「ところが、お前のやったことは何だ。まるで空から降って来た災難のように彼女めがけて突っ込んで行った。蜂の巣をつついたような騒ぎを舘中に巻き起こしただけでは飽き足らず……全く何を考えていたんだ! あんな愚かで、くだらない、恥ずかしい場面を演じるとは! まるで荷担ぎ人夫みたいな怒鳴り方をするもんだから、サロンまでお前の声が聞こえたぞ。これですべてがおじゃんになっていなかったとしたら、お前みたいなドアホにつく神もいるってことだ……」
さすがのウィルキーも、最初はすっかり気圧され、なにか意味不明の言い訳をぶつぶつ言い始めては語尾を呑み込んでしまうことしか出来なかった……。彼の知っているド・コラルト氏はいつも大理石のように冷静で丁寧な物腰だったため、その激昂ぶりが、ウィルキー自身の怒りを抑え、黙り込ませてしまった。
しかし終わりごろには、浴びせられる侮辱に憤然となった。
「言っときますがね、子爵、そいつは笑えませんね!」 と彼は怒鳴った。「あなた以外の人がそんな無礼なことを言ったら、僕はただじゃ置きませんよ」
ソファの上に殆ど寝そべるような姿勢を取ったド・コラルト氏は、じれったそうに細身のステッキの端でクッションを叩いた。そんな扱いを受けたことのないクッションからは埃がもうもうと立ち上がった。ウィルキー氏の脅し文句に彼は憐れむように肩をすくめた。
「結構だ!」と彼は厳しい口調で遮った。「強い態度に出るのは私以外の人間にしておくのだ、いいな! 事実をはっきりさせよう。母上との間に一体何があった?」
「その前にして貰いたいことが……」
「いい加減にしろ! 私が今晩ここに泊まっていくほどの暇人だとでも思っているのか? 母上とのやり取りを私に聞かせるんだ、手短に。但し、本当のことをだ」
ウィルキー氏の自慢の一つは、彼の言葉を借りると『サイコロのように角ばった』、つまり権力に屈しない鉄のように頑固な性格を持っているということだった。しかしド・コラルト氏は彼に対し、親方が徒弟に対するときのような圧倒的優位に立っていたので、ある種の、恐怖心に近い感情を吹き込むに至っていた。それに今、ウィルキーの混濁した頭に一条の理性の光が射し、子爵の言うことも尤もであり、自分は馬鹿者のような行動を取ったため窮地に立たされていることを認識した。そしてこの際、最も賢明なやり方はこの窮地から抜け出すため、自分より経験豊富な人間の意見を聞くことであろう、と思った。それで彼は文句を言うのを止め、マダム・ダルジュレとのやりとりについて『説明』をし始めた。
出だしは上々だった。なので、彼もさほど事実を曲げる必要もないほどだった。しかし、ある男が闖入してきて、彼の腕を掴み邪魔立てをしたというところに差し掛かると、彼の顔は真っ赤になった。怒りがぶり返したのだ。12.2
さすがのウィルキーも、最初はすっかり気圧され、なにか意味不明の言い訳をぶつぶつ言い始めては語尾を呑み込んでしまうことしか出来なかった……。彼の知っているド・コラルト氏はいつも大理石のように冷静で丁寧な物腰だったため、その激昂ぶりが、ウィルキー自身の怒りを抑え、黙り込ませてしまった。
しかし終わりごろには、浴びせられる侮辱に憤然となった。
「言っときますがね、子爵、そいつは笑えませんね!」 と彼は怒鳴った。「あなた以外の人がそんな無礼なことを言ったら、僕はただじゃ置きませんよ」
ソファの上に殆ど寝そべるような姿勢を取ったド・コラルト氏は、じれったそうに細身のステッキの端でクッションを叩いた。そんな扱いを受けたことのないクッションからは埃がもうもうと立ち上がった。ウィルキー氏の脅し文句に彼は憐れむように肩をすくめた。
「結構だ!」と彼は厳しい口調で遮った。「強い態度に出るのは私以外の人間にしておくのだ、いいな! 事実をはっきりさせよう。母上との間に一体何があった?」
「その前にして貰いたいことが……」
「いい加減にしろ! 私が今晩ここに泊まっていくほどの暇人だとでも思っているのか? 母上とのやり取りを私に聞かせるんだ、手短に。但し、本当のことをだ」
ウィルキー氏の自慢の一つは、彼の言葉を借りると『サイコロのように角ばった』、つまり権力に屈しない鉄のように頑固な性格を持っているということだった。しかしド・コラルト氏は彼に対し、親方が徒弟に対するときのような圧倒的優位に立っていたので、ある種の、恐怖心に近い感情を吹き込むに至っていた。それに今、ウィルキーの混濁した頭に一条の理性の光が射し、子爵の言うことも尤もであり、自分は馬鹿者のような行動を取ったため窮地に立たされていることを認識した。そしてこの際、最も賢明なやり方はこの窮地から抜け出すため、自分より経験豊富な人間の意見を聞くことであろう、と思った。それで彼は文句を言うのを止め、マダム・ダルジュレとのやりとりについて『説明』をし始めた。
出だしは上々だった。なので、彼もさほど事実を曲げる必要もないほどだった。しかし、ある男が闖入してきて、彼の腕を掴み邪魔立てをしたというところに差し掛かると、彼の顔は真っ赤になった。怒りがぶり返したのだ。12.2
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