計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

この冬型では仙台の風は強まるか?

2009年02月01日 | 気象情報の現場から
 昨日はハードな1日でした・・・。午前中は事業ビジョンDR、午後はCAMJ新潟支部の天気図検討会、夜は職場関連の懇親会。

 午後には久々に天気図検討会に参加したわけですが、今回は翌日の新潟と仙台の天気の予報を検討する事が課題として出されました。新潟と仙台・・・どうしても真ん中の山形県置賜地方に目が言ってしまいます目が行ってしまいます。なぜなら一時的ながらも冬型の気圧配置が強まる(つまり、私の長年の研究テーマ)事が予想されたからです。

 Fr数は低そうな条件である事と寒気もそれ程強くはないので、山形県置賜地方ではそれ程派手な降雪はなさそうに思えたのですが・・・仙台の予報が課題なのですね。天候は晴で良いとして・・・どうも風が強いのではないか?と気になり始めました。山形の予報ついでに?これまでの山形研究の理論から仙台の強風ポテンシャルを次のように推察しました。その考え方について書いてみます。


(1)冬型の気圧配置となる条件下で発生する傾向がある・・・
山形県置賜地方の強風域は北西季節風の影響(Re数の影響)が大きい。
宮城県仙台市周辺で強風域は、気温の鉛直分布に伴う大気安定度の影響(Gr数の影響)が大きい。
【参考文献1】2007:熱輸送を伴う3次元乱流数値シミュレーションを用いた山形県置賜地方における冬季局地風の解析.てんきすと,48,日本気象予報士会,8-11.

(2)冬型の気圧配置となる条件下での山形県置賜地方では・・・
・Fr数が低い場合は自然対流の影響(Gr数の影響)がより卓越し、季節風とは異なり南よりの風向が卓越する。
・Fr数が高い場合は強制対流の影響(Re数の影響)がより卓越し、季節風に沿って西よりの風向が卓越する。
【参考文献2】2008:山形県置賜地方における冬季局地風の力学的機構とフルード数の関係.2008年度秋季大会講演予稿集P161,日本気象学会.

(3)「1/Fr^2=Gr/Re^2」の関係が成り立つ
【参考文献2】2008:山形県置賜地方における冬季局地風の力学的機構とフルード数の関係.2008年度秋季大会講演予稿集P161,日本気象学会.

 以上から・・・

Re数の影響>Gr数の影響 ⇒ Frの値は高くなる ⇒ 山形県置賜地方周辺で強風域になりやすい。
Re数の影響<Gr数の影響 ⇒ Frの値は低くなる ⇒ 宮城県仙台市周辺で強風域になりやすい。

という構図が成り立ちます(新しい研究テーマになるか?)。

 実際に、以前「Fr=∞」の場合(Gr=0)でシミュレーションを行った場合、宮城県仙台市周辺では風が非常に弱く解析されました。但し、ここで使用したFrはあくまで山形県置賜地方の数値シミュレーション用のフルード数なので、本当に仙台周辺の解析をする場合はそのためのモデルを構築する必要があるのかも知れません。ここではあくまで、日頃から山形県置賜地方の研究を続けてきたので、その視点から考察すると・・・と言う一例です。

 天気図を見て、このような理論展開が頭に浮かんでくるようになってきたとは・・・。この考察の後、FXFE5782を見てみると・・・やっぱり仙台では風が強まりそうな事は予想されていました。結局、今日9時の時点で仙台では北西の風10m/sが観測されました。今後の風の推移が気になるところです。
コメント
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