持つように思われる出来事を話し始めた。ユルム通りまで行ったが無駄に終わったこと、マダム・レオンの不審な外出とド・ヴァロルセイ侯爵との密談、ド・フォンデージ夫人からの手紙、そして彼女の不快な訪問と彼女が言った内容、などをすべて。彼は自分の指輪の宝石に視線を落としてじっと聞いていた。これは、困難と思われる情況に置かれたときの彼の癖であった。

「事態は深刻です」と彼は断じた。「少しずつ光が当てられてきてはいる……。おそらく貴女の言うとおりでしょう。フェライユール氏は無実の罪を着せられている可能性がある。しかし、それなら何故逃亡するのです? 何故外国へ?」

「ああ、判事様! パスカルが逃亡したのは見せかけに過ぎませんわ。彼はパリにいます。どこかに身を隠しているんです。私にははっきりそう感じられるのです。それに、彼を探し出してくれる人を私は知っています。ただ一つのことだけが不可解なのです。彼から何の知らせもないということが……。私に一言もなく、彼が生きているという印さえも残してくれないなんて……」

治安判事は、ある身振りで彼女を遮った。

「それは驚くべきことではありませんね」と彼は言った。「貴女付きの家政婦がド・ヴァロルセイ侯爵のスパイである以上、彼女が手紙を途中で奪い、握り潰してしまったことがないと言えますか?」

マルグリット嬢は青くなり、黒い瞳がきらりと光った。6.24

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