エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

2-X-15

2024-02-08 12:49:13 | 地獄の生活
「私どもへの御依頼の具体的内容については、確かにまだ伺ってはおりません。ですが、失礼ながら推理をさせていただきました……」
「まぁ!」
「つまりこうでございます。お嬢様は私めの経験、それにささやかな能力を頼みと思って下さったと理解しております。憎むべき中傷をお受けになった弁護士のパスカル・フェライユール氏の無実を晴らし、名誉を回復せんがための……」
マルグリット嬢はぱっと立ち上がった。真から驚き、恐ろしくなったのだ。
「どうしてそのことをご存じなのです!」と彼女は叫んだ。
フォルチュナ氏はいつのまにか自分の椅子を離れ、暖炉の前でチョッキの袖つけ線に親指を差し込んだ姿勢で立っていた。それが自分を最も良く見せるポーズだと思っていたのだ。そして奇術師が自分の術の意図を述べるときのような口調で答えた。
「驚かれるのはごもっとも……が、これはごく簡単なことでございまして……。私を信頼してくださる方々の意図を推し量る、これが困難かつデリケートな私の職業のまさに真髄といったところでございます……というわけで、私の推理は正しかったのでございますね、お嬢様が何も反論なさらないところを見ますと?」
マルグリット嬢は何も言わなかった。最初の衝撃が去ると、彼女はフォルチュナ氏が情報をどこから得たのか、頭の中で懸命に探していたのだ。彼が得々として自分の洞察の深さを述べ立てるのを聞きつつ、信じやすいお人好しを装ってはいたが、彼女は実際は全然そうではなかったからだ。
フォルチュナ氏の方では、彼女から得られた反応に満足して続けた。
「お驚きになるのはまだ早ようございます。他にもまだまだ明らかになった事実がございますので……。よろしゅうございますか、私どもに依頼しようというお考えを思いつかれたのは、貴女様の守護天使のお導きでございます。これまでどのような危険に晒されておられたか、お知りになれば、きっと身震いなさいますでしょう。ですが、もうご心配には及びません。私がついております。私がお護りいたします。お嬢様に対して張り巡らされた大胆な陰謀の全容を私は握っております。やつらが狙っているのはお嬢様ご自身、そしてお嬢様の財産です。2.8

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